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遭難と邂逅

11/2 持ち物の表記を忘れていたため補完しました。

 目に入る現実と頭の中の常識がぶつかり合い全く認識が追いつかない…要はパニックに陥っている。


 (駄目だ、落ち着け。怪我をしたわけじゃない、こういうときは現状把握は後でいい安全確認からだ)

 

 伊達に不運に慣れているわけじゃないんだ、と全く誇れる事ではないことを考えながら周りを見回す。森だと言うのに生物の気配が感じられない、静かで何処か神聖な場所のような感じがする。空気は深い緑の匂い、空からは陽光が少しだけ入り込んで明るい。先程までは夜の帳がおりて真っ暗だったのに… 森の中でこれといって気配もなく害のある生物がいない、安全そうだと考えて静かに体の奥のスイッチをオンにする。


………………


 居る、今まで見たことがないほど人の形に近いシルエットがふよふよ一匹飛んでいるのが見える。これは物語にでるような妖精に非常に似ている。先程の木人君が頭をよぎって逡巡したが背に腹は代えられない。


 「ちょっといいかな?」


 そう言うと羽の生えた妖精の様な者がこちらを見て首をかしげ近づいてくる。ちょっと可愛い、背中の羽は動いているがどう考えても自重を支えられる速度ではない。しかもよくみると何も着ていないではないか…


 「ごめん、道に迷ってしまったんだ。何処か人のいる場所を教えてくれないかな?」


 頭を撫でるとちょっとだけ驚いたような顔をし、嬉しそうに手を引っ張る。案内してくれるようだ、これが地獄への案内だったらもう泣くしか無い。手を引かれながら反対の手でポケットからスマートフォンを出しアプリを起動させる。電波は届いていない、Go○glemapが起動して現在地が確認できないと出る。


いよいよヤバイ…ちょっと涙がでそう。


******


 それほど歩くこともなくガサリと音がした瞬間に人が木から飛び降りてくる。結構高い場所からだったが見事な着地と同時にこちらに弓を構える。


 「止まれ!人族がこの場に何をしに来た!!」


 怒号とその瞬間周囲から数人が同じように弓を構えて飛び出してくる。私はゆっくりと両手を上げて事情を説明する。

 

 「…道に迷い難儀しておりました」


 「嘘をつけ!ここは聖域で人には入ることができない場所になっている。誰に手引きされた!?」


 かなりの警戒である。だが正直に言うしか無い。


 「嘘ではありません、私は一人でここまで歩いてきました」


 鋭い視線を維持しながら目の前の男性が首を少し動かして合図を送る。


 (!!?)


 驚愕の感情を上手く表に出さず誤魔化せたのは我ながら褒めてあげたい。首が動いた瞬間見えたのだ、人にはない長い耳が。動揺している間に隣には女性らしきエルフ?が身体検査のように色々と私物を取り出していく、妖精さんは不思議そうに周りをふよふよと飛んでこちらを見ているようだ。


 「…もしかして見えているのか?」


 視線がしらず追っていたのだろう。(いぶか)しげに目の前のエルフっぽい男性が問いかけてくる。


 「私の周りを飛んでいる者のことを指しているのでしたら、見えています」


 その言葉と共に周りから緊張がとかれ武器が降ろされる。


 「そうか、失礼をした。成人した者がここに来たのは初めてだったのでな。済まないがこちらへ来てもらおう、何もわからないだろうからな」


 そう言うと腰のポーチから黒い塊を取り出し(コール)と唱える。


 「迷い人確保しました、ただ明らかに成人しています」


 コンとタクトみたいな物で黒い塊を叩いた瞬間消えた。正直驚きすぎてもう反応ができない。消えた後すぐにまた黒い塊が男性の前に現れる。


 「了解しました。時間が空いていますので私のもとへ連れてきてください」


 と黒い塊から若い女性の声が聞こえてくる。男性はそれを元のポーチへ戻してくるりと踵を返し歩いていく。


 「ごめんね、こちらの物は後で返すからついてきて頂戴。あと手を離さないでね、結界を張っていて離すとはぐれてしまうから」


 と女性のエルフ?が手を引いてくれる。後ろから残りの二人が続いており、まだ完全に警戒をといていないようだ。ちらりと不躾にならないように観察してみたが非常に整った顔立ちに腰まで届く長い金髪を軽く纏めて歩くたびに揺れている。腰には先程のタクトが下げられ、上下ともに軽装の革鎧を(まと)って使い込まれたかのように細かい傷が見える。気づくと妖精さんはどこかへ消えていた。


 「質問をしても大丈夫ですか?」


 「全部は答えることができないと思うけど大丈夫よ」


 手を繋いでくれる女性のエルフが答えてくれたので色々と溜まっていた疑問をぶつけていく。


 「ここは何処でしょうか?日本どころか地球ではないような気がするのですが」


 「ここはティアーテの森、中央領より北東に進んだグランスターグ領よ、多分あなたの言っている「地球」?とはまた別な場所だと思うわ」


 「先程私のことを人族と言いましたがあなた方は何族なのでしょうか?」


 「私達は森人、あるいは森族と呼ばれているわね、主に森と共に生きているからよくそういわれる。所であなた、随分落ち着いているのね、以前来た子は泣いたりして手がつけられなかったのに」


 緑色の瞳を光らせ好奇心を隠そうともせずににっこり笑ってくる。ビックリするくらい美人だが生憎(あいに)く心臓が先程から早鐘のようになり気分が悪い。冷や汗が少しでている、まだ衝撃が残っているようだ。


 「そんな事はないです、内心とても焦っています。…以前来たということは私みたいな人がたまにこちらに来るのでしょうか?」


 「前回来たのは40年位前かしら、人族で6歳だったかな?2,3ヶ月で帰っていったわよ」


 『帰った』という言葉を聞いた瞬間、一気に弛緩していく…よかった帰ることができるんだ。そして余裕ができたのだろう、開く口と出てくる言葉が一致していないのに気づく。これはいったい…と思ったがだがまず現状把握が終わっていない、と美人さんに質問攻めにしていった。





登場人物紹介----名前は出ませんでしたが


ジラルフォ(最初に降りてきた森人)

リーデッタ(身体検査して手をつないでる人)

レンツィオ&ヴィオラ(後方警戒してる人)


全員お貴族様&騎士様で優秀な方たちです。


次回の公開は11/03予定です。

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