根拠のない自信は最悪だけど根拠のある自信は最高だ。
「八雲くんどんなことしたらこんな怪我になっちゃうの?」
いかにも漫画にでてきそうなボンキュッポンを体現している保健の先生はそう言った。
「いやー簡単に言うと土下座してたら地面に頭を強く叩けつきすぎまして〜。」
「それって、、大丈夫なの?」
「どういうことですか?怪我の容態は怜ちゃんの見た通りだよ!」
「そういうことじゃなくて。。ていうか!学校では高梨先生って呼びなさいって言ってるでしょ!」
保健の先生は彼が土下座した経緯が人間関係によるものだと思ったのだろう。2人は側から見たら只ならぬ関係を匂わせながら和気藹々と話していた。そこにいる僕と雨宮さんは居ずらいったらありやしない。
「全く小さい頃から怪我ばっかして、高校生になって少しは大人になったと思ったけど大人になったのは図体だけだね。」
「そういう怜ちゃんだって学校ではお姉さんキャラを確立しようとしてるけど私生活はドジだってこと俺は知ってるんだぜ。」
「だから高梨先生って呼びなさいって言ってるでしょ!あとそれは誰にも言わないって約束でしょ!」
うん。さすが僕の憶測だ。全くもって的を射ていない。数秒前の自分に往復ビンタしたいくらいだ。何が只ならぬ関係だ、親戚や近所のお姉さんといった関係だろう。
「ほら!日向くんぼーっとしてないで応援席に帰るよ!」
「そうだぞ!ちんたらすんなよ!」
「あんたのせいでここにきたんでしょうが!お礼の1つでもしたらどうなの!」
雨宮さんは八雲くんの頭をバシッと叩いた。
「いちいち叩くなよ、暴力女!」
「暴力女ですいませんね!さっきみたいな巨乳の先生が好きなんでしょ!」
「あ?怜ちゃんはただの親戚だっつーの。冗談でも変な勘違いすんなよ!」
「はいはい。むっつりすけべなやつね。」
「なんだよ。いつも以上に突っかかってくんな。俺はあーいう感じより、お前みたいな方は好みだって前言わなかったか?」
「はいーー?初耳ですけどー。そんなこと言ったって動揺しませんよー。」
僕の後方を歩いていた2人だけど雨宮さんはそう言い捨てるなり、僕の方へ駆けてきた。
「日向くん早くむっつりすけべから逃げるよ!」
そうして僕らは自分のクラスの応援席まで走って帰った。
当たり前のことだけど僕らがそうこうしている間にもプログラムは進み、気づいたらクラス代表リレーも近づいていた。僕は自分の席で心音を高めながらそわそわしていると八雲くんが近づいてきた。
「さっきは救護付いてきてくれてサンキューな!代表リレー頑張ろうぜ!。」
クールに登場してきた彼はとてつもなくカッコよく見えたけどおでこに貼ってある絆創膏のせいで評価は一気にマイナスに振り切った。
「そのおでこの絆創膏とてつもなく存在感あるね。」
「だろ!?目立つし何気に気に入ってんだよ。ちょっと痛いけどな笑。」
第3の目が覚醒したような顔立ちを気にいるなんて美的センスをかなり伺った。
「頭も強打したんだろうし、気をつけなよ。」
「さすが日向は優しいな!どっかの暴力女は頭を容赦なく叩いてきたかんなぁ。」
「八雲くんは本当に雨宮さんのこと好きなの?」
僕がそういうと彼はひどく顔を赤らめた。
「ちょ、声でけーよ!誰かに聞かれたらどうすんだよ!」
「あ、ごめん。」
「好きじゃなかったらあんなこと言わねーよ。」
「そうなんだ。」
「そうなんだよ。まぁ全く脈なしだし、気長にいくことにするわ。」
「そんなことないと思うよ。」
「励ましのつもりだろうけど根拠のない自信ほど怖いものはないぜ。」
あくまで僕の見解だからあてにはならないんだろうけど根拠がないわけじゃない。
だって救護から応援席に帰るとき後ろから駆けてきた雨宮さんは頰を赤く染めながらきたんだから。僕はそれは脈なしなんて思わないし、思えない。




