僕の友達の雨宮さんと彼女の親友の雨宮さん
動く気になれない僕は放課後の図書室で一人座っていた。
時間も数時間ほど経っていて、六月の夕日が沈みかけていた。僕は外の夕日につられる様にベランダに出る。校門の辺りを見回していると下校している彼女の姿が見て取れた。彼女のことを発見したことによって考えない様にしていた交換ノートのことが頭に浮かび、いたたまれない気持ちになった。僕は感傷に浸っていたせいか周りの音に気付かなかった。
「夕日なんか見て案外ロマンチストなの?」
周りに誰もいないと思っていたので、彼女を帰し図書室に来てくれた雨宮さんの声に僕は咄嗟にビクついた。
「そんなびっくりする?笑あれ恩田くんは?」
「帰ったよ。」
「なんかあったの?」
「別に何も。」
「ふーーん。そうやって嘘つくんだ。」
正直今は一人にして欲しい気分だったのもあり、雨宮さんを鬱陶しく感じてしまったが、ただの八つ当たりに過ぎないのでグッと堪えた。同時に自分のことを心配してくれる人に対して、そんなことを思ってしまう自分により一層腹を立てた。
「わざわざ来てくれたのにごめん。帰ろう。」
僕はそう言って帰る支度をし、学校を後にする。
僕が家に向かって歩き出すと、雨宮さんも僕の隣を歩いて来た。
「雨宮さんも家こっちなの?」
「違うよ。日向くん暇でしょ?少し話そうよ。」
少し話そうよと恩田くんとセリフが被ったので、また卑屈な方に考えが行きそうになったが、心のブレーキを精一杯踏み、平常心を保った。
「うん。」
「ファミレスでいい?」
「うん。」
そういって僕たちは何の変哲も無い学校近くのファミレスに立ち寄った。ファミレスに着くとドリンクバーとサイドメニューを頼んだ僕たちは席で一息つく。
「こうやって二人で話すの新鮮だね。月に言ったら仲間はずれにしたってさぞ怒るね。」
「そうかな。」
「まぁ私を仲間はずれにしてることもあるんだし、たまにはいいでしょ。」
「えっと、ごめん。」
「冗談だよ笑」
「よかった。」
「それで恩田くんと何があったの?」
図書室での嘘もしっかりバレている様で僕は返答に困る。雨宮さんは周りを頼りなと優しい言葉をかけてくれたりしたが僕が相談することによって雨宮さんにまで迷惑がかかったらと考えると相談するのも簡単なものではなかった。だからといって僕一人で簡単に処理できる問題でもなくて、もちろん彼女に相談する訳にもいかない内容のため、恩田くんの僕への敵意を知っていて、交換ノートの存在を知っている雨宮さんに相談するのが得策なんだろう。
「そんな難しい顔しないでよ。言いたくないことなら無理に言わなくていいよ。だけど私がこうして話を聞こうとしてるのは日向くんがあからさまに悩んでる様だったし、恩田くん関係となると月にも相談できないことなんでしょ?」
「雨宮さんはどこまで知ってるの?」
「どこまで?なーんも知らないよ?あくまで私の予想でしか無いけど、恩田くんは月が好きで仲の良い男子の日向くんを敵視していて、それ関係で日向くんが何か悩んでるのかなぁと。そしたら月に相談するっていう選択肢はなくなるじゃん。日向くんが自分から相談してくる訳ないってわかってるけど、それを見過ごしたくはないから直球で聞いてみることにしただけ。」
「本当に凄いね、ほぼ当たりだよ。」
「伊達に二人の友達やってないからね。よかったら話聞くよ?」
「話を聞いてくれるのはありがたいけど、正直自分でも色々整理できてないことが沢山あるから、また別の日に相談乗ってくれるとありがたいです。」
「了解!じゃあとりあえずこの話は終わり!せっかく来たし楽しく話そうよ。」
そうして心の片隅にモヤモヤを残しながらも雨宮さんと学校での話などで盛り上がり解散した。