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太陽と月  作者: 高槻博
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2つの夢は正反対

「はひぃー。疲れたー。」


お昼ご飯を抜いてまでアトラクションに乗り続けた僕たちは乗り物酔いも兼ねてベンチで休憩していた。


「ほら、飲み物買ってきたよ。」


「あら。気がきくこと!惚れちゃう〜」


「冗談はセリフだけにしといてよ。」


自分でもこんなリア充の巣窟のような場所にいるなんておかしいと思う。周りから見たら僕たちはどういう風に映っているんだろうか?しっかり友達のように映っているんだろうか?他人同士だとか思われてはいないだろうか?


「どうしたの?大仏みたいな顔して!」


「大仏みたいな顔ってどんな顔なのかわかんないよ。」


「私も!ねぇねぇ最後はゆっくり観覧車に乗ろう!」


「あ、うん。」


観覧車乗り場に着くと彼女の希望で透明な足元が透けてる奴に乗ることになったので順番を待っていると遊園地の店員が声をかけてきた。


「お二人で遊園地なんてラブラブですね!」


突如声をかけてきた店員さんはふざけ半分で言ってる様子はなく思ったことを言っているようだった。先ほどまでは友達のように映っているんだろうか?とか考えていたのに友達の枠なんてゆうに超えてしまっていた。もちろん地味な僕なんかとそんな風に見えてしまっては彼女に申し訳ないと慌てた弁明をしようとする。


「あの、僕たちは、、」


僕がたどたどしく口を開くと彼女が間に割って入る。


「そー見えます?私たち仲良しなんです!」


????


僕も店員さんも頭にたくさんの?を浮かべる。

どういうわけか話が噛み合ってないようだ。この場合の選択肢としては肯定か否定の2択だ。真実はラブラブなんて見当違いなんでもちろん否定だ。しかし彼女の叩き出した言葉は幻の3択目。そんな謎の発言に僕も店員さんも同時に笑いだした。


「ん??私変なこと言った????」


今度は彼女が?マークを浮かべたが、タイミングもよく待っていた観覧車が来たので店員さんの誘導に合わせて乗り込んだ。


「さっき私変なこと言ったかなぁ?」


「君はいつも変だから考える必要ないよ。」


「なにそれ!貶してる????」


「褒めてもないし貶してもないよ。」


観覧車が上がっていくと海の景色が一望できた。文句を言うまでもなく広大で綺麗だった。


「あーー綺麗!こういうの見てると夢を語りだしたくならない?」


「ならないよ。」


「お互いの夢を語り合おうじゃないか!」


「だからならないって。」


そんな僕の話なんて聞こえてるのか聞こえてないのか聞こえててスルーされているのかわからないが一方的に話しだした。


「私の夢はね2つ!1つ目は学校の先生になること!理由は悩んでいる子や夢や目標のために頑張ってる子のアシストをしたいから!他にもそういう職業あるって言われたらそれまでだけど私は先生がいい!」


「なら勉強教えられるくらいにならないとね。」


「ごもっともです。。」


勉学のことはさておき彼女の先生として子供と関わっている姿は想像がついた。子供を成長させるというより子供と一緒に成長していきそうだと思った。

そんなことを考えていると1つ疑問が浮かんだ。夢とは基本的に2つ立てるものじゃない。


「2つ目は?」


「おや、気になるのかい?しかしこれは叶え難いものだ。」


「差し支えなければ教えて。」


そういうと2人しかいない空間なのにも関わらず彼女は小声で言った。


「宇宙を飼いたいの」


先ほどまでの現実的な夢とは一気にかけ離れていたもので僕も正直驚かされた。


「宇宙を?飼う?意味もわからないしわかっても理由が到底納得できそうにないよ。」


「もうこの分からず屋!私たちが今住んでる場所は日本列島に飼われているの。日本列島は地球に飼われていて、地球は宇宙に飼われている、そういう意味で地球を飼いたいの!理由は楽しそうだから????かな?」


100歩いや1000歩譲って意味はわかった。しかしそんな理由で壮大な夢を語るなんて並大抵の人じゃ無理に決まってる。彼女ならではの発想なのかもしれないけど恐れ入った。


「君はテロリストにでもなるつもりなの?」


「まさか!まず飼えるなんて微塵も思ってないから!あくまで夢!先生になる夢は叶える用の夢!」


なんともわけわからないことを言っているようだが、とりあえず、宇宙の反乱因子ではないことがわかって一安心だ。


「それで太陽くんの夢は?」


「僕は話すなんて言ってない。」


「私だけ話してフェアじゃない!」


「君が勝手に話したんでしょう。」


そういうといきなりむくれだしたので、僕も観念する。


「結論から言うと夢はないよ。中学3年のときに5年後の自分へっていう将来の夢を綴って5年後見たときにどうなるかってやつを書いたんだ。君もやったでしょ。」


「やったやった!!私は一応宇宙を飼いたいとも書いといた!」


「そんときに僕は考えることもできなかった。母さんのお姉さんの家に住まわせてもらって特別不自由はなかったけれど、別に僕は死んでも構わないと思っていたからね。唯一の理解者であると思ってた家族が死んじゃうもんだから。けど今は君や雨宮さんと友達になって少しは考え方が変わってるって自分でも思う。将来の夢とかは全然見つかってないけど今なら考えることは出来そうだから自分のペースで見つけてくよ。」


海の景色につられてどうも長々と臭いことを話してしまったと我に返ると彼女は満足気な表情をしていた。


「将来の夢が出来たら私に1番に教えてね!あと理解者はちゃんといるからね!私とか雫ももちろん!それは頭に入れとくんだぞ!」


「ありがとう。」


ただのありがとうという一言だけど普段日常生活で使ってるありがとうとは全然違う。同じ言葉で同じ一言だけど色んな意味も含めてありがとうと僕は言った。


観覧車の時間とは意外と長いものでようやくゴールにたどり着く。観覧車から降りると先ほどの店員さんが微笑ましそうにこちらを見ていたので僕は1度会釈をしてその場を去っていった。観覧車に乗り終え、遊園地を後にした僕たちは長い帰路を辿っているが、行きと同様彼女の口が休むことはなく、騒がしいほどだった。そんな彼女も一応女子なので夕暮れ時を過ぎていたこともあり、しっかり家に送っていった。





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