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太陽と月  作者: 高槻博
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放課後②

図書室にて本題を聞き出せずにいる僕は彼女の気難しそうな顔を眺める。


「なんで太陽君は成長することを諦めちゃったの?」


彼女は真剣な眼差しで僕を見る。

それに感化されたように僕も口を開く。


「成長したり、何かを得たりするにはリスクが伴うからだよ。」


「もっと簡単に!」


「そうだね。おバカな君には難しかったかもれないね。それよりお昼言ってた2つ目の要件を言って。早く帰りたい。」


「うるさい!説明してくれるまで言わない!」


「わかった。じゃあ、帰る。」


僕は容赦無く帰りの用意をする。


「待って、待って冗談!説明してください!お願いします!帰らないでぇ!」


「君みたいな人にわかりやすくいうならば、君に好きな人がいたとして、君はその人に告白をしたい。もしその告白が成功したら今以上に距離は縮まるでしょ。でも告白するということは同時にフラれてしまう可能性を産むわけ。そして振られたら気まずくなって距離は開いてくことが多いでしょ。それと一緒。わかった?」


「要するに太陽くんは失敗を恐れているわけだ!」


図書室から見える花びらがほとんど散ってしまった桜の木を背景に彼女はドヤ顔で言った。


「僕の説明がわかりやすかっただけでしょ。鬱陶しいし、腹たつからそのドヤ顔を引っ込めてよ。」


そういうと表情を180度逆転させ、ムッとした顔へ豹変する。

本当に彼女は様々な表情を持ち合わせている。

僕は僕の生きかたを正しくない、ダサいと理解しているからだろうか。

感情が豊かで素直な彼女に対して憧れなどは全くもって無いが、すごいことだと感心はしている。ここで大事なことは憧れではなく、感心だということ。すごいと思ってはいるが、自分がなりたいとは全く思ってない。


「何を難しそうな顔してるの?」


彼女は先程までのムッとした表情など、とうの昔に忘れたと言わんばかりの顔で覗き込んできた。


「考え事をしていただけ。」


「さて、世間話も終わったことだし、本題に入ろうか!」


なんて長い世間話だろうと思ったがツッコムのも面倒なため、静かに図書室の椅子に腰をかけた。

すると彼女は隣の椅子に座ってきたので、目で向かいの椅子に座るよう指示をしたが、伝わることはなかった。伝わったところで結果は変わらないだろうけど。


「えー、下校時間も近くなってきましたので、2つ目の用件について話をさせていただきます!」


既に彼女の顔から嫌な笑顔が漏れ出している。


「私と交換ノートしよう!」


「嫌だ。」


「拒否が早いよ!しかしこれは決定したことだよ?拒否するならばクラスのみんなに私がクラスで1番可愛いって太陽くんが言ってましたってばらすよ!?」


「あの時はちゃんと暫定って言ったよね?顔と名前一致したの君くらいだって。」


「可愛いって言ってきたことに変わりはないし、太陽くんと私の意見が多少、食い違ってもクラスの人は私を信用すると思うよ?」


「そりゃあ、得体の知れない人を信用する人なんてそうそう居ないよ。」


「どうする?やる?やらない?」


彼女が一瞬悪魔のように見えた。

そんなことをバラされたらクラスで悪目立ちしてしまうのは必中なので致し方なくこれを承諾した。


「では、簡単にルールを決めよう!書く内容は基本的に自由!聞きたいことがあったら聞いていいし、伝えたいことがあったら伝えていい!頻度は週に1回!週の初めにロッカーや机に入れとくこと!直接でもいいけどこれは太陽くんへの配慮ね!異論や反論は!?」


僕が異論や反論を唱えたところで全く通る気がしないので、おとなしく引き下がった。


「はい!じゃあこれ!私が今日書いたから、来週持ってきてね!」


僕は、そのごくごく普通の交換日記と表紙に書かれたキャンバスノートを開き、中身を読もうとすると、彼女が大慌てで止めに入った。


「聞きにくいこと、言いにくいことがあるから、ノートにしてるのに、本人の前でみちゃ意味がないでしょうが!家で見ること!」


僕はさっとノートを閉じ、カバンに入れた。


「あのさ、僕みたいな人と関わると、周りに変な誤解されることになるよ?」


僕は自分の身と彼女に身を案じてそう言った。


「ん?私は別に気にしないよ?」


僕は騒がしくなるし嫌だけど。と心の中で唱えた。


「あ、私、今日帰り雫と帰るんだった!太陽くんも一緒に帰る?」


「遠慮しとくよ。」


「そっか!じゃあ、また明日ね!」


彼女は意気揚々と嵐のようにその場を去っていった。

僕も後に続くように図書室のドアを開けると、昨日、僕と彼女の関係を冷やかしていた、名前も知らぬ、中心人物であろう彼が立っていたが、特に話すこともないので、会釈をしてその場を去っていった。






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