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不吉な出会い

 昔々、あるところに青髭という男がおりました。


 森に立派なお屋敷を構えており、財産は1兆いや、もしかしたら無限に湧いて出てくるのかも...などと村の者たちから噂をされるほどの大金持ちでした。


 ――それなら、お金目的で近寄ってくるものも多いだろうと思いきや。いえいえ、村の者も、他の伯爵家の方々も、そんなに馬鹿ではありません。


 青髭は、立派なお屋敷を持っているだけあり、格好は紳士っぽく、気品のある服装をしていました。


 しかし、口に青黒い無精髭を沢山生やしていて、ぎょろりとした死んだ魚のような目を持ち、薄紫色の――まるで真冬に海にでも入ったかのような唇をしていたため、村の人も伯爵家の方々もみんなこぞって、付き合いを避けたのでした。


 いくらお金を持っているからと言って、自分の大事な娘たちをそんな不気味な男にやりたがる親はそうそういません。


 親本人も関わりたくないと言う場合が殆どでした。


 それでも、お金目的で彼と娘を結婚させた親も何人かはいました。ですが、彼と結婚した女の人たちは、みんな行方不明となったのです。


 不気味な上に人付き合いをせず、森の城に引きこもっていて、しかも結婚した女性はみんな行方が分からなくなっていく...。


 そんな青髭は、いつからか村の人たちから青髭を生やした死神ブルービアード・リーパーと呼ばれるようになりました。


 同じ森に父親と2人の兄と2人の姉がいる1人の女の子がおりました。


 元々伯爵家だったこの家は、父親が事業に失敗したことから、仕方なく領地と城を手放し森の中で、ひっそりと暮らしておりました。


 父親はもう髪には大分白髪が混じっていて、顔にも人生の荒波をくぐって来たことがわかるような深いシワがあちこちに刻まれています。


 だいぶ年を取っていて、父親はもうまともに起き上がれなくなって来ていました。


 しかし、息子は狩人の名人である長男に、行方を眩ませてはいましたが頭がよく、その持ち前の頭脳を生かしてどこかで伯爵として生きているらしい次男です。


 息子たちはきちんと自立していたので、将来の心配もなく、立派に育ってくれたことを父親は素直に喜びました。

 食事は長男が森で鹿などを取って来てくれるので、その辺も何不自由なく暮らせていました。


 ですが、困ったのはこの3人の娘たち。

 彼女たちは皆、割と気が強く何を言っても、聞かないことがほとんどでした。


 3人とも母親に似て、美しかったのですが、特に長女と次女はプライドが高く、なかなか貰い手が決まりません。


 父親は、


「自分はいつ死ぬかわからない身だし、そろそろどこかに嫁いではくれんか?」


 となんとか娘たちを説得しようとしましたが、取りつく島もありません。


「私は、お金持ちで、きちんとした地位を持っている人じゃなきゃ嫌だわ。今みたいな貧乏生活をこれから先もしていくなんて、真っ平御免よ!」


 と、鏡で自分を見つめながら、ツンとすまして長女が言います。


「私は、優しくて伯爵家の人じゃなきゃ嫌よ。私に好きなだけ好きなものを買わせてくれるような人じゃない限り、嫁ぐ気はないわ。」


 と、次女も出かけていく場所もないのに一張羅のドレスで着飾りながら、冷たい対応をします。


「お前はどうだ?結婚する気はないのか?」


 と、父親は必死に末っ子に問いかけます。


「私は...彼のような優しい王子様がいいわ。」


 と、末っ子は頬をほんのりと染めていいます。


 それを聞いた父親は、まるで別人のような目をして末っ子を睨みつけました。


「彼って...お前、まだ言っていたのか。」


「い、いえ。なんでもないわ。ごめんなさい、お父様。私は、ある程度のお金がある人のところなら、どこでもいいの。」


「お父様、無理よ。その子は妄想がすぎるわ。私たちより顔も良くないし、誰にももらってもらえないわよ。」


 父親の1番の悩みの種は、この末っ子でした。

 彼女は元々空想をするのが好きでしたが、母親が死んでからそれに歯車がかかったようでした。


 その1番ひどいものが、昔、森で迷いお腹を空かせていたら、ふと現れた王子のような青年が彼女に食べ物を与え、話し相手になり、帰り道を教えてくれたというのです。


 家に帰ってきた彼女を見て、家族全員驚き、長男はすぐに暖かいミルクと毛布を用意して、どうやって帰ってきたのか聞いたのでした。


「優しい王子様が、私を助けてくれたの。」


 これを聞き、不思議に思いながらも長男は帰りをとても喜び、末っ子の女の子を抱きしめて、自室へ連れて行きました。


 兄弟の仲は皆、別に悪いというほど悪いわけではありませんでしたが、それぞれ自分のことにしか興味がないので、お互いに深く関わるということはありませんでした。


 ですが、狩人の長男は心が優しく、末っ子が泣いていると、いつも面倒を見ずにはいられず、他の兄弟と比べても、特に可愛がっておりました。


 なので、今回も真っ先に彼女の帰りを迎えたのは、長男でした。


 残った者達は、各々に生じた疑問をお互いに問いかけました。


「助けてもらった?誰に??」


「王子なんて――城はここから相当遠いぞ?」


「ここは森の奥深くよ?そうそう見つけられるもんじゃないわ。」


「この辺の土地を知り尽くしていないと、うちの家を探し当てるのは不可能よ。」


 そうなのです。

 彼らの生じた疑問、それは王子とは一体何者なのか。そもそも、そんな人は存在するのか、存在するならどうやって末っ子をここまで送り届けたのか、ということでした。


 彼女たちの住んでいる家は森の奥深く、一層一目につかない森の中です。


 近くには誰も住んでいないことを確認の上、ここに住居を構えたのでした。


 お城はとても遠いので、簡単にこれる距離ではありません。


 しかも、今日は王子は誕生日パーティーをお城で開いているとのこと。

 万が一にも、こんな辺境の地に来る理由もなければ、来れるはずもありません。


 よそ者だとしても、この家を見つけるのはほぼ不可能です。


 では、どういうことか。

 家族は1つの答えを導き出しました。


「あの子の嘘よ。」


 長女の発言で、皆がはっ、と我に帰りました。


「...そうだな。こんなところを探し当てられるわけがない。城も遠いことだし、王子が来ることは不可能。」


 次男が冷静に分析します。


「つまり、王子なんて人物は存在しない。」


「あの子は妄想癖があるわ。もはや、空想の域を超えた妄想よ。」


「きっと、迷わないように何か目印を描いてたんだわ。だから、無事に帰ってこれたのよ。」


 この答えに皆が納得し、同時に彼女の妄想が幻覚を見せているところまで進行していることがわかり、一同の顔はみるみるうちに青ざめていきました。


 そこから、皆は割と必死に彼女の妄想癖を治そうと、手を尽くしました。


 長男は、森へ薬草を取りに行ったり、次男は町の図書館まで赴き末っ子の病気を治す手段はないか調べました。


 長女や次女も、おめかしすればきっと妄想なんてする暇もなくなるわと思い、末っ子にお化粧や一張羅のドレスを着せたりしましたが、彼女はそれをすぐに脱ぎ捨ててしまいました。


 そして、家のそばの川のほとりに腰を下ろし、はぁ〜と思わせぶりなため息をついて、いつまでもずっと遠くの方をぼんやり眺めているのです。


 長女と次女は自分たちがせっかく綺麗にしてあげたのに、それをないがしろにされたため怒ってしまいました。


 次男も、図書館にある本は全て調べましたが、末っ子の症状は乗っておらず断念しまいした。


 唯一、長男だけは他の者が諦めた後もしばらくいろんな薬草をとって来て試させていましたが、彼女の全く変わる様子がないのを見て、断念しました。


 断念というより、このままの方が彼女らしく、幸せかもしれないと思ったので彼女のことを思って無理に治させようとするのをやめたのです。


 それからも、彼女は度々お気に入りの川のほとりで、空想にふけっていましたが、もう誰も気にもとめませんでした。


 前までは頻繁に王子のことをしゃべっていましたが、みんなの態度を見て反省したのか最近は、あまり口にしなくなっていたので、家族はもう治ったか忘れたりしたかと思っていたのです。


 それなのに、まだこんな妄想をしていたとわかったので、父親は末っ子に心底失望しました。


「お前、そんなことでは本当に貰い手がつかないぞ?」


「ええ...。ごめんなさい、お父様。私は、私をもらってくださるのでしたら、どんなお方のところにでも喜んでお嫁に行きますわ...。」


 遂には、末っ子はこう答えるしかありませんでした。こうする以外、家族が納得する方法を知らなかったのです。


 さぁ、まぁそんなこんなで娘たちの婿にふさわしいものはいないかと、うーんうーん...と父親が頭を捻らせていると、ドアがコンコンコンと丁寧に三度ノックされました。


 父親はふと、こんな場所に用があるなんて一体誰なのだろうと考えました。

 そして、あらかた森で遭難でもした人が助けを求めて歩いていて、偶然この家を見つけたに違いないと思いました。


 そういう事態が稀にあるのです。

 なので、今回もそんなことだろうと思い、なんの心の準備もしていなかったのです。


「はいはい。今開けます。」


 と、父親は自分のだいぶ融通が利かなくなってきた体に無理を言ってドアまでゆっくりと歩いて行き、そっと戸を開けました。


 と、次の瞬間、父親の顔はみるみる真っ青になり、驚きと絶望で彼の頭の中はいっぱいになりました。


「な、なぜあなたがこんなところに...。」


 蚊の鳴くような声で、父親が声をやっとの事で絞り出すと、ドアの前に立った紳士的な男はふんっと鼻を鳴らし、


「私が、ここにいては何か問題でも?」


 と冷たく聞き返しました。


「いえ、そんな、滅相も無――」


「ならば、家へ入れてもらえるかね?」


「え、ええ。もちろんですとも...。」


 そうぶっきら棒に質問をし、他人の家へズカズカと上がってきたこの男を見て、父親が震え上がらないわけがありません。


 なんと言っても、今入ってきたこの男こそが、通称青髭を生やした死神ブルービアード・リーパーと呼ばれている、かの有名な青髭男爵だったのですから。


 居間に降りてきた長女や次女は、自分の家に気味の悪い男がいることに強い衝撃を受け、奇声をあげ、それを聞きつけて家の扉を大胆にも蹴り破って入ってきた長男も驚きで一時的に全ての動作が止まってしまったようでした。


 いつもおっとりしている末っ子でさえ、家の中をのぞいて、そりゃあびっくりしました。


「お、お茶でもいかがですか。私めの家にあるものでは、お口に合わないかもしれませんが...。」


「ああ、いただこう。」


 青髭がゆっくりと口へ熱い紅茶を運んでいき、その一口がゴクリと喉を伝わって行くのを、家族はじっと見ていました。


 そして、青髭が紅茶を最後まで飲んでしまうと、みんなホッとしたようなため息を漏らし、2杯目を注いでから、そそくさと席に座りました。


「そ、それで、今日はどう言ったご用件で...?」


「ふむ。そうだな。では、そろそろ本題に移らせていただこう。」


 そう言って、青髭はちらりと家族全員の顔を冷ややかな目で見ると、淡々とまるで事務作業のように事を伝え始めました。


「今日は、嫁をもらいにきたのだ。」


「よ、嫁でございますか...?」


「ああ。お前たちの家には3人の娘がいると聞いた。誰でも構わないから、3日後に私がまた来るまでにだれを嫁に出すか決めておくんだな。」


 なんというタイミングでしょう。まさか、娘の縁談をどうしようか話し合っていたところ、本当に縁談の話が来てしまったのです。


 父親としては、嬉しいのか困惑しているのか訳がわかりません。


 ただでさえ良い評判を聞かない男に、娘を渡してもいいのだろうか...。


「お、お言葉ですが、男爵様ほどの方ならうちではなくとも他に沢山お相手がいらっしゃるのでは?」


「私がここがいいと決めたのだ。今更他のところから嫁をもらう気は無い。」


「で、ですが...。」


「もう決まった事だ。諦めろ。ついでに言っておくと、貴様らに拒否権はない。もし仮に拒否した場合には、私がお前たちをもう二度と日の光を浴びられないようにしてやる。なに、大人しく渡せば、十分な褒美は与えるつもりだ。どうすることが身のためなのか、よく考えるんだな。」


 さぁ、これは困りました。

 このあとあっさりと青髭は帰って行きましたが、また明後日には戻ってきます。

 それまでに誰を嫁に行かすか決めなくてはいけません。


「そうだな、お前はどうだ?彼はお金持ちだし、しっかりとした爵位もあるぞ?」


 と、父親は恐る恐る長女に問いかけます。


 すると、長女はキッと父親を睨み、いつも通りツンとすましながらこう言いました。


「まぁ、冗談じゃないわ!いくらお金持ちで伯爵家の方でもあんな不気味な男なんかと一緒に居られるもんですか!私は絶対にお断りよ。」


「そうか...。」


 父親はがっかりしました。これで、希望は1つ消えました。可能性は残り2つです。


「なら、お前はどうだ?彼はお金があるし、きっと優しいだろう...。嫁に行く気はないのか?」


 すると、次女も信じられないという様に目を大きく見開き、一張羅のドレスを整えながらこう言いました。


「お父様、ふざけているの?なぜ私があんな人のところへ行かなくちゃいけないのか全くわからないわ。それに彼、とってもケチ臭そうだわ。それに、3人のうちの誰でもいいと言ったのなら、私じゃなくてもいいでしょ?」


「そうだな...。」


 父親はまたもやがっかりしました。

 もしかしたら――と思いましたが、やはりあんな男のもとに行きたがる子などいません。


 希望は1つになりました。


「お前は...行ってくれないか?ある程度のお金があればいいんだろう?彼はものすごい大金持ちだ。生活には苦労しないだろう。」


「で、でも...私だって――。」


「なんだ?文句があるのか?」


 父親は必死です。

 もし、末っ子までも断ってしまったら家族一家で心中でもするより他ありません。


 こんな言い方をされてしまっては、末っ子にも断ることなどできません。

 父親の困った顔が見たい子供なんて、そうそういませんし、少なくとも末っ子はそんな子ではありませんでした。


「...わかったわ。彼は、悪い人ではなさそうですし、家族のためなら私が行きます。」


 それを聞いた父親は大喜びしました。


 父親だけではありません。

 自分たちが行かなくていいとわかった姉二人も、この時ばかりは末っ子に、お前はいい子だから彼とお似合いだとかなんとか調子のいいことを言って、うまく危険を回避できたことを喜びました。


 ただ1人、長男だけは彼女の身の安全を心配していました。


 彼は川辺にいる末っ子を見つけると、隣の芝生が特に青々と茂っていてふかふかしているところに、腰を下ろしました。


 長男はちらっと末っ子を見て――彼は不器用なのでこういう時にどういう対応をすれば、女の子が喜ぶのかはわかりませんでしたが、そっと彼女の手を握り、優しく語りかけました。


「その...平気なのか?別にお前が無理に行く必要なんてないんだぞ?」


「いえ、いいの。私が行かないと、みんなあの人に殺されてしまうかもしれないし...。」


「その時は俺が、なんとかするよ。」


「危ないことはおやめになって。いいの。私が我慢すれば丸く収まるのだから...。」


「でも...。」


「それに、お兄様は私の性格をよくご存知でしょう?」


「たしかにお前の本性は俺しか知らないし、なかなかすごい性格だとは思うが...。」


「――ゴホン!私なら平気よ。心配しないでくださいな。」


「お前がそう言うならいいんだけどな。まぁ、何かあったらすぐ俺に言えよ。いつでも飛んでいって助けてやるからな。」


「ええ。ありがとう、お兄様。それにしても、私、彼のこと...なんだか懐かしい感じがするの。」


「そうなのか?」


「ええ...。この気持ちがなんなのかも知りたいし、ちゃんと行って確かめるわ。」


「そうか。くれぐれも気をつけろよ。」


「ええ。お兄様も。」


 そう言って兄は、末っ子のことを抱きしめました。

 大事な宝物でも、抱きかかえるかのように、それはそれは、そっと抱きしめました。


 そして、目の端ににじみ出た涙が、末っ子にバレないうちに、その場を後にしました。


 兄が離れてから、末っ子はふぅ...とため息を1つつき、パンっと顔を叩いて気合を入れました。


「よしっ!もう腹を括っちゃうしかないわ。頑張らなくちゃ!!」


 そう言ってから、末っ子は兄の後を追って家の中へと消えていきました。



 3日後、前回より多くの兵と馬車を引き連れた青髭が、荒々しく家の戸を叩きました。


 ガンガンガン!!


「さぁ、約束の時間だ。誰か嫁に出すか、さもなくば家族全員火だるまにでもなるか。どっちらを選ぶ?」


 大声で青髭がそうまくし立てると、キィっと静かに戸が開き、みすぼらしい格好をした一人な女の子がとっても迷惑そうな顔で出て来ました。


「そんなに大声で怒鳴り散らさなくても、聞こえていますわ。私が行きます。」


「お前は確か、末っ子の女だな。そうか、お前が家族のために身代わりになるのだな。」


「身代わりというほど大したものでもありませんわ。ただ、私が行きたいと思っただけです。」


「行きたいと思った...?」


 事実、末っ子は不可解な気持ちを解明するために、自ら行こうと決心をしていました。


 そして、大方あの中だったら、自分が嫁ぎに行かされることも想像がついていたので、自分から行きたいと思ったと言っても過言ではありませんでした。


「そうか...。まぁ、なんでもいい。それより、もっとマシな服はないのか?私の嫁になるというのに、なんてみすぼらしい格好をしているんだ。」


「申し訳ありませんが、わたしにはこの服しかありませんの。それに、お城に行けばお洋服などたくさん用意していただけるかと思ったので。それとも、そんな財力なんてないのですか?」


 と、末っ子は少しいたずらっぽく青髭に向かって笑いかけました。


 青髭は少し驚きましたが、ニヤッとしてこれは面白い子が嫁に来たと、内心ほくそ笑みながら


「なるほど。たしかに城にはたくさんの服がある。生活も何不自由なく暮らせるようにすると約束しよう。」


 と言いました。


 すると、末っ子はまるで予想通りとでもいうようにさっさと馬車に乗りました。


「そうですか。ありがとうございます。それより、そこで大声でお話するのはおやめになってはくださいませんか?ご近所迷惑になってしまいます。」


「...近所に家などないだろう。」


 そうボソッと呟くと、つまらなさそうに青髭は馬車に乗り込み、従者に指示してお城へと向かいました。


 末っ子が後ろを振り返ると、長男が大きく手を振っていました。


 末っ子はそれを見て安心し、前に向き直り新しい生活を思い浮かべました。


 すると、なぜか心が少し踊るのを感じました。


 それは、今までにはない初めての感情だったのです――。


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