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太陽と月  作者: 高槻博
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不慣れな雨宮さんのボケと僕のボケ

「なんでここに?」


僕は呆気にとられてそれ以外の言葉が出てこない。


「なんでってここ私の家だし。それより雪ちゃん連れてどうしたの?」


びちゃびちゃの僕と雪ちゃんをジッと雨宮さんは見つめた。言葉に詰まった僕を見て空気を読んでくれたのか家の中に入るよう誘導してくれた。


「とりあえずこれに着替えて。」


雨宮さんは僕が彼女に渡したものと同じ学校のジャージを渡してきた。


「いや、でも。」


「でもじゃなくてその格好でいられる方が迷惑だから。自分の服はお風呂場で絞ってから洗濯機いれといて。」


確かに迷惑であることは間違いない。だって僕と雪ちゃんが歩いた通路は水浸しになっていたんだから。


「心配しなくても下着は私のじゃなくてパパのだから。」


もちろんそんな心配はしていなかったが雨宮さんなりの気配りだろう。不慣れながら場を和ませようと柔らかいボケを入れてくれた。僕は雨宮さんに誘導された着衣所で着替え、お風呂場で服を絞った。そうすると服からは大量の水が垂れてきた。寒さで力が入らないのかそれとも雪ちゃんを見つけられて、無事に避難することができて安堵しているからかわからなかった。


「着替え終わった?」


「あ、うん。」


「それで?こんな天気の中何してたの?」


僕がいうことでもないような気がして僕はただただ黙る。


「ま、無理にとは言わないけどさ危ないから気をつけなよ。」


「うん。」


「とりあえず2階突き当たり右私の部屋だから上がってて。」


言われた通りに雨宮さんの部屋へ行くとそこには雨宮さんの服に着替えたであろう雪ちゃんがいた。雷に怯えている様子はなく、室内なら問題はないということなんだろうか。


「まさか雨宮さんの家だったなんてね。」


「迷惑をおかけしてすいませんでした。」


「その話は終わったでしょ。まぁそれでも雨宮さんにはちゃんとお礼しないとね。」


「私の名前を呼んだかい?」


「あ、いやお礼はちゃんとしなきゃねって。」


「雫姉ありがとう。ちょっとお姉ちゃんと言い合いになちゃって。」


「月との言い合いからどうなったらこんな展開になるの?笑」


僕は助けてもらった雨宮さんに事情を伏せる意味もないと思い、あらかたの事情を話した。2人が喧嘩したこと。出てった雪ちゃんを探していた彼女がびしょびしょの姿で僕の家に来たこと、怪我をしていたこと。それから僕に心当たりがあったということで彼女を家に待機させて僕が探していたこと。雷が酷くて危なかったので勇気を出して匿ってもらおうと思ったら偶然雨宮さんの家だったことを。


「なるほどね、まぁ2人とも無事で何よりだね!雪ちゃんも早く元気出さないとこうだぞ!」


そういなり彼女の脇腹をこれでもかというくらいくすぐり倒していた。雪ちゃんは呼吸困難になりそうなくらいケラケラと笑い、ギブアップの証として床を何度もボンボンと叩いた。


「雫姉元気出たから!ギブギブ!」


荒療治ではあったが少しばかり元気の出た雪ちゃんを見て少しホッとした。


「あれ?それで月には連絡したの?」


「あ。」


「日向くん大事なとこ抜けてない?笑」


「雫姉、太陽さんを責めないであげてください!責めるなら私を!」


「そうかそうか。それならくらえ!」


そういうと再び雪ちゃんの脇をくすぐり出した。


「やっぱ嘘です。あとは太陽さんを責めてください!!」


「まぁ冗談はさておき月も心配してるだろうし電話してあげたら?」


「あ、スマホの充電なかった。」


「本当に日向くん抜けすぎ!私の携帯でかけるよ?」


「お願い。」


雨宮さんは自分のスマホを取り出し、スピーカーにして電話し始めた。

そうすると機械音で【この携帯は電波の届かないところにあるか電源が入っていません。】となった。


「え?なんかあったのかな。」


雪ちゃんの表情が一変し、不安を露わにする。さすがの雨宮さんもこれには動揺を隠せないようだった。


「勝手に日向くんの家でたのかな。それとも携帯壊れたとか。」


僕はあることを思い出す。あまりにも色んな事態が起きすぎて忘れてしまっていたことだ。


「彼女のスマホ落として踏んで壊れたんだった。雪ちゃんを見つけたら僕の家電にかけることになったんだ。」


そういうと2人は安心した顔になったが直後、雨宮さんがふざけてツッコンできた。


「そうやってボケてわざとなのか!心臓に悪い!」


「ごめん。すっかり忘れてた。」


「よし、そうとわかれば早く日向くんの家電にかけるよ!」


「うん。」


「番号は?」


「忘れた。」


「おい!笑」


「冗談だよ。」


「日向くんでも冗談言うんだ!」


「僕をなんだと思ってるんだよ。」


場が和みだしたとこで気を引き締めて僕の自宅に電話をかける。再びスピーカーにし、ワンコール目がなるとすぐに電話に出た。彼女のことだ、心配で心配で固定電話と睨めっこでもしていたんだろう。








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