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太陽と月  作者: 高槻博
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捗らないテスト勉強

【6月4日】


やぁやぁ太陽くん、中間テストの時期になってきたね!ちゃんと勉強しているかい?私はもちろんしてないよ?

太陽くんの調子はどうよ?よかったら今度勉強教えてね!


P.S.明日の夕食は何も用意せず待ってること!




最後の最後に余計なことを書いてきたようだ。

彼女は僕に実の親がいないことを察しながら、出来るだけ気を使わないように接してくれた。

出会って数週間の頃は彼女の思考を読み取ろうと必死だったが、最近ではそんなことは時間の無駄だとわかってきた。


時刻は夜の23時前ではあったが、明日は日直ということもあり、早めに就寝することにした。


朝、起床すると空はどんより曇り空であった。

例年よりほんの少し早い梅雨入りとうことで湿度も日に日に増し、ジメッとした日が続く。


現時点でまだ雨が降ってないことを確認した僕は折り畳み傘を持って学校へ向かった。


7時過ぎに教室へつくと、そこには名前も知らないクラスの中心人物であろう彼が座って、こちらを無愛想に凝視している。


「おはよう。日向くん。」


彼が僕の名前を知ってることに多少驚きはしたが、入学から2ヶ月もたっているのだから覚えてないのは僕くらいだと我に帰り、心のこもってない社交辞令の挨拶に対して小声で挨拶を返した。


僕は早速日直の仕事に取り掛かる。

しばらく作業をしているとテンポの速い足音がこちらに向かって近づいてくる。


「おっはよっーー!」


朝からこんなにテンションの高い人は言うまでもなく一人しかいない。


「おはよう、月!」


僕の時とは明らかに違う態度で彼女を出迎えた。彼女は彼の挨拶に笑いかけて対応すると、速やかにこっちによってきた。


「日直の仕事手伝うよ!」


僕の彼女を見る目線の先にはこちらを睨む彼の姿があった。普段クラスで振舞っている爽やかな態度からは想像出来そうにもない変わりようで同一人物でかさえも怪しむ始末だ。

僕はその視線からすぐに目を反らし、彼女の優しさに甘え、日直の仕事を予定より早く終えた。


6時間目が終わり、日誌を書いている僕に対して彼女は机を揺らしたり、椅子を揺らしたりと可能な限りの邪魔をしてきた。


「邪魔。」


「そんなに怒らないでよ!それ終わったら図書室に集合ね!」


日直の仕事を終え、図書室へ行くと珍しく真面目に勉強している彼女の姿があった。


「お待たせ、今日は何の用?」


「今日は私の家族と太陽くんで鍋パです!」


「遠慮しとくよ。」


彼女は不敵な笑みを浮かべる。


「君がそう言うのは想定内だよ!」


「だったら言わないことだね。」


僕は吐き捨てるようにセリフを吐く。


「だけどね、もう私のママは太陽くんの分の材料も買っちゃってるよ?これでドタキャンするのはどうかと思うなぁ。」


彼女は本当に変なとこで悪知恵が働くので、用意周到に僕を攻めてくる。


「あ、大丈夫!パパは仕事だから卒倒しちゃうことはない!」


そう言う問題じゃない。


「それまでは勉強ね!私がわかるように的確に勉強教えてね!」


彼女は嵐のように言いたいことを言うだけ言って勉強を教えるよう僕に言ってきた。


しかし僕もこれには反論する。


「勉強を教えるのはいいけど、そのあとのは行かないよ。」


「なんでよ!ご飯はみんなで食べたほうが美味しいことは立証済みでしょ!」


「そもそもなんで、そんなぶっ飛んだ話になっちゃたの。」


ことの始まりを僕は彼女に聞く。


「えーとね。私がママに太陽くんの話をしてたら、男の子の食べっぷりが見たい!的な?私の家、私と妹の女姉妹だからさ!」


彼女のこの突発的な性格は母親譲りなのだと、その話を聞いて思った。


「食べっぷりを見たいなら僕は不適任だと思うけど。」


「知ってるよ?」


じゃあ、なんで僕を誘ったの。

僕はおもわず自分の心の中で突っ込む。

彼女と話していると謎なことばかり言うので自分が可笑しいのではないかと錯覚してしまう。


「食べっぷりなら、朝早く教室にいた彼なんかの方がいいんじゃない?」


僕が何気なくそう言うと彼女は見るからに頭を悩ませた。


「こんな話ってあまりいいふらすものじゃないから内緒にしてね?」


重要な話なように言うものだから内容は多少なりとも気になった。

僕が一つ言えるものはいいふらす相手も居ないから広まることはないと言うこと。


「言う相手も居ないからね。」


「また寂しいこと言うねぇ。」


「早く言って。時間の無駄。」


「私ね、恩田くんに何度か告白されて振ってるからさ。」


「恩田っていうのは朝居た彼だよね?」


彼女は当たり前だろという顔でこちらを見る。


「まさか、まだクラスの人の顔と名前覚えてないの?」


彼女は表情を一転させ、引くような目でこちらを見る。


「当たり前だよ。覚える気もないんだから。それにしても、君に告白してくるなんて、その彼だいぶ物好きなんだね。」


彼女は容姿もよく、人当たりも良いので、好意を持つ人がいてもおかしくない無いが、それをいうと調子に乗ることは目に見えているので、嫌味を言う。


「私はこう見えても結構モテるのだよ?」


どうやら嫌味を言っても調子に乗ってしまったようだ。

しかし、本気か冗談か自分をモテると豪語する彼女が笑う姿を見て、絵になると思ってしまっていた。

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