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活路を見出す

 そんなこんなで身体を引き釣りながら帰った後、水場で沐浴をして汗と埃を落とした後に下働きの森人が持ってきてくれた食事を取った。入浴に関して上級貴族の住まう場所ではあるのだが、森人では基本的に川か水場で(たらい)を使用しての沐浴がメインとなるようだ。今度行くオセールには大衆浴場があるらしいので楽しみでもある。気づいたがどうもこちらの石鹸は黄土色で少し臭い、そして当然ながらシャンプーはないようだ。これくらいなら私でも作れるから商品としても良いかもしれない。


 そして問題の夕食、厳しい特訓に耐え昼食が無いこの世界では待ちに待った食事であるが… 量が少ない!そして非常に質素だ!!とてもこれだけでは足りないと叫びたい。川魚が一匹に大豆の様な物が入った酸味のある豆スープ。木の枝でも齧るかのような硬さのパンに葉物のお浸し、以上である。食後に苦いお茶を持ってきてくれた下働きの森人に、頭を下げて何か食べるものを頼み込むと保存食の木の実を持ってきてくれた。本当に感謝である。

 続いてお茶についてその森人に尋ねると苦いお茶にも二種類あるらしく(リブンセ)と呼ばれるものと(リギル)と呼ばれる物がありどちらも苦く乳を入れて飲む事もあるようだ。一応甘みが感じられる(ビッティー)と呼ばれるお茶もあるが非常に高価で取れる時期も限定されるため中々手に入らないようである。

 森人に感謝を伝えて出ていった後、椅子に座りリブンセと呼ばれるお茶を啜る…


 (自分の居た世界には柿茶とよばれる甘いお茶があったな… 作り方も覚えているし、似たようなものを探してみるのもいいかもしれないな)


 少し金策に活路を見出してきた、後でサラシナに相談してみよう。ぼんやりと光るランプを眺めながら身体を引きずるようにベットに潜り込む。午前も午後も頭と身体を酷使しずぎた、ある程度お腹を満たしてしまえば眠気にはあがらえる事は難しい。今日は嫌な夢は見ずに眠ることができそうだ…


******


 異世界三日目、筋肉痛の大合唱で暫くもんどり打っていたが我慢する。その後に食事を取りしばらくした後スタンがやってきて勉強二日目に突入である。本日は貨幣や職業についてで、貨幣には銅貨・大銅貨・銀貨・大銀貨・金貨・大金貨と分かれいる。平民の月収が大体大銀貨2~3枚程度で一月暮らすらしい。そう考えると大銀貨が10万程度なのだろうか…

 職業は多種多様で様々あり元の世界にあるような一次産業(農業、林業、漁業)から二次産業(鉱業・建設業・製造業)、サービス業を中心とした三次産業もあるようだ。面白そうなのは元の世界にはない魔具の開発業があり日々研究されているようで、他にも魔獣が存在していて退治するために騎士団が設立していたり魔術関連の研究をするアカデミーがある。

 そして驚いたことにこの世界には特許と呼ばれる概念も存在しており魔術によって管理しているようだ。違反した場合、領地内にいればどこで誰が違反したかすぐにわかり捜査官が派遣されて対応されるようである。結構自分たちがいた世界と同じくらいの生活水準かもしれない…


 スタンが持ってきた石板に白いチョークの様な物を挟んだ木筆で教えられた文字を書いていく。一般常識がある程度終わり、教えるのに目処が立ったので今度は文字の練習である。


 「字はやはり書き慣れているのだな、線が綺麗だ」


 今は数字の書き取りである。この世界は四則演算がありゼロの概念もあるので非常に理解しやすく助かっている。ただ微分積分学や二次関数といった数学までは無いようだ。


 「数字はわかりやすいのでいいですね、文字は覚えるまでが大変そうです」


 文法に関してはどうも日本語ではなく英語のような文法で名詞さえ覚えればなんとかなりそうである。


 「算術はできるのか?こちらでは成人しているものは殆どできるが」


 「それくらいであれば問題ないですね」


 「ふむ…ではこの問題はどうだ?」


 とサラサラとスタンが石板に何問か書いていく。足し算や引き算程度の小学生位の難易度なので数字さえ覚えれば全く問題ないようなので次々と解いていく。


 「早いな、これなら大丈夫か」


 スタンが満足そうに答え合わせをしていく。ちらりと外を見ると日も登りお昼のティータイムに近づいている。お腹がすいた…

 

 「そういえばどこも昼食を取らないのですか?私の世界では三食取るのが基本でしたので」


 「ん?あぁそうか森人は朝と夜しか食事は取らないからな、オセールの街に行けばわかるが他の種族は基本三食の所が多い」


 「本当ですか!?」


 本当なら早くオセールの街に行きたい、それはもう切実に。どうしても日本食が食べたいという思いも強くなっている… そういえば海外の水によく当たるという話を聞くがこちらの世界では問題が無い。不思議なものだ…


 「あぁ、所でコウイチは料理はできるのか?」


 「料理なら結構できますよ」


 探偵だからなんでもできる。嘘です、仕事が無くて居酒屋でアルバイトをして覚えました。まかないは自分で好きなものを作っていいと言われたから仕方ないね。


 「良し、それは是非とも食べたい。…ふむ、試食会としようか」


 キラリと目が光ったような気がするほど興奮と期待が感じ取れる眼差しが私を貫く… あまり期待されても困る。どんな物がこの世界にあるかわからないのだ。


 「でもどんな食材や調味料があるかわからないから作れないかもしれないですよ」


 「それはまず見てからだな、ちょっと掛け合ってくる」


 スタンが非常にやる気に満ちた声で飛び出していく。勉強はどうすれば良いのだろうか… 仕方ないので教えられた数字や文字を石板に書き続けるとこ数分、扉を勢いよく開けてスタンが帰ってきた。


 「許可を取った、今から調理場へ向かうぞ!」


 「待ってください、まだ勉強の時間ではないのですか?」


 これから自分の生活がかかっているのである、生活の基礎となる部分はあまり蔑ろにしてはいけないだろう。


 「勉強なんてやらなくてもなんとかなる。それより夕飯に間に合わせなくては俺が困る!これでも忙しいんだ」


 石板を取り上げられベットに放り投げられる。あぁ私の勉強道具が… とその時、以前見た黒い塊がスタンの前に現れる。


 「こちらの根回しは終わった。面白そうだからモチロン私も参加するからな!忘れるんじゃないぞ」


 喜色満面なサラシナの声が聞こえてくる、止めてくれないのか…


 「了解した、今から調理場へ行って確認してもらう」


 コンとタクトで黒い塊を叩くと直ぐ様消える。「ほら行くぞ」と腕を掴まれ引きづられるように部屋を出ていった。

次回は11/28に投稿予定です。

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