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太陽と月  作者: 高槻博
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やばい僕と拗らせる彼女?

昨日観測史上最強と呼び声の高い台風を本当の意味で肌で感じた僕は風邪をひいていた。鼻水は止まらないし頭はジンジンするし体も重かった。しかし今日休んでしまっては彼女はもちろん雪ちゃんにまで余計な心配をかけてしまうし、何より2人のことだ。自分のせいだと責任を感じてしまうだろう。貰った恩を少しでも返そうと気張ったのにまた迷惑をかけてしまっては本末転倒だ。僕は体に鞭を打ってなんとか教室まで来た。彼女はまだ登校してないようで教室に姿はなかったが、朝登校の道中で彼女と雨宮さんに会ったので問題なく登校してくるだろう。教室全体を見渡すと休みにハメを外しすぎた証の残る人や部活で真っ黒に焼けた姿の人など様々であった。僕はこれといって見た目に変化はない。中身ももちろん変わっていないので教室で1人小説を開く。


彼女と雨宮さんはチャイムギリギリに登校してきた。彼女は朝会ったにも関わらずもう1度挨拶してきたのでそれに対してツッコミを入れる。彼女も雨ざらしになったことに違いはないので僕と同様風邪を引いてしまったのではないかと思ったけれど僕からは触れない方が良いと思ったので再び読書に着手した。先生がホームルームを終え、1時間目の授業が始まった。僕は風邪を引いているということもあり、授業が全然頭に入ってこなかった。しかし授業が頭に入ってこない理由はそれだけはない。隣の席の彼女が狩人並みの圧で僕のことをジッと見ているからだ。僕がそれに耐えかねて彼女に視線を向けると一転してソッポを向かれてしまった。彼女をジッと見ている訳にもいかないので視線を外すとまたしても彼女の視線が僕を刺す。耐えかねた僕は彼女に視線を向ける。しかし彼女はソッポを向く。それの繰り返しだ。普段から考えていることが読めないことが多い彼女だが今回に限っては全く読めなかった。普段授業がそこまで苦でもない僕は時間が長く感じることはないが、今日この授業に関してはとてつもなく長く感じた。授業が終わったら理由を問いただそうと思っていたが、授業が終わるなり、彼女は忽然と姿を消してしまう。次の授業の時間までには帰ってきたのだけれど問いただす時間もなく、2時間目の授業を迎える。始まるなり彼女はまたしても僕に視線を刺してくる。1時間目と同様見ては逸らされるの繰り返しだった。そして授業が終わると姿を消して次の授業前には戻ってくる。そんなループを繰り返していると4時間目を終えお昼の時間になっていた。


「ヒナータくん。」


「どうしたの雨宮さん。」


「体調悪いなら保健室行きなよ?」


「雨宮さんには一生かけても敵う気がしないよ。」


「なにそれ笑、まぁ今保健室行ったりしたら月に変な気を使わせちゃうっていう太陽くんなりの気遣いなんだろうけど倒れたりでもしたら元も子もないからね。」


「うん。ありがとう。それより彼女もどっか体調悪いの?なんか授業中狩人のような目で睨まれ続けるんだけど。」


彼女が姿をくらまして話す機会がないので雨宮さんなら何か知ってるんじゃないかと思い訪ねた。


「ないない!バカは風邪引かないっていうでしょ?」


雨宮さんの口からそんな都市伝説のような言葉が出るとは思わなかったけれど体調を崩していないようで何よりだ。僕はバカは風邪引かないなんてことは思わない。だけど彼女の場合は風邪を引いたことに気づかない場合はあるんじゃないかと思った。


「あ、でも病にかかってるっていったらかかってるかも?」


「どういうこと?」


「内緒。」


匂わせるだけ匂わせて内緒にするあたりは実に雨宮さんらしいと思った。僕はほんの僅かしかない食欲ではあったがスーパーで買ったオムライスをチミチミと口へ運んだ。


「あ、月おかえり。」


教室から姿をくらましていた彼女が帰ってきた。なぜだかわからないけど妙に気合いが入っていることだけは見て取れた。


「太陽くん!!!」


いきなり大きな声を出した彼女は一斉にクラスの視線を集める。僕は彼女の狩人のような視線から喰われてしまうのではないかと変な想像をしていた。


「月、声大きいよ。周り見なよ。」


雨宮さんがそういって彼女に指摘をすると周りの視線に気が付いていなかったようで顔を一気に赤らめた。その赤らめた顔で彼女はボソッと一言つぶやいた。


「フォーク・・・」


彼女の声が小さかったのと体調不良のせいで耳鳴りまでしていたこともあり上手く聞き取ることができなかった。


「フォーク?オムライスはスプーンでしょ。」


僕の返答を聞いた彼女はさらに顔を赤くし、その場を去って行った。


「日向くんもヤバイけど月もだいぶ拗らせてるね。」


「さっきより酷くなってきたし、耳鳴りもしてきたから少し寝ような。」


彼女が拗らせているという雨宮さんの発言は気になったけれどあえて探りはしなかった。


「ヤバイってそういう意味じゃないけどね。」


「え?」


「なんでもないよ。早く寝なよ。」


雨宮さんはそう言って僕の頭をポンと叩き自分の席へ帰っていった。

それからのことはよく覚えてないけれど何とか授業も終え、家に帰った僕だけど風邪薬もなければスポーツドリンクもフルーツもなかったので完全にグロッキー状態になっていた。だからといって今から買いに行く余力なんてありもしないのでお手上げ状態になった。そんな時僕の家のインタホーンが鳴った。


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