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太陽と月  作者: 高槻博
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偏見は偏見でしかない

「えーじゃあ今日の5時間目校庭が借りられたのでそこで選抜リレーの選考を行いたいと思います!人数は男子2人、女子2人で1人100m、1走が女子、2走が男子、3走女子、アンカー男子の順になってまーす。仲の良い4人グループとかで出たいとか言う人もいると思うんですけど、選抜リレーは配点される点数も高いので単純に速い人4人を出したいと思います!選考方法は担任の先生高田先生と話し合い、5時間目校庭に集まり次第説明します!」


他のクラスがどうからわからないが、僕たちのクラスは話し合いがスムーズに終わり、2時間目からは各自出る競技の打ち合わせなどを行うことが出来た。こんなにスムーズにいったのは体育祭実行委員に名乗りを上げた彼の功績であることは言うまでもない。彼の性格云々は置いておいて人の前に立ち堂々していられることは凄いことだ。僕が彼に感心の目を向けていると僕の視線に気づいたようでこちらに寄ってきた。


「さっきの月と雨宮さんの会話聞いてたよ。選抜リレーの選手目指すんだって?」


「うん。成り行きだけどね。」


おそらく僕の澄ました返答が鼻についたんだろう。彼は目つきを善人モードから僕専用モードに切り替えた。


「冗談は寝ていってくれよ。お前みたいな地味な陰キャが選抜の選手になれるハズないだろ。うちのクラスには体育会系が何人もいるし、俺だって足の速さなら負ける気がしない。自分を過大評価しすぎなんじゃない?じゃあ俺は日向くんと違って忙しいから行くね。5時間目楽しみにしてるよ。」


こんな風にいつだって彼は周りの見えないところで僕につっかかってくるが、何を言われようが僕はさほど傷つきはしない。傷つかないけれどとてつもなく嫌だし面倒だ。だが彼は1つ誤解していることがある。確かに僕は地味で陰キャだ。それは揺るぎない事実である。だけど地味な人間イコール運動ができないっていうのは偏見以外の何物でもない。だからと言って僕の運動神経が抜群かと聞かれると冗談でも肯定なんてできるもんじゃない。授業での体育の球技なんて目もあてられない。だけれど何故だが足だけは速い方だ。地味な僕は体力テストでも目立つことはなかったが50mの評価は満点の10点だった。もちろんそんな理由で普段怠けてる僕が運動部の人たちに勝てるなんて思ってもないけれど、2人がせっかく期待してくれているんだから少しは気張ってみようと思う。


午前中の練習も無事終わり、お昼も済ませ、校庭で授業が始まるのを待っているといつもと違う雰囲気の彼女と雨宮さんが現れた。


「太陽くん早いね!気合十分じゃん!」


「日向くんは選考通りそう?」


「どんな決め方するかわからないけど全員転んでくれたら選手になれそうだよ。」


「何それ、狭き門だね。」


「狭き門の方が選ばれた時、絵になるでしょ。」


「選ばれ方が全然絵になってないけどね。」


「細いことは気にしなくて大丈夫だよ。」


僕と雨宮さんがテンポよく話をしていると彼女は頬を膨らませて僕たちの間に割って入った。


「ちょっと2人で勝手に盛り上がらないでくれる?」


無理やり間に彼女が割ってくると流れ作業かのように坊主頭の男子が割って入ってきた。


「なんか盛り上がってんじゃん!俺も入れろよ!」


名前を把握してない僕は邪魔にならないように1歩、2歩と下がる。そんな僕を見兼ねてか雨宮さんが僕に問題を振ってくる。


「日向くんここで問題です。このハゲ頭の名前を答えなさい。わかりませんは受け付けません。ヒントは結構覚えやすそうな名前です。」


「誰がハゲじゃ。この貧乳娘が。」


「セクハラ。」


「ていうか名前の問題とか謎すぎだろ。初絡みとはいえなぁ日向?」


僕のキョトンとした顔を見るなり彼は僕が名前を覚えてないことを把握したのだろう。男らしい笑い方で笑い出した。


「面白いなお前。試しに俺の名前なんだと思う?」


それに乗っかって彼女まで聞き耳を立て出したので「わかりません」なんて言えなくなってしまった。それでも誰もこの流れで正当な答えを期待してなかったのがまだよかった。適当にありふれた名前を出す。


「山田くん。」


彼の頭を見るにおそらく野球部だろう。野球部イコール山田という謎の偏見を持っていた僕はなんとなくそう答えた。

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