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太陽と月  作者: 高槻博
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昼休み

キーンコーンカーンコーン


4時間目の授業の終わりのチャイムとともにクラス全体が賑やかになる。

友達と昼を食べる人、購買にいち早く着こうと教室を勢いよく飛び出す人、早弁をし校庭や体育館に遊びに行く人、賑やかになる理由は様々だ。


かくいう僕はこの時間1人で昼食を食べ、静かに本を読むのが日課だ。しかし今日は日課通りにはいかない。

屋上に行かないという選択は勿論あったけれど、呼ばれたのに無視するというのは僕の良心が傷つくし、なにより行かなかったら、後々彼女がうるさそうだ。

どんな理由があろうと人と関わるのが嫌だと言っておきながら、自らの足で人と関わりに行くなんて矛盾しているし、ひどく愚かだと自分が恥ずかしくなった。

そんな気持ちを抱えながら僕は重い腰を上げ、屋上に足を運んだ。


屋上に行くと彼女は1人空を見上げていた。


「呼ばれたから来たけど。」


「来ないと思ってたよ!」


「僕だって気乗りしてないよ。昼休みは本を読むことにしてるし。」


「今はどんな本を読んでいるの?」


「君に言ってもわからないと思うよ。それで用件は?」


「つれないなぁ。私からの用件は2つ!」


「1つ目は?」


「1つ目は昨日の太陽くんの話を聞いて私なりに考えてみたことなんでけれど、、、」


「昨日のことは忘れて。」


僕は彼女が喋り終える前にかぶせてそう言った。


「なんで?私の脳はそんな都合のいいようにはできてないよ。」


彼女もすかさず反論してきた。


理由を聞かれると何故だかわからなくなる。


恥ずかしいから?

みじめだから??

かっこ悪いから?

同情されたくないから?

否定されたくないから?


きっと全部正解だけれど模範解答ではないと思った。

僕は自分の意見が人として誇れる生き方じゃないと知っているから現実を突きつけられるのが嫌だったんだ。自分でも半ばわかっていることを誰かに諭されるのが嫌だったんだ。しかしそんなことを口にできるわけもない。


こんな風になりたくなかったなら昨日あんなこと話すべきじゃなかった。

そもそも僕は知り合って間もない彼女にあんな身の上話をしたんだろうと自分を蔑む。


「黙ってたらなんもわかんないよ!私は昨日のこと忘れるつもりないから。」


「もう好きにすればいい。」


半分投げやりで僕は返したが、彼女はかまわず話し続ける。


「それで昨日太陽くんが言ってたことを聞いて私が考えたことなんだけれどさ、太陽くんはある日を境に人と関わるのが嫌になったって言った。自分の殻に閉じこもってしまえば、恥をかかないし、傷つかないって言った。私はね、そう考えること自体そんなに悪いことじゃないと思ってる。みんな1度は考えたことあると思うよ?でも考えるだけで、実行できる人なんてほとんどいないと思う。だってさ、人と関わりを持つことを避けてたら退屈だし、辛いし、なんか寂しくない?それでも1人で居続ける太陽くんは強いと思う。

1人でいる理由は太陽くんにとってとっても悲しいこと、辛いこと、苦しいことがあったんだと思う。

だからこそお節介かもしれないけれど、太陽くんには楽しく過ごしてほしいし、その生活の中心に私が居られたらなって思うの!」


彼女は言い終えるなり、白く透き通った頰をトマトのように赤らめた。

そして再び口を開きだした。


「勝手に熱弁して引いたよね?きもいね。ごめん!忘れて!」


「僕の脳も誰かさんと一緒でそんなに都合のいいようには作られてないよ。」


「やられた!恥ずかしながら私の熱弁を聞いた感想は?」


「僕は僕の意思で1人でいることを好んでるけれど、もし好んでなくても僕は1人だよ。」


「どーゆーことだあ!笑」


「人付き合いがそもそもうまくないってこと。」


こんな冗談交じりな会話をしながら、彼女が僕のことをとても真剣に悩んでくれたことになんだか心が温かくなった。


「真剣に考えてくれてありがとう。」


「どういたしまして!」


この時、僕は初めて彼女に本音でお礼を言った。


「太陽くんの気持ち、少しは変わったかな?」


「どうだろう、でも友達っていいなとは少し思ったよ。」


「でしょ!あ、それで2つ目の用件なんでけど」


そう話しだしたとき、昼休み終了のチャイムが鳴った。


「えーと、放課後暇だよね?2つ目の用件は放課後図書室でね!ばっくれないでね!ではまた教室で!さらば!」


言いたいことを言うだけ言って、僕の返答を待つことなく、その場をさっていった。

僕に予定があったらどうしたんだろうと思ったが、予定なんてそうそうないので、そんな馬鹿な考えはすぐにやめ、彼女のいる教室に戻っていった。

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