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現状把握中 -もしかして・・・ 帰れない?-

 手を繋いでくれる森人さんの説明によるとどうやら昔は結構な頻度で自分のような者がこの森に飛ばされて来たらしい。だが最近は段々と減っていて40年程は来なくなってきたのと、初めて成人した者がいたので最初は迷い人だと気づかなかったそうだ。原因は森人が崇拝している風の神様が気に入った人にいたずらで飛ばしてるらしい。はた迷惑な…神隠しのようなものだろうか? なので信仰をしている神様の被害者ということで希望者には帰るのを手伝ってくれるらしい。

 ちなみに名前を教えてもらったのだが手を繋いでくれる人がリーデッタ、前を歩いているのがジラルフォで後ろの男女がレンツィオとヴィオラらしい。

 種族について質問すると、人族、森族、土族、翼人族、亜族と大まかに分けて5つの種族が暮らしている。その内亜族だけは交流を持たず北の地でまとまって暮らしているそうだ。他にも先程のコールと言っていた事に関して聞こうとしたら魔法についてはまだ教えることができないらしい。


 質問をぶつけていると、森が開けて広い空間が広がる。ざっと見回すと家々が見え奥には神殿みたいな立派な建物が大きな木を囲って建っている。当然なにか作業をしている人や歩いている人は全て森人みたいだ。どうも全員美形というわけではなく普通の人もいるが全体的にレベルが高い。髪の色も金色を基調として濃淡があるようだ。


 「これから会うのはグランスターグ領の森を統べる上級貴族、サラシナ様だ。なるべく粗相をしないよう頼む」


 前を歩いていたジラルフォがこちらを振り向き真剣な顔つきで説明していく。もし飲み物や食べ物が振る舞われたらサラシナ様が先に口をつけてから食べること。喋るときは許可を得てから喋ること。目下の者から挨拶するのだから最初に私から名乗ること、名乗り方等貴族間のちょっとしたルールを説明される。どうやらかなり偉い人と会わなければいけないらしい、大丈夫だろうか…と不安に感じてくると。


 「そこまで言わなくてもサラシナ様なら気にしないわよ」


 とリーデッタがフォローしてくれる。ジラルフォが「だがな…」と口を開いたが後ろからレンツィオが


 「まぁまぁ、サラシナ様が待っているのだから早く連れて行くのが我らの勤めだ。待たせて不機嫌になるのが怖いぞ」


 レンツィオの隣りにいるヴィオラがコクコクと頷いている。「うっ、たしかにその通りだな。急ごう」とジラルフォが足早に奥の神殿みたいな場所へ向かっていき一同が続いていく。



******

 

 「ジラルフォです。お連れしました」


 先頭のジラルフォがノックをしてから扉を開く。


 私が部屋に入るとまず目に入ったのは椅子に座った森人と後ろに数人の森人達が静かにこちらを見ている。部屋には赤を基調とした絨毯に贅沢な調度品が飾られ少し大きなテーブルと椅子あり非常に整った空間だ。全員が入るのを見届けてから


 「よくいらっしゃいました。どうぞお座りになって」


 椅子に座った森人が手で椅子に案内してくれる。座ってよいのだろうか?ちらりと横のジラルフォに目をやると頷いてくれる。


 「失礼します」


 後ろに控えていた森人が椅子を引き座らせてくれる、なんか偉くなった気分だ。ジラルフォはそれを見てから前に居る森人の斜め後ろに控えた後、こちらを強く見つめてくる。…は!そうだ挨拶だ。


 「初めてお目にかかります。私は松木 幸一と申すものです。ここより遠い場所から知らずこの森に迷い込んでしまいました」


 「あら、お上手ね」


 目の前の森人が上品にクスクスと笑う、どうやら合格のようだ。私が挨拶をしている間に側仕えの人たちが動いて私とテーブルに座る森人の前にお茶を置いていく… ちらりと観察してみると薄い飴色がゆらゆらと揺れており暖かな湯気を登らせている。森人は先に口をつけその後にどうぞ手で合図を送る。一口… ちょっと苦い、ミルクだろうか?ほんのりとした甘さが口の中に残る。私が口をつけたのを確認して森人が自己紹介を始めた。


 「私はグランスターグ領の森を統べる上級貴族サラシナ=ティアーテといいます。貴方にあえて嬉しいわ、色々と彼等から聞いたと思うけど私からもきちんとお伝えしますね」

 

 その後はリーデッタから聞いたことを同じ様な事を話してもらえる。神様が原因でよく飛ばされてくる人が居ること、飛ばされてきたものが皆子供であること。大体1~3ヶ月で皆帰れること。


 「ここまではわかってくれたかしら?」


 私は「はい」と頷くのを確認するとサラシナが右手を上げ。


 「側仕えはオンテナ、近衛はジラルフォです。コウイチさんの持ち物を持っている方はここへ」


 その言葉にサラシナの隣に居る森人意外がざわりと驚く。


 「!…サラシナ様それは…」


 「ジラルフォ、良いのです。貴族の婉曲な物言いでは伝わるものも伝わりません。それにあまり広めたくない話題も取り扱いますのでよしなにお願いします。」


 「…畏まりました、ではリーデッタ持ち物をここに」


 そういうとリーデッタがサラシナの前に私の持ち物を置いていく----手帳、スマートフォン、小箱、財布と中身の硬貨と札を丁寧に置いていく。


 「以上です」


 「リーデッタ、ありがとう存じます」


 そう言うと私、サラシナ、ジラルフォとサラシナの隣りにいたオンテナと呼ばれた女性以外が扉から出ていく。


---全員が出ていくのを確認すると目の前のサラシナがべちゃっとテーブルに突っ伏した。私が目を白黒しているとジラルフォがこめかみに手を当てながら口を開く。



 「サラシナ様そのようなお姿は上級貴族にふさわしくありません。コウイチ様がいらっしゃるのです。威厳のあるお姿をお見せください」



 サラシナが体をバッと起こして口を膨らませて首を振る。



 「イヤです、もう(わたくし)疲れました。長老達もギーレン派も私達へのいやがらせが酷く全く休める暇がありません。それにコウイチ様には面倒な物言いでは通らないと絶対に確信しております。なぜなら私も何を言っていたのかわからなくなりますもの」



 ホホホと笑うサラシナを目にジラルフォが隣のオンテナに目を向ける。



 「オンテナ、サラシナ様の筆頭側仕えがこれを許してどうするのだ」


 「サラシナ様はお疲れです、少しは労ってあげたらどうですか?ジラルフォ、この場を整えるのにも長老達から散々嫌味を言われてサラシナ様がいつ爆発するか、私とてヒヤヒヤしておりましたもの」


 「ジラルフォ、母上にその様な事を言うものではありませんよ」



 どうやらオンテナはジラルフォの母親らしい見た目は凄い若いのに… そしてこの空気にはどうにも仲間はずれにされているかのような疎外感を感じてしまう…寂しくない、ぼっちなのは慣れてるし。


 パンパンとオンテナが手を叩く。

 


 「はい、おふざけはここまでにして。サラシナ様、続きをお願いします」



 コホンとサラシナ私の方をむき話し始める。



 「まず残念なお知らせがあります」


 「…なんでしょうか」



 いきなりな前置きに嫌な予感がじわりと背中を伝う…



 「今まで迷い人は子供で、魔力もそれほど高くはありませんでした。魔力とは基本年齢と共に大きなるものでその後は成長が止まるからです」



 コトリとサラシナの腰のポーチから黒い球体が私の目の前に置かれる。



 「コウイチ様こちらに手を触れていただいてもよろしいですか?気分が悪くなるようでしたら直ぐに離すようお願いします」



 私はコクリと頷いて球体に手を触れる。----すると体の中の熱が掃除機で吸い出されていくように球体に吸い込まれていく感じがして徐々に黒い部分がなくなっていき透明になる。私は驚きながら眺めていると



 「お気分はどうですか?気持ち悪くなっておりませんか?」

 


 サラシナが問いかけてくると同時にサラシナの後ろに控えていた二人が驚愕の視線をこちらに向けてくるではないか。



 「…少しだるく疲れたような気がします」



 少ししてから体がだるい、1km位走ったかのような疲労が体を襲っている。



 「少し…ですか?これは予想以上ですね…」


 「サラシナ様これは…」



 ジラルフォが驚いた顔をしながらサラシナに問い詰めている。サラシナが目を瞑り暫くしてから思案顔で目を開けて答える。



 「はい、これがこれが残念な理由です」


 「理由…ですか?」



 私が疑問の声を投げかける



 「これは貴族の義務の一つである魔力を奉納する魔玉です。これ一つを貯めるの下級貴族は5日位かけます」



 とサラシナがもう一つ黒い魔玉を取り出した後、見せるように手を触れる。



 「私もこれを一つ奉納するとちょっと疲れます」



 みるみるうちに透明になっていく魔玉…ジラルフォトとオンテナが難しい顔でそれを眺めている。



 「私は上級貴族で森人の中で最も魔力を持っています。それが意味するところはわかりますか?」


 「…もしかして私の中に大量の魔力があると言うことでしょうか」


 「そうです…そして魔力が高ければ高いほど元の世界に帰るのが難しくなります」



 二つの透明になった魔玉を並べてサラシナがため息を吐く。



 「そして間が悪いことにこの国は戦後復興の最中で、帰すために必要な魔力もお金も時間も余裕がありません。要は我々の力だけでは帰すことができないということです」

 


 !! これは帰れないという事なのか…眼の前が暗くなる。リーデッタから帰れると聞いたときからちょっとした異世界観光だな、なんてお気楽な考えを心の中でしていた事にも気づいてしまった。私の運の悪さもここまで極まるのか…



 「もちろん帰す為の努力は望むのであれば致します。ただそれには何もしなければ数十年と言った歳月がかかる可能性が高いのです。それでも以前の方々と同じように我々は貴方に帰るか留まるかと聞きます。いかがしますか?」


 「…………それはもちろん帰りたいです。あちらの世界のお世話になった方たちへ恩返しが終わっていません」


 「コウイチ様は魔力が高く成人しているため我々の魔力、お金、時間を本当に沢山かけなければなりません。帰ること、それは時間がかかってもよろしいのですか?私達森人にとって数十年という歳月はさして気にはならない時間です。ですが人族ではほぼ一生と言っても差し支えない年月となるでしょう。それらを理解し、良いと仰るのでしたら我々は手を貸すことをいといません」


 冷静な顔をしてサラシナが訥々と語りかける… 非常に迷惑がかかる… わかってる答えなんか一つしか無い。色々良くしもらった人たちを心配させて更には恩を返さないなんて私が許せない。それに運が無いのも間が悪いのもいつものことだ。ここまで強烈で最悪な不運は初めてだが『お姉さん』に会ってから今までも色々あったがこうして生きている。落ち着け、冷静に思考を切り替えるべきだ。世の中はギブアンドテイク、貰うだけじゃ駄目だ。


 「……時間がかかり厳しい状態なのはわかりました。ですが私は諦めません。魔力が多いならいくらでも差し上げます。それに何もしなければ…とおっしゃりましたよね?何か手があるのでしょうか?」


 じっとサラシナを見つめる。----フッとサラシナの顔が緩まると同時ににっこりと笑いかけてくれる。


 「そうです。ただそれにはコウイチ様、貴方の協力が必要になるのですよ」


 とにこやかな顔で私の顔を眺めていた。

キャラクター紹介 真面目な騎士ジラルフォ


身長:180後半 体重:80前後 身分:上級貴族 苦労人枠の騎士ジラルフォです。真面目で一途、戦闘技術も高く周りからの信頼も厚い森人です。ティアーテの森に勤めている騎士達のまとめ役をしおり采配を振るってます。ちなみにサラシナに惚れており裏でばれないようにこっそりと努力している生真面目なお方です。


次回の公開予定は11/7を予定しています。

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