表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

部屋の中の密談

 パタリと扉からコウイチとオンテナが出ていく。ふぅ…と溜め息が知らず溢れる、初めての成人した迷い人が来たと知らせが来て身構えてはいたが予想以上だった。


 「サラシナ様これでよかったのでしょうか?」


 ジラルフォが相変わらず真面目な口調で訪ねてくる。まったくこの男は…


 「ジラルフォ、もう言葉を崩してもよいぞ。間諜対策はしておる、お前の本音も聞きたいし相談したいこともあるのでな」


 「わかった、しかし驚いたな。あの魔力は間違いなく私よりあるし持ち物は明らかに進んだ文明を感じた、できるだけこちらの利としていきたい所だ」


 「うむ、私もそう思う… だがこれはギュスタンに報告せねばなるまいな」


 くくっと笑いが込み上げてくる。この話を聞けば間違いなく我らが領主、ギュスタンは何かと理由をつけて会いたがるだろう。私と意気投合するくらい新しいもの好きで研究バカ、戦争の後始末に鬱屈しておったしな。


 「領主様か、何か面倒な事をいいそうな気がするな。何か対策は考えてあるのか?」


 「ふむ…迷い人は口外禁止だという事と必要以上の接触は禁止してあると言うこと伝えれば止められると思うか?知っている人間は少ないほうがいい」


 「無理だな、その程度で抑えるようなやつじゃないぞ?領主となる前にお前とリーデッタの三人で結託して散々悪事を働いていたことは忘れていないからな」


 ジラルフォはムスッと渋面をさらす。相変わらず眉間に皺をよせて難儀なやつだ。


 「ふふ、じゃあ未来の婚約者にまた盾となってもらおうかのう、なぁジラルフォ?」


 ニヤニヤとジラルフォに(うそぶ)く、ジラルフォはその瞬間、驚き慌てたようにこちらに詰め寄った。


 「なぁ!!?なんでそんな事を知っている!!」


 「この間リーデッタを誘ってお茶会をしておったときにな楽しそうに話しておったぞ。なんでも長老達それぞれに頭を下げて認めて欲しいと言っておったな。しかも魔力が釣り合わないのがわかると命がけの術法で無理やり上げて上級貴族にまでなりおってからに」


 近くに来たジラルフォの額にピンっとデコピンしてあげる。


 「お…おのれリーデッタめ!」


 額に手を当てて頭を抱えている姿に嬉しい気持ちが湧き上がる。恥ずかしい気持ちもあるがこの空間は中々に楽しいものだ。


 「そこまでしてくれるのは嬉しいが危険な事はこれっきりにしてくれ。ただでさえ騎士として務めているのだ、余計な事で命の危機に晒すものでもあるまいて」


 「くぅ………そ、そうだオセールに向かわせる者はどうする?なるべく知っているものが良いのなら、今回の同行したものから選ぶのだろう?」


 話を逸らすことにしたらしい、恥ずかしがっている姿をもう少し見ていたいがこれも早めに決めるべきだ。ちょっとだけ真面目に考えるか。


 「そうさな、お主は流石にここから離れるのは無理だから護衛はリーデッタ、ヴィオラ、レンツィオから選ぶ形になるな。推薦はあるか?」


 「そうだな、ヴィオラは会話に難があるしリーデッタは問題を起こしそうだから却下だ。レンツィオでいいんじゃないか?」


 リーデッタは復讐の意味もあるのだろう、よく警護に飽きたとかオセールにまた遊びに行きたいと愚痴ってたのを聞いていたからか。レンツィオならまぁ問題はなかろう。


 「レンツィオなら無難か、もう一人に文官はつけたいな。ある程度オセールに慣れている者が良い…こちらはオンテナが良いか」


 「母上か?サラシナ、君は大丈夫か?」


 「正直に言うと難しいが仕方あるまい?私とすり合わせができ尚且つ融通のきかせることができるのは彼女しかおらなんだ」


 コウイチをオセールの街へ送った後、何かをするにしても一度こちらに確認してもらわないと困る。私が後見をしなくてならないのだ、異世界の知識で変な物を広げてもらっては不味い。


 「そうするか…しかし驚いたな、あそこまでキツイ言い方をしなくても良かっただろう。迷い人は基本的に我々が手を貸すべきだと伝えられていただろう。あの迷い人を試したのか?」


 「当然だ、以前までの迷い人とは違い今回は帰すとなるとかなりの大事業になる。生半可(なまはんか)な考えなら諦めろと言ったであろうな」


 「そこまでか、だが金の問題は厄介だな。なんとかなりそうなのか?」


 その言葉を聞いた瞬間に眼の前が暗くなるのを感じる。そうだった、初めて彼の持ち物を見た時のトキメキと期待は見事に裏切られてしまった。正直このままだと数十年どころではなく数百年かかっても帰せない可能性がある。


 「正直に言って無理だ、現状ジリジリと支出ばかり増えている。このままではいつまでたっても帰せるどころか森人全員でお金を稼ぐ羽目になる。早急に対策が必要だ」


 ジラルフォもどんよりとした顔つきになり思案顔をする。


 「こうなるとコウイチ殿に期待するしかないか、了解した。とりあえずあいつらに口止めとレンツィオにはオセールに行って護衛して貰うことを打診しておこう」


 「うむ、頼んだぞ婚約者殿」

 

 笑顔で肩を叩いてやったが煩わしそうに払い、顔を赤くしながら敬礼して足早に出ていく。しばらくこのネタでいじめてやろうなんて思いながら私も仕事をしに部屋を出て行く、まずは領主に報告せねばな…



******

キャラクター紹介 森人の王女サラシナ

身長:160前半 体重:軽い 年齢:森人としては若い 身分:上級貴族&王女

年若くして王女の座についた好奇心旺盛でおてんばな女の子?です。森人の王は男でも女でも魔力が一番高い者が付くことになっておりサラシナの年齢で一番魔力が高くなるのは異例だといいます。非常に優秀で一時には領主候補とされましたが辞退し友人のギュスタンに明け渡しました。現在はティアーテの森にて森人達をまとめており長老達とよく喧嘩もしていたりします。


次回は11/16に予定しております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ