悪魔ヅラのヒーロー見参
点数に直結する種目が代表リレー1つになったところで僕の体からは冷や汗が滝のように流れ出した。現在僕らのクラスは7クラス中7位ではあるものの1位から7位は混戦で、代表リレーで僕らのクラスである4組が1位になり、現在トップの1組が最下位になったら逆転優勝になるといったドラマのような展開が出来上がってしまったからだ。
「太陽くん見て見て!あのステップ!私もできるかな!」
彼女はそんな点数すら気にしていないようで現在グラウンドで行われているダンス部のダンス披露中に釘付けだ。普段ならそんな彼女の戯言にも何かしらの返しをしていただろうけど今回はそれすらしなかった。というよりする余裕がなかった。この時周りのグラウンドに向けての声援ですら鬱陶しく苛立ちを覚えた僕は1人校舎の方に足を向けた。彼女はダンス部のダンスに釘付けだったので僕がいなくなったことには気づかなかっただろうけど、雨宮さんとは目があった。僕はなんだか逃げているような気持ちになり、目をそらした。そして校舎への足の回転速度をあげた。校舎に入ったからといって何かをしにきたわけでもどこかに行きたいわけでもなかった僕は教室の自分の席に着いた。
「やぁ、こんなところで何をしてるの?」
ひと息つく間もなく、僕とは違った目的で現れたであろう恩田くんが現れた。
「人混みに嫌気がさしてね。避難中だよ。」
僕がある程度の本音をさらけ出すと「奇遇だね。俺もだよ。」と便乗してきた。
そんな見え透いた嘘は僕程度であっても見破ることは容易にできた。
彼は便乗したのちに隣の席の彼女の席に座った。
「日向君の考えていることを当てようか?」
彼は急に雨宮さんのようなことを言い出した。
僕が沈黙を決めていると彼は自ずと話し出した。
「まぁ日向君の考えていることはさておき、代表リレーの選手変わろうか?」
さらに僕は沈黙を決め込んだ。
「日向君は勝負の分かれ目になるこのリレーに出るのを嫌がってるだろ?それを代わりに走りたい僕が走る。これこそまさにWIN-WINだとは思わない?」
僕からしたら願っても無い提案なのにも関わらず僕が首を縦に降ることはなかった。
その理由が彼の思い通りにはいきたくないのか、はたまた彼女や雨宮さん、八雲くんに対する罪悪感かはわからないけど、2つの思いが少なからずあることに間違いはない。
僕がその提案を拒否するといつもよりかは下手に出ていた彼の化けの皮が剥がれていった。
「日向くんには荷が重いって言ってるのわからないの?そもそも君は陽の目を浴びるキャラじゃないだろ。月にしたって雨宮さんにしたって空にしたって日向くんとは住む世界が違うんだよ。気を使われて仲良くなった位で図にのるなよ。」
こんな面倒なことになるならあっさり代表選手の枠なんて放り出してしまいたい。だけど簡単にはそんなことできるわけなかった。それは僕と彼女の名前から取ってくれたチーム名を、3人を裏切る行為となんら変わりないと思ったからだ。
「確かに僕は気を使われてる3人に仲良くしてもらってるのかもしれない。そして僕もその優しさに甘えてしまっているのかもしれない。でも、それでも僕は僕を思ってくれる人と仲良くしたいんだ。例え今、気を使われて仲良くしてもらってたとしても、いつかそれを本物にしたいんだ。」
「柄にもなく無駄に喋るね。無駄に。そっちが引かないならこっちは強硬手段にでるだけだよ。」
確かに柄にもないことをいったかもしれないけど、彼がそのあと言った言葉に僕の脳内は荒れ狂った。
ガラララ
彼が僕に徐々に距離を詰め始めたとき、閉め切っている教室のドアが開かれた。
「弱いものいじめして楽しわけ?それにどんだけ自分のこと過大評価してるのwキッモ。ださいんだよ。」
そこには悪魔ヅラのヒーローが現れた。




