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太陽と月  作者: 高槻博
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もし僕に彼女の勇気の一万分の一でもあれば。

朝礼の前の予鈴がなると担任の先生がはいってきて朝礼を行う。

内容はテスト期間なので部活動は休みということ、遊んでばかりいないで勉強するようにということ、赤点がある場合は一科目につき夏休み一週間の補講ということだった。

勉強は僕に対して大きな問題ではないが、周りの反応はそうでもないらしい。今回のテストは夏休み補講になるかの大事なテストなので、いつもはテストを気にしていない面々も多少の焦りはあるようだ。

昨日参考書を見ただけで勉強した気になれるスキルを持っていると豪語していた彼女も例外ではなく、周り以上に動揺が見て取れた。彼女には一応お世話になってるし、お節介かもしれないが助け舟を出すことにした。


「テストの方は大丈夫なの?高校の一学期のテストは中学のおさらいだけど覚えてる?」


「覚えてるよ。前のテストの順位はしっかり180位だよ!」


「僕たちの学年200人だよ?」


「知ってるよ。正直、だいぶピンチ。」


「一応そのなんというかお世話になってるし僕が教えようか?勉強。」


「いや、大丈夫。自分でなんとかする。」


彼女は喜んで教えを乞いてくると思ってたので、やっぱり余計なことをしてしまったかと少し反省する。


「その代わり!もし私が20位以内に入ったら、私のいうことを一つ聞いてくださいな!」


「いうこととは?」


「内緒♪」


内緒ということは僕にとって良いことではないということは容易に予想がついたが、彼女のやる気の糧に少しでもなれれば僕はこれを承認した。


「ほんとに?雫!!早く勉強教えて!休み時間もお昼休みも放課後もマンツーマンだからね!」


「普段から計画的の勉強してないからそうなるんだよ。」


「お願い!一生の!」


「それ何度目。」


「ごめん!新しくできたお菓子屋さんのケーキ一つで勘弁してくださいな!」


「よろしい。私が教える以上、赤点回避は約束するよ!」


「いや目標は学年20位!」


「え?なんで?目標高くない?」


僕の前でそんな会話を繰り広げると彼女は僕に聞こえないよう雨宮さんに耳打ちをした。

すると雨宮さんはそういうことならと彼女を援護することを誓っていた。


「私トイレ行ってくる!」


そう言い残して彼女はダッシュで教室を飛び出していった。

わざわざそんなことを宣言しなくても、ましてや女子なのにと思った。


「そういえば雨宮さん、彼女のお願いってなんだったの?」


「教えないよ。女の子の約束だからね。教えて欲しかったら友達100人作ること!」


「無理そうだから大丈夫。彼女が20位以内に入るなんてありえないし。」


「わかんないよ?月はやればできる子だし、何より教えるの私。侮らない方がいいよ。」


「結果楽しみにしてる。」


「雫!勉強するよ!太陽くんは勉強してる間は私に話しかけないでね!」


「うん。」


「あ、でも大事な用事があるときはどうぞ!」


「大丈夫。ないから。あということは僕の出来る範囲で勘弁してね。」


「はぁぁぁい!!」


それからというもの彼女は宣言通り、休み時間もお昼休みも放課後も勉強に明け暮れているようだった。

それとほぼ同時期に少年Aこと恩田くんが彼女の勉強を妨げているように彼女に接触を測っていた。僕らのテスト勉強での賭けの話を盗み聞きしていたんだろうかという疑惑を抱きながら、何度か彼を注意しようとしたが注意できる正当な理由もないし、僕が注意する資格もないので見ていることしかできなかった。彼女も優しいので、鬱陶しさを微塵も出さず毎度毎度しっかり対応していたので、心の底からすごいと思った。

こんな些細なことで注意するのもおかしな話だと思ったが、こんな些細なことを注意できない僕自身がとても歯がゆくなったと同時にとても恥ずかしくなった。それでも何もすることができない僕は一人机に突っ伏した。




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