疑うくらいなら信じていたい。
新たな悩みのタネを抱えた僕は重い腰をあげ、登校していると視界の先に雨宮さんの姿が映った。
それと同時に昨夜のメッセージを返していないことも思い出した。
「おはよ、日向くん。」
「おはよう。」
「昨日LINEの友達追加きたからメッセージ送ったのに無視したでしょ?」
「いや、返さなかったのは悪かったけど、無視したとかじゃなくて。」
「昨日は疲れて寝ちゃって朝起きたら忘れちゃったんでしょ?」
当然のように僕の心を読んだ雨宮さんは首が吹っ飛ぶんじゃないかというスピードで後ろを振り向いた。
「どうかした?」
「いや嵐が来るなぁと思って。」
「あ。傘。」
「傘はいらないよ。」
雨宮さんの発言で僕の頭の上にたくさんの?マークが浮かぶ。そんな僕のわかりやすい動揺を見られたのかフフッと笑われてしまった。
「とりあえず歩こうか!意味はそのうちわかるよ。」
未だに解決できない疑問を抱えながらゆっくりと足を動かすと聞き覚えのある声がした。
「お二人さーん!!!!」
嵐の正体がわかった僕は疑問が解けたことに満足する。
「傘いらなかったでしょ?」
「うん。でも激しい嵐だね。」
「ほんと。」
「私をハブくなんてひどすぎ。」
「自分の悪口言われてるの聞いてて楽しい?」
「そんな話してたの!!もっと酷くない。」
「日向くんがね。私は致し方なく聞き手に回ってたの。」
「ちょっと太陽くんどういうこと?私たち仲良しでしょ?」
僕は後ろから首根っこを掴まれた。
「痛いよ。冗談に決まってるでしょ。」
「え、雫そうなの?」
「まぁね。」
騙される方が悪い。そう思った。
ここまで簡単に騙されてしまうと将来何かしらの詐欺に引っかかってしまいそうで心配になった。
「日向くんが騙される方が悪いって。」
雨宮さんがそういうとギロッとこちらを睨まれた。心の中で思ってたことを弁明されたので真っ向から否定できない僕は軽く首を左右に振った。彼女がこんなに簡単に騙されてしまうのは彼女がちょろいというのもあるが、簡単に騙せてしまうほど雨宮さんのことを信頼しているからだと思った。
「私が悪いの?」
こんなどうでもいい話で落ち込む彼女を見て少し羨ましさを覚えた。
「悪いとは言わないけれど普通騙されないでしょ。本人に堂々と悪口を言って得することなんてほとんどないでしょ。」
「しょうがなくない?雫が言ったんだから。」
「それはしょうがない理由にはならないよ。君はもう少し人を疑うことを覚えた方がいいよ。」
「人を疑うのってなんか悲しくない?疑う方も、疑われる方も。それなら私が勝手に信じて裏切られる方が傷が少ないかなって。」
「そんなスケールの話してないし、疑うことも大事だよ。」
「そんな説教じみたことしないで早く学校行くよ!」
僕ら三人が教室に入っていくといつも以上に僕を睨む恩田くんの姿があった。
日を重ねるごとに鋭くなっていく目を見て、彼女が行き過ぎたことをされないか心配になった。
こんな時、話を聞いてくれる人がいたら少し楽になるのかと思ったが、そんな人が現時点でいないのは僕の努力不足なので自分の力でどうにかしてみようと思った。




