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太陽と月  作者: 高槻博
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雲に隠れた太陽は僕を称える

「さすが日向くん正解だよ。」


「おい、正解じゃねーよ。嘘教えんな。」


雨宮さんが正解だなんて言うもんだから言ってみるもんだなとか思っていたが、どうやら冗談のようで期待通り外れていたようだ。


「そうだよ!雫ったら名前間違えるなんてよろしくないよ!ね?太郎くん!」


「待て待て、それ冗談だよな?俺夜科にまで名前覚えられてないの?流石にショックだわ笑」


「うそうそ冗談だよ!太陽くんはわかってないと思うから紹介するけど私と雫と同じ中学の八雲空くんね!野球部!」


「ちなみにむっつりスケべだから日向くんはあんまり関わらない方がいいよ。」


「やめろ。見ろよ、この日向の表情。完璧信じちゃってるよ。」


「大丈夫、信じてないよ。」


「ほんとかぁ!あざす!」


そう言うなり彼は僕に肩を回して大きな声で笑った。言うまでもないが、こういった体育会系のノリは嫌いだ。今だって正直暑苦しいったらありやしない。でも僕は彼のことを嫌いにはなれない。だって彼は人としてとてもいい人である気がしてならないから。


「なんかさっき恩田からチラッと聞いたけど日向選抜の選手狙ってるんだって?」


「うん。」


「もちろん雫と夜科は狙うんだろ?」


「もちろん!3人全員メンバーになることが目標なの!」


「へぇ。じゃあその目標に俺も入れろよ!ちょうど4人になるじゃん。」


そんな成り行きで僕たち4人は全員で選抜リレーの選考が通ることを目標にすることになった。

仮に僕、彼女、雨宮さんの3人がメンバーに選ばれたとして、もう1人のメンバーが恩田くんだったりしたら、僕のモチベーションが下がるのはもちろん、彼女だって微妙な顔をするだろうし、雨宮さんなんて噴火寸前までいってしまうだろう。そう言う意味では八雲くんがメンバーに選ばれてくれた方が断然いい。僕が八雲くんや恩田くんに負けては元も子もないのだけれど。4人でしばらく談笑していたが、5時間目開始までは20分ほどあったので、日陰で休んでいることにした。八雲くんの姿は見当たらなかったが、彼女と雨宮さんは2人で準備体操をしていた。これといった理由はなかったが目のやり場所もなかったので2人の様子を眺める。こうして見ているだけで2人の気合いがヒシヒシと伝わってきた。それから数分ボーッとしていると背後に人の気配がしたので咄嗟に振り返る。


「あ、やっと気づいたか。」


「いつからいたの?」


僕が振り向いた先には坊主頭の彼が腕を組んで立っていた。彼は僕の質問に対して「日向が女子2人を眺めてる時から。」というなり僕の隣に座った。そして彼が座ったと同時に太陽が雲に隠れたのか全体的に少し暗くなった。


「お前も大変だなぁ。」


「何が?」


「ん?色々。あんなじゃじゃ馬娘2人に振り回されて挙げ句の果てに恩田に目の敵にされて。」


「彼女はともかく雨宮さんはお淑やかだと思うけど。恩田くんのこと知ってたんだ。」


「俺には凶暴だけどな。まぁ詳しいことは知らないし聞かないけどな、たまたま恩田が絡んでるのを目撃しただけだし。それより俺どさくさに紛れて一緒にメンバー目指すことになっちゃたけど良かった?」


「別に嫌じゃないよ、それにそれは君が決めることだし。」


「君じゃなくて空でいいわ!君とかムズムズするわ!んじゃ選考頑張ろうな!4人で絶対に走って1位になるぞ!」


彼はそう言って同じ坊主頭の人のところは駆けて行った。正直クラス代表なんて重荷僕が背負えるなんて思ってないけど彼や彼女らとなら少し頑張れる気がする。


過度な期待は僕の手に負えないけれど彼女や雨宮さんは僕に対して期待してくれてるんだ、チャイムが鳴るまでウォーミングアップくらいやってもいいかなという気持ちになり僕は重い腰をあげた。それを称えるかのように雲に隠れていた太陽が顔を出し、校庭の全体が一気に明るくなった。





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