お天道様も2人の和解を祝福しています
「もしもし!?雪は無事!?」
「もしもし、お姉ちゃんも怪我大丈夫?」
僕と雨宮さんが言葉を発するよりも早く雪ちゃんが言葉を放つ。
2人の声が電話越しにでもわかるほどに重なった。
こういった非日常的なことが起きた時に人の本質っていうのは表に出てくると僕は思う。これは僕の予測でしかないが、彼女がワンコール目で電話に出たのだって偶然近くにいたからではなく、そこで僕からの電話が来るのを待ってたんだろう。雪ちゃんにしたってそうだ。普段なら雨宮さんが先に言葉を発していたりしそうなもんだが、通話が繋がったその瞬間に雪ちゃんは彼女に安否を確認する言葉を放った。彼女も雪ちゃんも見ての通りお互いがお互いを心配で心配でならなかったんだ。
「ごめん!!」
彼女は電話越しに雪ちゃんは僕らの目の前でまるで僕たちの存在を忘れてるかのように泣きながら「ごめんごめん」とお互いに言い続けてる。喧嘩の内容は僕も聞いていないが仲直りできたようで一安心だ。
現状僕に喧嘩をしている人たちを仲直りさせる力なんてないし、現状というかこの先も僕にはそんなことはできないだろう。これはいつものネガティブな考えから来たものではなく、冷静に自分を分析した結果だ。それでも全く無力なわけでもなく、今日のようにキッカケを作ったり、何か助けになることくらいは出来るはずだ。
以前の僕ならばどうしてただろう。なんてことを少し考えもしたけれど、そんなことを考えていたって時間の無駄だ。なぜなら以前の僕にはそもそも彼女のように僕の家を訪ねてくる人がいなかったからだ。彼女はきっとこれを良い方向に向かってると言うんだろうけど僕からしたら案外そうでもないかなという気持ちになったりもする。良し悪しの物差しは人によって違うから何とも言えないものがあるのだけれど。
「太陽さんも外見てください!」
雪ちゃんの声につられて外を見るといつの間にか台風も通り過ぎていたようで空には虹がかかっていた。
「うわぁキレイですねー。」
「こっちは1人で見てて寂しいから今そっちに行くね!!2人ともどこにいるの!?」
「いや、月は怪我してるでしょうが。」
「どぇぇぇぇぇ!!雫!?なんでいるの??」
「人を化け物みたいに扱わないでくれる?2人を雷から匿ってただけ。」
「その節は本当にお世話になりました。」
「いいよ、そっちは日向くんの家に居るんでしょ?今から向かうね。怪我人はおとなしく傷でも舐めてな。」
「ちょっと〜。親友に対して辛辣なんじゃない?ていうか今日のヒーロー太陽くんの声を聞いてないんだけど!?」
「ヒーローは遅れて登場するもんでしょ。家で大人しくしてなさい。」
「かしこまり!」
さっきまで泣いていたとは思えないくらいの機嫌で話す彼女を見て本当に女心は秋の空だと思った。いや。この使い方は違うか。
「ほら。行きますよ!太陽さん!」
「ほら。行くよ!ヒーローさん!」
「雨宮さん少し馬鹿にしてるでしょ。」
「少しじゃなくてかなりね。」
「よく悪びれもなく言えるね。」
「冗談だからね。それで行くよと言ったものの日向くんの家知ってるの日向くんだけなんだからしっかり案内してね。」
「それは構わないけど僕雨宮さんのジャージで外に出るの?」
「着替え無いんだからしゃあないでしょ。現役JKのジャージなんてそうそう着れるもんじゃないんだし匂いにでもかいでなよ。」
「変態扱いされるのはごめんだしやめとくよ。」
「雫姉も太陽さんも漫才はあとでにして下さい!今はいち早くお姉ちゃんの元へ!」
たしかに僕自身いい方向に向かっているのか悪い方向に向かっているのかわからないが、今はこんな時間が続けばいいのにと切実に思った。




