俺だけが知らない理由
俺はとりあえず恩田の家に向かおうと立ち上がった。
立ち上がった瞬間、雫は俺が何をしようか察したのか、俺の腕を掴んできた。
「ちょっとどこ行くのよ。」
「恩田の家に決まってんだろ。」
「もう時間も遅いしやめなよ。こっからそんな近くないし。」
「そういうん問題じゃねぇだろ。そもそも雫もなんで俺に言ってくんなかったんだよ。また俺だけハブかよ。」
「は?何その言い方。何?いじけてんの?みっともない。あんたがそうなる気がしてたから話せなかったんでしょ。それに当の本人たちが我慢してるのにうちらが乗り込んでどうするの。」
いろいろな感情が込み上げてきて、既に冷静じゃなかった俺は雫のその言葉に反応してしまった。
「うっせぇよ!さわんな!」
俺は掴まれていた腕を強引に振り払った。雫は少しよろけ、床に尻餅を着いた。
「あ、ごめん。」
「あっそ。もう好きにすれば。早く帰ってよ。」
「いや、そういうつもりじゃなくて。」
「何急に潮らしくなって。早く帰ってよ。」
「明日はどうする?」
「うるさい。早く帰ってよ。」
俺は雫にそう言われると足早々に出て行った。
完全に冷静さを失っていた俺だけど雫を怒らせて始めて冷静さを取り戻した。しかし時すでに遅しで俺は気づけば帰路を辿っていた。冷静になって雫が言っていたことを思い出すと本来なら反論の余地もない内容だった。当然俺はその日恩田の家に向かうことは無かったし、寄り道することなく家にかえった。家に帰り、雫にLINEにて謝罪をしたが、連絡が帰って来ることは無かった。