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太陽と月  作者: 高槻博
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色恋で口を動かす女子と妬む男子の目

テストも終え、夏休み前日の今日は自然とクラスの雰囲気も良くなる。体育館で終業式を終えた面々は「校長の話が長い、いらない、クソハゲめ。」と愚痴をこぼしている。僕もクソハゲとまでは思わないが、もう少し短くならないものかと多少のイラつきは覚えた。真夏の日に人口密度が集中している体育館で長話を聞いた日には体調不良者がでても文句が言えないと思う。教室に戻って担任から通信簿の配布を待ってると彼女が声をかけてきた。


「太陽くーん暑い〜。」


「そうだね。君が近くにいるともっと暑苦しくなるから少し離れてくれない。」


「太陽くん夏でも冷たいな!冷酷人間という2つ名を君に授けよう。」


そんなたわ言を無視して読書に入ろうとすると僕が気になっていた話題に触れてきた。


「今日の通信簿と一緒に期末の順位も返ってくるね!私のお願い1つ聞く準備はできてる?」


結果がまだ返ってきてもないのに既に自信満々の様子だった。


「ちなみにお願いっていうのはなんなの?常識の範囲内で頼むよ。」


「ん?お願いを無限にしてください!とか?」


「却下。」


「冗談じゃん!まぁ確かに了承してくれたらラッキーくらいには思ってたけども!」


「烏滸がましい。」


「それは失礼しました。まぁお願いは結果次第で教えます!」


彼女の常識の範囲内はとても広いので常識の範囲内が狭い僕とはかなりの認識の差が出ると思った。


「太陽くん通信簿の自身の方は?」


「別に。」


「体育とか1っぽい!」


「僕のイメージは相当運動音痴なんだね。」


「違うの?」


「まぁ球技系とかは見せられるもんじゃないよ。」


「そこの2人うるさいぞ。イチャイチャはあとでやれ。」


僕たち2人は会話に夢中になっていたようで先生が話し出していたことに気づかなかった。僕と彼女が注意されたことで周りがざわつき出したのに気づいた。また僕が弱味を握ってるだとか、優しさで僕と話してくれてるだとか、くだらないことを言ってるんだと思った。しかしそれは僕の予想より遥かにくだらなかった。


「あの2人最近仲良くない?」


「付き合ってるとか?」


「えーでもお互い好みのタイプ違うっぽくない?」


弱味を握ってるの次は色恋か。そんなことを口に出していってしまうクラスの人たちは程度の低い人間だと思ったが、その程度の低い人間より社会に順応してない僕はもっと程度の低い人間なんだろう。しかし女子はそんな色恋の話をしているが、男子は元気ハツラツで容姿端麗の彼女狙いが多いようで、僕たちの不仲説を立てたいのか、僕が弱味を握ってるだとか、脅してるだとか、そんなことを未だにいっている。そんな話も盛り上がり始めたとこで先生からの叱咤が入り、その会話が全て流れてくれた。


先生の叱咤も終わり、通信簿と期末テストの結果が出席番号順に返される。校長の話が長かったからか、僕らがうるさかったからか、担任の機嫌も悪く、淡々と配っていく。出席番号が後の方の僕も早くに順番が回ってきた。そのまた後の方の彼女にも気づいたら順番が回ってきたようだ。彼女は受け取った瞬間「やったぞーー!!」と叫び出した。クラスも叱咤され、暗くなっていたが、良くも悪くも空気を読めない行動により、クラス全体がまた柔らかい雰囲気になった。


「何位だったの?」


僕が聞くと「内緒♩放課後図書室ね!」と言って雨宮さんの元にかけていった。そのあとなんとなく自分の成績をぼやーっと眺めていると、悩みの核恩田くんが現れた。


「日向くん、君のおかげで前より順位があがったよ、ありがとう。それにしてもひとりぼっちで地味な君を見て気を使って話しかけてくれる月はとても優しいね。」


考えうる最上の嫌味を言い残して彼は消えていった。

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