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太陽と月  作者: 高槻博
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4月23日

家に帰ると、すでに夕飯時であったが、何も支度していなかったので、諦めてカップラーメンで我慢することにした。

食事を終え、風呂を済まし、日課である小説を読もうと、鞄の中から本を取り出そうとすると、家に帰ってから読むようにと御達しのあった交換ノートが目に入った。

僕は小説を読むのを中止し、ノートを読むことに予定を切り替えた。

ノートを1枚めくると太陽と月の絵が描かれていた。お世辞でも上手いといえるものでは無かったが、なんだか穏やかな気持ちになる物ではあった。

僕は次のページをゆっくりめくる。


【4月23日】


【こんばんわ?こんにちわ?

まず私のわがままののために交換ノートをしてくれてありがとう!


太陽くんは私のことよく知らないだろうから、興味ないだろうけど自己紹介を兼ねて、プロフィールを書いてみることにします!


身長・・・158センチ      体重・・・○グラム


好きな食べ物・・・・ケーキ 今度食べに行こう! 好きな音楽・・・洋楽


最近の趣味・・・太陽くんを観察すること!?笑


最近あった嬉しかったこと・・・高校に入って新しい友達がたくさんできたこと!


最近の悩み・・・勉強ができません!やる気も湧きません!それは悩みじゃないでしょうか?


まぁ、私の自己紹介はこんな感じかな!このノートは連絡を取るためのものじゃないから、連絡先教えとくね!

昼夜問わず連絡してきてね!!待ってるよ!じゃあ次の月曜しっかりノート書いてきてね!


080ー9595ー×○△□


moon0824@△△.jp .】


僕は静かにノートを閉じる。感想としては彼女にしては普通の文だと思った。あくまで彼女にしてはだが。

僕も文を考えようと思ったが、まだ時間もあるので後日にすることにした。


次の日、登校すると、彼女はこっそり「どうだった?」と聞いてきた。

僕は率直な感想として「体重をあえてグラムで書いてくるなんてどこの小学生かと思ったよ。」というと、なぜだか満足気な顔をしていたが、その理由はわからなかった。


後回しにしていたつもりはないが、気づけば、時は日曜の夜中になっていた。自己紹介を書くくらい、簡単なものだとばかり思っていたが、現実ノートとの睨めっこが1時間ほど続いていた。


ふと、ペンが動かない僕にある発想が浮かぶ。


彼女が自己紹介を書いたからといって、僕も同じことを書く必要があるわけではない。そう考えると、ペンは軽やかに動き出し、サラリと1文をノートに綴り、夜を明かした。





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