僕はゆっくり進む。それはまるで亀のよう。
「それより僕からもお願いしたいことがあるんだけど。」
「なになに〜?仲良くなった証にスリーサイズでも聞きたいの?」
「知ったところで秒で忘れるよ。」
「ひっど!私のナイスボディに謝りなさい!そうじゃないと聞いてあげません!」
「じゃあ大丈夫。」
僕が相談することを断念すると彼女は「ごめんーー」と僕の体を強く揺すってきた。
「それで私にお願いとは?」
「僕もいい加減前に進まなきゃいけない時がきたと思うんだ。いきなり行動に移したりすのは無理だと思うし、少しずつになるだろうけどね。だから何かあったら相談とかに乗って欲しい。」
「そんなのお願いすることじゃないでしょ!当たり前だよ!」
彼女は自分の胸を叩きながら自信ありげにそう言った。
「ありがとう。」
「礼には及ばないよ。その代わり私の相談も聞いてね。」
「うん。」
ピコン。
彼女の携帯の音がなる。
「あ。ママだ。太陽くんが大丈夫かだって!話に夢中になって二人のこと忘れちゃったね笑」
「僕は大丈夫だから早く家に帰りなよ。話聞いてくれてありがとう。」
「何言ってるの!家に来て元気なとこ見せないと!涙の理由は私が誤魔化しといてあげるから。それに二人とも太陽くんが戻るまでケーキ食べずに待機してるんだからね。」
ただでさえ迷惑をかけ合わせる顔がない僕だったがこれ以上迷惑をかけるわけにもいかないので再び彼女の家に戻っていった。
「ご迷惑をおかけしてすいません。もう大丈夫ですので。」
「良かった。ごめんなさいね。急に息子ができたみたいとかいって気を悪くさせてしまって。」
僕はそんなことないと、とても嬉しかったと弁明を入れようとするが、僕より先に彼女が動いた。
「ママ違うよ!太陽くんは食材への感謝の気持ちが抑えきれなくて涙が出てきたんだって!」
涙の理由を上手く誤魔化すといったが、あまりにも理由が酷すぎる。それじゃ僕は毎日、いや毎食涙していることになる。
「ね?太陽くん。」
彼女は僕に相槌を求めてくる。
そんなわけないと疑いの目で見る彼女の母と雪ちゃんを横目に彼女は下手なウインクでさらに相槌を促してきた。
どうやら強引に押し通す作戦らしい。
「流石にそれはないよ。」
僕は悩んだが、毎食食材への感謝の気持ちで涙している変人になるには気が引けたので正直に否定した。
「ちょっと太陽くんの名誉のために上手く誤魔化そうとしてるのに裏切らないでよ!」
「ご家族の顔を見てみなよ。全然誤魔化せてないよ。」
「くっそーー敵を騙すにはまず味方からか。」
「多分というか絶対使い所違うよ。」
僕がそういうと三人はとても華やかな笑顔を浮かべていた。
彼女は声をあげて笑うなど違いはあったけれども笑っている笑顔は三人とも似ていて流石は家族だなと傍観していた。