嵐の前の静けさ
嵐の前の静けさとはよく言ったものだ。クラスの中心メンバーがいないだけで教室は静寂に包まれていた。その静かさは普段静かな空間が好きな僕でさえ違和感の感じる静かさだった。けれどそんな雰囲気を過剰に察したのは見たところ僕だけで彼女も雨宮さんも八雲くんも各々の席に着いていった。
「なんか今日静かじゃない?」
僕は隣の席に位置する彼女にそういった。
「そう?雨だからテンションダウンしてんじゃない?」
天候で人の気分がそこまで大きくアップダウンするとは思えなかったけれど、そう考える方が自然であることは間違いないため、僕も彼女と同じように考えるようにした。
ザァザァと無数の雨が空から降ってくるのをただボーッと見ているとクラスの中心メンバーが教室に来た。身だしなみから見るに登校してなかったというよりは登校してからどこかに行っていたといった感じだった。その中心メンバーは天候で気分がアップダウンしている様子はなく、いつものように自由気ままな印象を受けた。こんな風にクラスの中心メンバーを俯瞰している僕だけれど名前と顔は全くといっていいほど一致していない。唯一、一致していると言えば少年Aこと恩田くんだけだ。教室に入った彼を見ているとたまたまか目が合い、彼は僕にニコッと奇妙な笑みを浮かべて来たけれど僕は咄嗟に目をそらした。そしたら今度は驚いたことに僕が咄嗟に目をそらした視線の先には隣の席の彼女がいたのだけれどその彼女がこちらを見ていた。またまた僕は咄嗟に目をそらし、今度は黒板の方に目を向けると彼女が無理矢理僕の視線に入り込んできた。
「なに?」
「いや、目線をそらされたら覗き込むでしょ?」
「覗き込まないでしょ。」
「だってお腹空いたらご飯食べるでしょ?」
「まさかと思うけれどそれと一緒とか言うんじゃないよね?」
僕はなんとなくそんな気がしたので先走って彼女に聞いてみると彼女はニコリと笑った。
「さすが!わかってんじゃん!コノォ!」
彼女はうざったいくらいに肘で僕の肩付近をつついてきた。
「ちょっとやめてよ。」
その過剰なまでのスキンシップによって、恩田くんからとんでもない視線が飛んできているんだろうと横目で見るとそんなことは一切なく、こちらなんか興味がないと言わんばかりの態度だった。そもそもこんなことで睨まれたりすることが普通になっていることがおかしな事なんだけれど。いつもなら鋭い視線を受けないことを嬉しく思うのだけれど、教室の異様な静けさもあったからか、嵐の前の静けさにしか感じなかった。




