眩しすぎる月
「ごめんね?ショートケーキが良かったんだよね。気づかなくてごめんね。」
「は?」
「え、違うの?ショートケーキが食べれなくて帰ちゃったんじゃないの?」
「違うよ。」
彼女の馬鹿げた発言を聞き僕は少しだけ平常心に戻る。
彼女が真剣に考えてくれたことは顔を見れば容易にわかった。
しかしどういう風に見れば僕が食べ物でごねたように見えたのかはさっぱりわからない。
「じゃあママの鍋がマズかったとか!?それとも雪にいじめられた!?それとも楽しくなかった!?」
彼女は彼女の中で考えうる可能性を全て述べてきた。
「全部違う。」
「じゃあどうして?本当に用事があったわけじゃないでしょ?」
「僕は昔から友達がいなかったんだ。でも昔は友達が欲しいと思ってたし、休み時間ゲームの話をしたり、面白いテレビの話をしたり、放課後友達と遊んだり、そういう一般的に楽しい生活に憧れてた。」
「うん。」
きっと僕はまだ全然平常心になど戻っていなかったんだろう、意味不明なことを口走っていることに気づきブレーキをかける。
しかし彼女は真っ直ぐで眩しいほど真剣な目で僕に視線を当てながら僕が再び口を開くのを待っているようだ。
「やっぱりなんでもない。」
「無理にとは言わないけど話してよ。私はちゃんと聞くし、もちろん誰にも口外したりしない。そうやって抱え込んでたっていいことないよ?」
彼女が誰かに言いふらすなんて僕は思ってなかった。だけど、ただのクラスメートにプライベートの重い話をされたって返答に困るだけだ。僕が言われる立場だったら絶対に困る。
「ただのクラスメートにするような世間話じゃなからね、興味本位で聞いたところで返答に困るだけだよ。」
「何言ってるの?私たち友達でしょ?それもかなりの。それに太陽くんの様子見てたらそんな興味本位で聞いちゃいけないことだってわかってる。でも何か少しでも力になれることがあるならなりたいだけ。」
そんな恥ずかしいことを簡単に口にする彼女に釣られるかのように僕の口は自然と動き出していった。