表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽と月  作者: 高槻博
114/123

人の優劣は何で決まり、誰が決める

私の心配事の1つは今日最後にダンスを踊った恩田くんのことだ。私は彼が苦手だった。頭脳や運動能力は確かに頭一つ秀でてはいたけど周りの人間をどこか見下しているような気がしていたし、厚く硬い仮面をかぶっているような気がしていた。それは我々JKが醸し出すあざといアピールなんてゆうに超えてしまうほどに。それに何よりも好印象が持てなかったのは彼が太陽くんに悪い意味でちょっかいを出している気がしたからだ。現場を押さえたわけではないから嫌いになる要素には至らなかったし、雫に聞いてもそんなことないとは言っていた。だけど苦手だったのは本日ダンス中に卒業してしまった。


じゃあ好きになったのかって??そんなわけない。大嫌いになった。


前も述べたことがあるかもしれないが、私は相当な理由がないと人を嫌いになんてならない。そんな私になぜここまで言わせるかって?彼は私の友達をバカにしたからだ。私は自分のことをバカにされても怒りはしない。いつも茶化されて怒ってるだろって?あれは怒ってるんじゃない。むくれているんだ。フグのように。今までだって太陽くんともめたような感じになったことは何度もあるけどあれは怒ってない。むくれてるだけ。


さて、話は戻すけど彼はダンス中に私に問いかけた。太陽くんとはどういう関係かと。私に好意を持っていることが明らかな相手に対し、「太陽くんに片思い中。。」なんて言ったら太陽くんがよく思われないってわかってたからそこは勿論うまく誤魔化した。誤魔化したら今度は俺と付き合ってくれと言い出した。私は勿論断った。彼は続けて言った。試しでもいいからと。その試しの付き合いがいつか本気になるのなら、その試しでの付き合いに意味はあるのかもしれないけれど、どれだけの時間をかけても私が彼を好きになることはないから断った。すると彼は何かの線がプチっと切れたように顔を怖めて握っている手を強く握り、低い声で喋り出した。


「さっき誤魔化した時は何も言わなかったけど、月は日向くんのことが好きなんだろう?あいつのどこがいい、勉強はできるかもしれないけど、協調性もなければ人望もない、この世は弱肉強食の世界でできている、俺みたいに人望の厚い人間は多少、嘘をつこうが信じられ、あいつのようなカスは隅っこで細々と生きていることになる。俺がその気になれば俺はあいつをクラスからより一層ハブくことだってできるんだぞ。」と。


恩田くんの厚く硬い仮面が剥がれた瞬間だった。手も強く握られ、顔も怖めていたのに声は低く小さかったのが逆に狂気を感じた。だけどそんなことにひるむ私じゃない。


「私も恩田くんのいう弱肉強食の世界っていうのにはすごく同意するなー。何をするにも能力が問われる世界だしね。でも何を持って弱いと判断して何を持って強いと判断するの?気の強い人はクラスでも地位の高いところにいるかもしれない、だからと言って社会に出たら必ず有能になる?違うでしょ?気の弱い人はクラスで目立たないかもしれない、でも社会に出て役に立たない?違うでしょ?恩田くんが自分自身太陽くんより優れていると思うのは勝手だけど、あくまでそれは個人の価値観でしかない。恩田くんも言ったから私もいうけど私は恩田くんが太陽くんより優れているとは思わないよ。私の価値観による偏見で見ると人を無下に扱うような人は優れてるとは言わないからね。」


そういうと彼は黙り込んだ。そしてそれ以降ダンス中に私たちが会話することはなかった。これだけだったら私は彼のこと嫌いにはなれど大嫌いにはならなかったかもしれない。私が彼を大嫌いになったのは閉会式を終え、優勝祝いの写真撮影も終え、解散になった頃、私を校舎裏に呼び出した時のことだった。私が校舎裏に行くと彼は遅れてやってきた。その手には身に覚えのあるノートを片手に持っていた。


「このノートに身に覚えは?」


これが彼の第一声だった。ノートの表紙には交換ノートと書かれてあった。身に覚えも何もそれは私と太陽くんの交換ノートで太陽くんが少しの間やめさせてくれと言った交換ノートだ。


「このノートどうしたと思う?」


私は彼が盗んだと思ったのですごく怒りの血が湧いてきた。でも何も言い返さなかったのはここで激怒する価値が彼にないと思ったからだ。私が怒りを抑えながら平然とした顔をしていると彼はペラペラと話し出した。


「これはね、日向くんのカバンから盗んだんだ。日向くんも知ってるよ?勿論あいつは取り返そうとしたけど返すわけないよね。このノートをもっと有効活用しようとしたんだよ?例えばこのノート捨ててあったとか言って2人の仲を引き裂くみたいな?でもそんな回りくどいの面倒だから簡単に行くよ。俺と付き合え。断ったらこのノートは返さないし、こんな幼稚なことを月とあいつが2人でやってるってクラスに言いふらす。そうしたら月の株も急激に降下するよ?日向を思うならどうした方がいいだろうね?」


彼を本当にクズだと思った。一瞬で大嫌いになった、顔も見たくない、素直にアピールしてくるならまだしも、脅して付き合おうとする時点で男としてもクズだ。そして一応言っておくけどノートが捨ててあったからと言って即座に太陽くんとの仲が壊れるようなことはない。しっかりと経緯を聞いた上で判断するに決まってる。呆れてモノも言えない私はいつの間にか彼に近づきビンタを一撃かましていた。


「最低。言いふらしたければ好きにすれば?太陽くんと交換ノートしてるだけで株が下がる意味がわからないし、もし下がったとしても私が理解して欲しい人に理解してもらえてればそれでいい。」


私はその場をさって今に至るわけだけどクラス会に出席していない彼を見て言い過ぎたかな?なんて思ったけどのちに彼は全く反省すらしてないことを知り、恐ろしいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ