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太陽と月  作者: 高槻博
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彼の想い人と新たな来訪者

八雲くんが僕の家を来訪してから早1時間がたった。時刻にして7時半を回ろうとしていた。これといって特別な話をしたわけではないけれど彼の素性や性格がなんとなくわかってきた。彼は彼女や雨宮さんと同じ中学で小学生の頃から野球一筋でポジションはピッチャー、右投げ右打ちだそうだ。僕は野球に詳しくはないけれどピッチャーというのは1番目立つポジションだということくらいはわかる。性格は単独行動を好まず、だからといって団体行動で群れているだけの集団を嫌う。陰口などがとにかく嫌いで言いたいことがあるなら直接言えというタイプらしい。どうやら恩田くんがクラスで仲良くしているグループいわゆるクラスという縦社会のトップのグループは陰口が多かったようで嫌気がさし、言いたいことをハッキリ言いそうな僕に接触を図ってきたとのことだ。他にも彼のことを色々聞いたけど大体のことは他愛もない内容だった。


「そりじゃあそろそろ本題に入ろうか。」


「本題??」


結構な時間話していたのに今から本題に入ろうとしているのかと思うと笑えてきた。


「そう!本題。」


「議題は?」


「俺の好きな人について。」


「あ、ああ。」


「おい!なんだその反応は笑、絶対忘れてたやつだろ。」


「いや。そんなことない。楽しみすぎて夜も眠れなかったくらいだから。」


「ツッコンでいいんだな?ツッコンでほしいんだな?まずな、リレーの選手になれたら俺の好きな人を教えるっていうのは今日の昼間約束したんだぞ!まだ夜も来てないんだから眠れるわけねぇだろ!」


「あーうん。」


「自分でボケといて俺のツッコミ回収雑すぎんだろ!」


自分がクラスメイトに対して面白い面白くないは別としてボケを入れたりすること自体、自分自身でも驚いていた。同性で初めてクラスメイトらしい会話をしたもんだから多少なりとも浮かれていたんだろう。


「それで八雲くんの好きな人は誰なの?」


「お、お、やっぱ気になる?」


どうせ言うんだったら早く言えばいいのにと思ったので僕は少し顔を曇らせた。


「ごめんごめん、調子乗りすぎた笑」


僕の曇った表情を感じ取ったのか八雲くんはすぐ謝罪を入れてきた。僕は怒ってもいないので許す許さないの議論にはなりやしない。


「ちなみに日向は誰だと思う?」


「知らないよ。」


「適当でいいからさ!」


八雲くんは僕の人の輪の狭さを舐めているだろう。適当で出てくる女子の名前なんて片手に収まってしまうくらいだ。彼女ではないと昼に言っていたので当たるはずもないと適当に「雨宮さん」と答えると彼は膠着状態に入った。


「どうしたの?」


「いや、当てられてびっくりしてる。誰にも気づかれないように接してたつもりだったし。」


びっくりしたのは僕の方だ。適当に言ったら当たってしまうし、今日見るだけでかなりからかうような態度をとっていたので、まさか恋愛的意味で雨宮さんのこと好きだなんて思ってもみなかった。


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン


僕の家のインターホンが連続してなると八雲くんが「お、きたきた。この話はまた今度な。誰にも言うなよ。」と言って玄関に向かっていったが、嫌な予感しかしなかったのは言うまでもない。

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