空と雨の相性は
「あーーー、あと少しで勝てそうだったのに。」
八雲くんは煮え切らない表情で自陣に帰ってきた。
「いやいや、もう私達からしたら願っても無いくらい面白かった出来事だから喜びなよ!」
「なおさら喜べねーやつな。」
雨宮さんと八雲くんこの2人の会話は僕の中で見慣れた光景になり、かなり板についてきた。
「空!それより一緒に騎馬組んだ人たちにちゃんと謝ったの?」
「謝罪?はしてないけど?」
「早くしてきな!」
雨宮さんが八雲くんに進言するも謝れることはあれど自分が謝る必要はないんじゃないかと言わんばかりに俄然首を傾げ続けた。
「ほら。首傾げてないで行った行った。」
「いや、なんでだよ笑。」
「空が土台やってたとして上の騎手が力士で遠慮なしに暴れられたら崩れるでしょ?」
「そりゃあな。耐えられんわ。」
「空がやってるのは大袈裟にいえばそういうことじゃない?きっと下の男子は辛かったと思うよ。みんな空より遥かに体小さくて細いんだし。」
ここで大半の人は自分が間違っていたと思っても意地になって素直になることができなかったり、自分が思ってることが正しいと周りの声に聞き耳を立てず、意見を曲げないだろう。だけど八雲くんは「全然気遣ってなかったわ。100で俺が悪いじゃん。」と言って共に騎馬を組んでいた人の元へ駆けて行った。
「すごいよね。」
「空でしょ?私もすごいと思う。今の光景だけ見ると一部からはプライドがないとか流されやすいとか言われるだろうけど、空の本当にすごいところは何でもかんでも流されて認識を改めてるわけじゃなくて自分が間違ってないと思った時はこれでもかって言うくらい反対してくるんだよ。」
「それは本当にすごいね。でも八雲くんが誰かに対してこれでもかって言うくらい反対してるとこなんて見たことないし、想像もつかないよ。」
「私も高校になってからは1回も見たことないよ。中学の時はごくごくたまに?」
「そうなんだ。」
「もう少し言うなら私に断固反対を決め込んできたこともあったからね。」
それは僕の中でも意外なことだった。だって常に尻に敷かれている彼が雨宮さん相手に反対をすることなんて何より想像できないことだからだ。僕はその詳細について無性に気になった。
「え、どういった流れでそうなったの?」
「お。日向くんにしては珍しく食らいついてきたじゃん。」
「そうかな。うん。そうだね。」
「ま、でもこの話は終了!また当の本人がいないときにでもね!」
雨宮さんがそう言うと同時に当事者である八雲くんがこちらにやってきた。
「ちゃんと謝ってきたの?って空!なんでおでこから血でてるわけ?」
「いや、これには深いわけがだなぁ。」
「理由はなんでもいいから救護のとこ行くよ!」
僕と雨宮さん、八雲くんは救護のとこに向かったわけなんだけど、救護の先生に出血の訳を話しているのを聞いているとその理由があまりにも酷すぎて後々八雲くんの伝説に残ること間違いなしと僕は確信した。