遊ぶ当日は朝食作りから?
夏の太陽が昇り始めてから1時間ほどしたころ僕は目覚める。時間にすると6時ごろで日が出て間もないのにも関わらず額から汗が吹き出しそうになる暑さだった。
僕がなぜこんな時間に起床したかというと原因は彼女にあった。別に僕が楽しみわくわくで早く目が覚めたなどでは無く、朝6時半に僕の家を訪れるとのことだった。以前休みの日は遅い時だと午前中は寝続けるといっていたので、こんな朝早く彼女が起きているなんて思ってもいないが、僕は念のため出かける支度を着々と進めていた。
顔を洗い、身だしなみを整え、時計の長針が20分を指したころ、玄関のドアの音が優しくノックされた。のぞき穴からそーっと覗くとのぞき穴越しに全力で彼女が手を振っていた。
周りからみたらとんでもない光景に見えるだろう。朝早く高校生がドアに向かって全力で手を振っているのだから。周りの人の視線から隠すように僕は家の中に入れた。
「太陽くんおはよう!絶好のデート日和じゃん!!」
「おはよう。デートじゃないから天気はなんでもいいよ。」
「釣れないなぁ〜用意はもうできてる!?」
「あと少し待って。」
「急がなくていいよ!今日は私が作った朝ごはんを食べるから始まるのです!」
「はい?」
「だから私が作った朝ごはんを食べることから今日のデートは始まるのです!」
「いや、聞こえなかったわけじゃないから。それにデートじゃないから。何度も言わせないで。」
「聞こえてたなら聞き返さないでよ!台所借りていい?」
僕が何をいったところで話が通じなさそうなので、台所を彼女に一任した。彼女は鼻歌を交えながら手際よく料理をしていく。以前カレーを作ってもらった時ははじめてということもあり、出来栄えが心配で心配で仕方がなかったのだが、料理の腕は信用できるものが多少なりともあるので安心して見ていることができた。
そんな彼女の後ろ姿をまだ半分寝ぼけた頭で眺めていると1つのことに気づく。
今日いつもより元気?
何1つ確証なんてありやしないし、ただの直感でしかないけれど不意にそう思った。ただでさえ元気ハツラツな彼女だが、歌ってる鼻歌のトーンが何音か高く感じた。
「なんかいいことあった?」
「いいこと?特になかったよ?なんで?」
「いや、いつもより元気だと思って。ごめん気のせいだ。」
自分の直感を信じて発言したことを後悔していると彼女が口を挟んできた。
「いいことはなかったけど、いつもよりは元気だよ?だって今日楽しみだったんだから!」
そんな直球に言われると内気な僕も恥ずかしくなる。
「どうしたの?顔赤いよ?」
顔色に出ていたようで指摘をされたが平常心を保てるように心を無にする。なんとか他の話題に切り替えようと強引に話題変更をする。
「ご飯そろそろかな?」
「たった今できたよ!」
そういうと食事用の机に品物が出される。朝食の見本と言わんばかりの出来栄えで正直予想以上で驚かされるものがあった。もちろん味も申し分なくて、特に味噌汁が僕の舌を満足させた。絶対に口には出さないが毎日食べたくなるくらいのものだった。
「なんかこれ夫婦みたいだね!!」
その彼女のセリフに僕はまた恥ずかしくなった。おそらく頰も赤く染まってることだろう。さすがの彼女も自分の発言の恥ずかしさに気づいたようで、あからさまに頰を赤らめた。それはそれはまるでトマトのように。お互いに目をそらした状態だったが、もう1度視線を彼女に当てると彼女と同じタイミングで目が合い、おかしくて僕は少し笑ってしまった。そんな僕の表情を見て彼女は僕の3倍4倍、いやそれ以上に輝いた笑顔で笑っていた。