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太陽と月  作者: 高槻博
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越えられない壁を越えるには

期末テスも無事終わり、ふと彼女に目を当てると満足げな顔をしていたので、そこそこの出来だったんだろうと察した。僕はいつもと変わらない自信があり、自分でもいうのも何だが上位にいることは確信していた。

テストが終わった開放感かそれとも週末を迎えるということへの浮足かクラスの雰囲気がいつもより和やかだった。

ここ最近テスト勉強を理由に彼女と接触機会もそう多くなかったので、恩田くんが何か行動に移してくることは無かったが、未だ交換ノートは彼の術中にあるのが今の悩みの種だ。このままではいけないことは容易にわかっていたので、今日僕は行動に移すことを決めていた。ホームルームが終わり、彼が一人になるタイミングを見計らって声を掛ける。


「ちょっと良いかな。」


「日向くんから話しかけてくるなんて珍しいね。ここじゃ何だし図書室にでも行こうか。」


彼の言われるがままに図書室へと足を進めてる僕にノートを返してもらうための良案は浮かんでおらず、無策の状態だった。歩きながらも策を考えはしたが、打開策など出てくるわけもなかった。


「で、どうしたの?」


「単刀直入にいうけど君が持ってったノートを返して。」


「それはもう月とは関わりませんっていう意思表明で大丈夫かな?」


「大丈夫じゃない。そもそも勝手にノート持っていったあげく、彼女と関わるなっていうこと自体が不毛だ。」


「確かに不毛だね。でもそもそも日向くんと月が関わってること自体がおかしいんだ。月の優しさに漬け込んで恥ずかしくないの?」


「君にとやかく言われる筋合いはない。」


僕が反発すると彼の表情は一変し僕をいつも見てる表情に変わった。


「陰キャのくせに調子に乗りすぎでしょ。話しても時間の無駄だし帰るよ。」


僕は何度か帰る彼を引きとめようとしたが、僕のことなど気にもせず、そそくさと帰っていた。またしても何もできなかった僕は自己嫌悪に追われる。でも彼女のいう成長を僕がするならばこれは乗り越えていかなければいけない壁なんだろう。そしてこの壁はとても高く簡単に越えれるものではない。


「頑張ってたじゃん。」


一人感傷に浸っていた僕は図書室に入ってきた雨宮さんの声で我に帰る。


「盗み聞きしてたわけじゃないんだけど、なんか聞いちゃってごめんね。」


「大丈夫だよ。」


「だいたいの事情は把握したけどノートのこと月には私から上手くいっとこうか?」


「大丈夫。自分でうまくごまかすよ。そのあとは機嫌悪いかもしれないけどフォローの方はお願いできるかな?」


「それはもちろん任せて。」


僕はそう雨宮さんにお願いをし、どうしても一人になりたい気分だったので、素早く家に直帰していった。






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