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太陽と月  作者: 高槻博
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彼女の誕生日前夜に自分を俯瞰してみた。

人にプレゼントを買うというものは難しいもので、その人の好みや性格、趣味などを知っていないと買えないものだ。かくいう僕は彼女のことを知らなすぎたので雨宮さんとの買い物ではなにも役に立たなかった。雨宮さんは女性用のコスメを購入していた。僕がなにを買おうか頭を悩ませていると「月は可愛いぬいぐるみ好きだったりするよ。」と助言をくれたので、苦悩の末、なんとか購入することができた。彼女の誕生日の日に彼女宅でお祝いをするということで僕も誘いをもらい、参加することになったのだが、彼女には伝えてないようでサプライズゲスト的な存在だと言っていた。サプライズゲストなんて言葉には似つかわしくない場違いの存在だと思っていたが、「絶対喜んでくれるよ。」という雨宮さんの押しにより、参加することになった。

こうして誰かと話していくと自分の考えが変わっていくのを感じる。将来のこと、これからどうしたいかとかを考えるようになった。今までは今死んでも後悔なんて何1つ残らないと思ってたし、少し先の未来でさえ、考えたことはなかった。今考えるようになったからと言って、そんな簡単に答えが出る内容でもないのでそこは気長にいくしかない。


家族が亡くなったあの日、僕の中の歯車が壊れていった気がした。正直自暴自棄にだってなったし、自殺する人ってこういう気持ちなんだろうと思った。それでも無欲に過ごしながらも行為に移らなかったのは僅かにほんと僅かだけど僕を変えてくれる人が現れるんじゃないかって思ってたからだ。そんな人との出会いを待っていたからだと思う。

それでも高校生になってからも自らは何も変わろうとせず、誰にも心を許さなかった僕が誰かと買い物したり、誕生日を祝ったりするようになった原動力は間違いなく彼女だ。もちろん彼女だけでなく雨宮さんだってその1人だ。それでも人の考えの根本は中々変わらないもので、時々うるさいなと思ったり、関わりたくないって思ったりもするけど、それを差し引いても返しきれないくらい助けをもらっている。普段口になんてしないし、おそらくこれからも口に出すことはないだろうからお祝い事の日くらいしっかり感謝の言葉を述べ、祝ってあげたいと思った。


そんなことを彼女の誕生日の前夜、1人ベランダで柄にもなく黄昏ていた。


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