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太陽と月  作者: 高槻博
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受験中の雪ちゃんの背中は小さいけれど逞しい

彼女の誕生日パーティーという夏休み最大のイベントを終えた僕は冷蔵庫の中身も尽きたということで灼熱の猛暑の中外に出るのなんて本望ではないが渋々買い物行くことにした。お決まりのスーパーで晩御飯のお惣菜、食後のデザート、飲み物等を購入する。僕は初めて見る食べ物や飲み物に惹かれても購入しない。定番のものを買ったりするのが基本だ。理由を上げるのならば、もし美味しかったらという発想よりもし美味しくなかったらという発想が先に来てしまうからだ。だからといって色んなものにチャレンジして購入する人を否定するつもりもない。僕みたいに失敗した時のことを考えてしまう人がいれば、逆に成功したことを考える人がいる。勿論それは自然の摂理だ。彼女はきっと後者だろう。ニコニコしながら物珍しい商品を手にしている姿が容易に想像がつく。僕はメンチカツと牛乳、プリンを数個カゴにとり、レジに並ぶ。順番を待ちながらボーッとしいていると後ろから部屋着のTシャツを引っ張られた。


「どうもこんにちは!こないだぶりです。」


後ろを向き少し視線を落とすと彼女の妹である雪ちゃんが並んでいた。


「こないだはお邪魔しました。」


「いえいえ!お姉ちゃんが喜んでくれて何よりです。あ、そういえば太陽さんと雫姉さんが帰った後、もう1人お姉ちゃんのクラスメート?が来てましたよ!クラスメートで心当たりあります?」


「悪いけどくクラスの人ほとんど覚えてないから心当たりはゼロだよ。」


「なんか面白いですね笑。でも男の人でしたよ?」


雪ちゃんの発言からするにその人は多分彼女のクラスメートいわゆる僕のクラスメートで男の人。クラスメートのほとんどの名前を覚えていない僕でも1人の人物が浮かび上がってきた。


「もしかたらお姉ちゃんの彼氏かもよ?」


僕が適当にそう答えると雪ちゃんは想像以上に激しく否定してきた。


「それはないですよ!お姉ちゃんの好きな人はきっと違いますもん!」


別に特別彼女の好きな人がいること自体は気にならなかったが、誰とでも仲良くなることができる彼女が好意を寄せる異性はどんな人なんだろうということだけは気になった。


そんな話で盛り上がっているとレジのことをすっかり忘れていて雪ちゃんの後ろに並んでいるご老人に詰めるように優しく指摘を受けてしまった。普段そういったことで注意されることない僕はとても恥ずかしい気持ちになった。2人ともレジで会計を終えると雪ちゃんが唐突に僕に質問してきた。


「太陽さんこの後空いてますか?」


「まぁ、うん。」


「じゃあちょっと寄り道しましょ!」


僕は雪ちゃんの後をつけるように1歩2歩と足を進める。長い上り坂を何度か登っていくと見晴らしの良い場所に着いた。そこからは町一帯を眺めることができ、大袈裟だとは思うが僕にとっては絶景といえる場所だった。周りに人がいないことから察するにここは穴場というとこなんだろう。


「どうですか?ここ知ってる人少ないんですよね!私も誰かを連れてきたのは初めてです!」


「とてもいい景色だね。なんで僕なんかに教えてくれたの?」


「うーーん、なんでですかね?私何かに悩んだりした時にここにきたりするんですよ!なんかここの景色見てると自分の悩みが小さく見えたり忘れられたりしませんか?」


「何かに悩んでるの?」


「悩んでるというより気晴らしです!買い物も気晴らしの1つですし。こう見えて私も受験生ですから!」


そんな受験生の中学生を横目に景色をしばらく見ているといつの間にか日が暮れ出したので慌てて帰った。近くまで雪ちゃんを送ると別れ際に「あそこ気に入ってくれたらまたきてくださいね!」といって背中を向けて帰っていった。その小さな背中を見て僕は心の中で雪ちゃんの受験が成功することを祈っていると同時に時間があったらまたあの場所に行こうと思った。

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