地震雷火事親父、改め、地震雷火事女性
彼女の誕生日プレゼントを選ぶため、ショッピングモールを徘徊していると、雨宮さんが携帯を見ていた。
「月から遊ぼうってお達しがきた笑」
「行ってきたら?」
「プレゼント選びに来たんだから行かないし、もし行ったら日向くん1人でプレゼント選べるの?」
「いや、それはちょっと。。」
「なら余計な気を使わない!」
そう言って雨宮さんは僕の腹部をポンと叩く。
それにしても都会のショッピングモールなんて初めて来たけれど、規模は僕の想像をはるかに超えていた。敷地面積が広くて大きな建物、そこに敷き詰められたかのような人溜まり、室内こそ涼しさがあるが、外に出た時なんてのは僕のストレスはピークに達する。
僕はショッピングモールについた際に少年Aこと恩田くんの姿を見かけたような気がしたのがずっと気がかりで、もし出くわしてしまったらと不安を抱いていたが、この広さだ、もし見かけたのが彼であっても会うことは無いだろうと1人で勝手に歓喜する。しかしその喜びも束の間、僕はよそ見をしていたせいか、ガタイのいい青年にぶつかり尻餅をついた。
「あ、すいません。」
「日向くん大丈夫?」
情けなくはあるが、雨宮さんが差し出してくれた手を僕はありがたく頂戴し、立ち上がる。
「あれ、日向くんと雨宮さんじゃん、久しぶり。2人ともデート?」
僕と雨宮さんはぶつかってしまった青年に視線を移すとそこには私服姿の彼がいた。僕は警戒してか、1歩、いや2歩下がって対応する。
「久しぶり、デートじゃない。」
「なんだそうなのか、じゃあ何してるの?」
「月へのプレゼント選んでるだけだから。」
雨宮さんが珍しく敵意をむき出しにして殺伐と言った。そりゃあ僕なんかとデートしてるなんて思われたら気分を害することだろう。僕は恩田くんの発言を思慮の浅い発言だと思った。
「あー奇遇だね。俺もだよ。」
その発言が雨宮さんの機嫌をさらに悪化させることになる。
「奇遇だね。クラスでも人気者の恩田くんは私たちなんかよりさぞ素敵なプレゼントを選ぶんだろうね!」
明らかに皮肉で言ったであろうセリフにも彼は気づいていないのか、それとも気づいた上で、あっけらかんとしているのかわからないが表情1つ変えなかった。もし気づいた上であっけらかんとしているのであれば相当な精神力の持ち主だ。
「そんな期待値あげられたらプレッシャーだね。期待に添えるよう頑張るよ。」
彼が雨宮さんにそういうと次は視線が僕に当てられた。
「で、日向くんは何をしてるの?」
この状況で一緒にプレゼントを選びに来てるなんて容易に分かるはずなのにも関わらず、嫌味の理由も込めて聞いてきた。
「プレゼント選び。」
「へぇ、誰に?」
その発言に雨宮さんも怒りをあらわにする。
「わざと聞いてるの?月へに決まってるでしょ。そういうの感じ悪いよ。」
「あ、月へか。俺はお2人さんみたいに頭良くないから悪いね。」
その全くもって気持ちのこもってない謝罪がまた雨宮さんの感に触れる。
「あのさ、この際だから言っとくけど、恩田くんが誰を好きになって何をしようと勝手だけど私の友達に傷つけたら許さないからね。」
「肝に命じておくよ。月は雨宮さんの大親友だもんね。」
「友達っていうのには日向くんも入ってるからね。月だけじゃないよ。」
「へぇ、2人友達なんだ。それにしても雨宮さん普段は温厚なタイプなのにそんなに怒るなんて意外だね。」
雨宮さんの発言に関しては僕も驚いたが、今の彼の発言に関しては僕も同感だ。雨宮さんが何かに対してこんなに怒るなんて想像もしたこともなかった。生前父さんから「女は怖いぞ、気をつけろ。」と忠告を受けたけれどその通りだと思った。
「別に普段私が何されたからって怒ったりしないけど、私の友達とかを傷つけたりするのは別だからね。」
「そう。意外な一面が見られてよかったよ。それじゃあ、俺はプレゼント選びに戻るからまた今度ね。」
「なにあいつ。気持ち悪いんだけど。」
彼がいなくなるなり、雨宮さんが普段の言葉使いから想像できない口調で不機嫌そうに言った。
「ごめん。」
「ん?なんで日向くんが謝るの?」
「いや、僕とデートしてると思われたら、そりゃあキレたくなるよね。」
僕がそういうと雨宮さんは彼女と違って気品のある笑い方でお腹を抱えて笑った。
「そんなことで怒らないよ!ただ最初から恩田くんに敵意むき出しにしてただけだよ。」
「そうなんだ。怖かったよ。」
「そう?女は怒ると怖いからね。あ、私が怒ってたとか言わないでね?イメージ崩壊してしまう。」
「いう人もいないから心配無用だよ。」
「月にもね。」
「いうとめんどくさそうだから言わないよ。」
「ありがと!じゃあ気を取り直してプレゼント選ぼうか!」
「うん。」




