女心は秋の空。
とりあえず、家に上がった彼女は僕の用意した座布団に座る。
もちろん、こんな短期間で機嫌が直るわけもなく、先ほどと変わらない目つきでこちらを睨んでいる。
読心力がかけている僕が怒ってる理由など皆目見当もつかず、回りくどく聞いても、より一層機嫌が悪くなると踏んだ僕はストレートに聞く。
「君は何をそんなに怒ってるの?」
もうこれ以上、鋭くなることはないと思ってた目がさらに鋭くなる。何を言っても機嫌が悪くなるもんなんだと開き直り、僕はさらに口を開く。
「僕は君をバカにしてるとかでなくて、率直になんで怒ってるのかわからないから、聞いてるわけであって僕が何か悪いことしたり、勘に触るようなことしたなら謝るから黙ってるのやめてくれない?」
そう言うと、彼女は「ノート。」と低音量でぼやく。
「ノートは下駄箱に入れておいたよ。」
彼女は痺れを切らすように机を叩いて立ち上がり、さっきとは真逆のボリュームで話し出す。
「内容のことを言ってるの!なんで一文な訳?僕がノートを読んだとわかった時、なんで満足気な顔してたの?ってバカにしてるでしょ?私は今日このノート楽しみにして帰ったんだよ?」
彼女は言いたいことを言い終えるなり、再び座布団に座った。
「一文しか書かなかったことは謝るよ。でも、これでも僕なりに結構考えたつもりなんだけど。」
そう言うと背景に落雷が映りそうな表情から一転、笑顔になった思いきや、お得意の高笑いを繰り出してきた。
「だからってあの質問はないよね?悪意がないってわかったら急に面白くなっちゃたよ〜」
急に笑い出した彼女に僕は答える。
「君は覚えてるかはわからないけれど、僕と君が初めて話をした日に君はずっと僕と話してみたかったと言ったよね?あの時、僕はなんで?って聞き返したけれど、それは建前上でその理由の回答なんて微塵も興味なかった。それでも今回ノートに書いたその質問は僕自身がなんでかわからないけれど、聞いてみたいと思ったことだから。うまくは言えないけれど初めて話した時より大きな意味を持ったものだから勘弁して。」
「それは太陽くんが私に興味を示したということ?なのか?」
彼女は探偵のように手を顎に当て首を傾げながら自問自答をしだした。その姿はまるで名探偵には程遠い迷探偵のようだった。
「そういうこと?」
今度は自問自答ではなく僕に対してそう問いかけてきた。
「あくまで僕は君の表情が意外だったから聞いてみただけ。というか君、僕がその場しのぎで適当なこと言ってるとか思わないの?」
彼女はマヌケ顔でキョトンとする。
「だって太陽くん嘘を隠し通せるほど器用じゃないし、私に嘘つかないでしょ?」
確かに嘘を隠し通せるほど器用ではないけれど、その一方的なまでの信頼とまっすぐな目は僕にはまぶしすぎると思った。
「どうだろうね。」
僕は返答に困ったのでその場しのぎでそう答えた。
「そろそろお暇しないと家の人帰ってきちゃうかな?」
その場しのぎで嘘をつくのは簡単だったけれどさっきの会話の手前、飄々と嘘をつけれるほど僕は腐ってない。何も答えないでいる僕をみて、彼女は察したのだろうか、「ごめん。」と謝罪をしてきた。
謝罪を終え、妙な間が空いていると彼女は閃いたように立ち上がった。
「よし!太陽くん!今日はカレーにしよう!現役JKの手料理ってものを見せてやんよ!」
「気合い入ってるとこ申し訳ないけれど、今日はもう鮭を購入済みだよ。」
「それは明日!ほら、材料買いに行くよ!」
彼女は勢いよく玄関を開け飛び出しって言ったので鍵を閉めると「問答無用で華のJKを追い出すなんて男として最低!!」と叫びだしたので、またもや近所に変な誤解をされると思い、仕方なく買い出しに行くことにした。




