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太陽と月  作者: 高槻博
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友達の在り方

ただただ下を俯くことしかできない僕にとってはこの少しの無言の間でさえも長い時間に感じてしまった。この時僕はどんな表情をしていただろうか。相当惨めな表情をしていたんだろう。そんな僕をみかねて雨宮さんは椅子から腰を上げ、僕と同じ目線に座った。


「よっこらっしょ。」


八雲くんから電話が来てからは普段の雨宮さんの雰囲気に少し戻っていた。


「日向くんこっち向いて。」


僕は雨宮さんの指示通り雨宮さんの方を向いた。


「日向くん、思ったことを声に言葉にしなきゃ何もわからないよ、日向くんは私がエスパーだとか冗談で言ってるのかもしれないけど言う。でもそれは本当に偶然だったり何かしらの理由があってわかってるだけ。事実私は今日向くんがなんで帰ったのか、なんで仮病まで使って学校休んでるのか、私や空を避けてるのかさっぱりわからない。何も言わずに自分の思ってることをわかってもらえるなんて思ってるなら甘すぎだし、自分のことを知って貰おうとしてないのならそれもそれでおかしいと思う。こないだ私はここで日向くんに人間が10人いたら10人とも違う考えなんだから人の心は理解できなくて当たり前。でも理解しようとすることが大切だって話したよね。それに付け足しだけど、誰かを理解しようとすることはすごく大事なこと。でもそれと同じくらい自分も理解して貰おうとすることが大事だと私は思う。日向くんが私に理解して貰おうとすると私は日向くんのことを少しだけかもしれないけど理解できるようになるかもしれない。それで私が日向くんに理解して貰おうとすれば日向くんは私のことを少しだけでも理解できるようになるかもしれない。そうやってお互いのことを知って情って深まるんじゃない?だからと言って何でもかんでも言えってことじゃないよ?まぁそこは日向くんは心配ないだろうけど。」


雨宮さんの言葉で自分との精神年齢の差を思い知らされる。

それでも尚、何も言葉を発することができなかった。雨宮さんはここで1つ大きなため息をついた。


「それじゃあ私の思ってること先に言うね。私は日向くんが昨日帰った理由がわからなくて心配になった。それはみんな同じだった。空が日向くんの家の前にいることはわかってたから私もそこに向かった。その道中で逃げるように自分の家から離れてく日向くんを見た。慌ててLINEしたけど反応がなかったから空を家に帰るように説得した。その時私は日向くんのことだろうから何か理由があるんだろうって思ってたけど、それでも空の気持ちを踏みにじってるようで納得が行かなかった。それでいつLINEが返ってきてもいいように一睡もしないで返信を待ち続けた。返信が返ってきたのはお昼だったのにも腹が立ったし、何より心配だったからすぐにここにきた。帰った理由を聞いても風邪だっていう。空や月だったら納得したかもしれないけど、日向くんはこないだ風邪ひいたばっかだし、表情からなんとなく嘘だって思った。いつまでも煮え切らない態度を取るもんだから感情的になって机を叩いちゃった。空はおそらく私が急に早退して日向くんのところに行ったんじゃないかって思ったんだと思う。私の思ってることはこんな感じ。別にいいたくないことを無理やり聞こうとは思ってないけど、みんな日向くんが心配で気が気じゃない、私だってそう、月はもちろん空だってそう。それだけは忘れないで。わかった?」


僕がその問いかけに頷くと雨宮さんは腰をあげた。


「よし。それじゃ私は帰るね。急に押しかけてごめんね。挙げ句の果てに机まで叩いちゃって。」


そう言って背中を向けた雨宮さんを僕は咄嗟に立ち上がり、引き止めた。


「ん?どうかした?」


「僕の話を聞いてほしい。」


「無理に話さなくていいんだよ?さっきは私が勝手に話しただけ。」


「無理にじゃない。雨宮さんの話を聞いて話したいと思ったんだ。」


そういうと雨宮さんはいつも通りの表情に戻り優しく微笑んだ。


「うん。じゃあ聞かせてもらおうかな。」


僕と雨宮さんは一度立ち上がったけれどもう一度腰を下ろした。今度は床じゃなくて椅子に。

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