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太陽と月  作者: 高槻博
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誤った黒歴史誕生の秘密とリレーの結果

僕は雨宮さんの脅しにより、お呼びで無いことはわかっていながらもクラスの大半が参加する打ち上げに行くことになった。

お店に着くまでの間、脅しのネタにされているフォークダンスの出来事について時を巻き戻していこうと思う。



時は問題の代表リレーを終え、ほぼ全校生徒の熱が残った中でその熱を利用するように男女混合のダンスに入っていった。僕の相手である雨宮さんはその熱をまともに浴びていたようで他の生徒より熱が入っていった。


「太陽くん、ぷ、ぷぷwwww」


いつもと僕の名前の呼称が違うことが雨宮さん自身のテンションの高さを表していた。何をこんなに雨宮さんが笑っていたかというと、僕の代表リレーでの出来事だ。僕にとっては黒歴史以外の何者でも無く、全員の記憶を消してやりたいと思っていたが、雨宮さんがこんなに笑うくらいだ。影の薄い僕がやったとはいえ、全校生徒の記憶には強く刻まれてしまった。トイレに行こうとトイレに向かえば道行く人に「あーさっきのリレーの人だー。」などと噂されていた。やっぱり出なかった方が良かったのかななんて思いはしたけど、そんな考えはすぐ捨てた。以前僕が彼女に言ったように何かを得るには何かを失うリスクがついてくるんだ。今回でいうと成長するために、前に進むために、代表リレーに出ることを決意した。その代わり恥をかくかもしれないというリスクを得た。結果恥をかくことになってしまったけど、恥をかくかもしれないという選択から逃げることなく、代表リレーに出ることを決意したという過程に意味があるんだと自分に言い聞かせた。


僕が周りの声が聞こえないように自分の世界に入っていると雨宮さんが首を鷲掴みしてきた。


「コラー。もう始まるよ。練習したでしょ?ホラ!」


雨宮さんはそういうなら手を差し出してきた。練習でもそうだったけど出された手を握る、それは僕にとってこれ以上ないハールドの高さだった。練習の時はなんとか握ることが出来たけど本番だとリレーでのことがあっただけに、周りから見られているんじゃないかという自意識過剰な被害妄想に駆られた。そんな僕を焦ったく思ってか、僕の手を強く握り、自分の体の方へ引いてくれた。始まってしまえば成るように成るもので、最大の難関を終えた、僕は数十分におけるダンスは難なく終えた。なら何が僕の脅しの材料になり得たかというとダンス中に話していた雨宮さんとの会話だ。ダンス中は始まってしまえば2人で会話をしながら踊ってる場合が多く、僕らも同様だった。その時僕は恥をかきながらもリレーを終え、同時に全競技を終えた安堵感から心のネジが緩んでいた。


「日向くんそんな落ち込まないでよー。」


「そりゃあ、あれだけの醜態を晒したら落ち込むよ。」


「いやいや、結果良ければ全てよしでしょ!」


「それをいうなら終わり良ければ全てよしでしょ。その言葉通りに従うなら終わりが良くなかった僕は良しじゃないよ。」


「いやぁー。でもさ日向くんの走り凄かったよ?今まで見た中で1番早かったし日向くんをアンカーにしてよかったよー。恩田の言う通り恥はかいたかもしれないけど恩田や日向くんが思い描いてた恥とは全然違う意味になったでしょ?それでいいんだよ笑」


この会話の通り僕がやらかしたことはリレーの結果ではなく、その後のことで、厳密にいえばその直後のことだ。僕がアンカーとしてバトンを受ける時は1位から3位が混戦している状態だった。僕はその混戦の中でバトンを受けた。バトンを受ける直前周りからの声などによりプレッシャーに押しつぶされそうになってネガティヴな思考だけが先に立った。けど3走目の彼女がバトンを渡す瞬間、「大丈夫だよ。」と言ってバトンを渡してくれた。誰でも与えることのできる一言だったのかもしれないけど彼女が言ってくれることに大きな意味があった。僕の事情を知っていて僕が逃げ続けていることを知っている彼女が背中を押してくれたことに。バトンを受けてからは前の走者だけを見てとにかく走った。走る前までは鉛のように重かった足も彼女の言葉を受けてからは先ほどまでが嘘のように軽くなり、気がつけば混戦の中を勝ち抜き1位でゴールしていた。問題はこの後で全てを出し切った僕は地面に向かって絵の書いたようなヘッドスライディングをしてしまったということだ。


「前の僕ならあり得ない結果だからね。色々協力してくれた雨宮さんには感謝の言葉しかないよ。」


「そうやっておだてても何も出てこないよ?むしろハーゲンダッツ一個奢って!」


「そのくらいのお礼はもちろんさせてもらうよ。」


「やったね!」


「それで私以上に色々月には助けられたり、きっかけを貰ったりしてるわけだけど、実際のところどう思ってるの?」


「好きだよ、、、、、、、、、友達としてね。彼女には本当によくしてもらってるし、救われてる。」


僕にしては大胆なこと言ったなと雨宮さんの様子を伺うと僕の発言の後の方は全く聞こえてないようで完全に舞い上がってる様子だった。


「え!ラブなの!?ラブなんだ!」


「え、いやだから。友達として。」


僕の必死の弁解も雨宮さんにはまるで聞こえてないようだった。こうやって僕の誤った黒歴史が新たに誕生した。

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