冒険18
またやってしまった。17に続いて二度目だ。
もぅ、書きようがない。そもそも、こういったゲームのようなものは苦手なのだ。異世界に行ってしまう若者をとめるにはあなたしかいない!と言われてその気になってしまったが、今考えてみれば断った方がよかったのかもしれない。
いつものように論文を書くほうがずっと楽だ。文字数は少なくともこちらの方が筆が進まない。
それに、妻のことをどうしても考えてしまう。もっとも、このゲームじみたものはもっと若い異世界希望者を対象としているのだが。
なぜ、皆は異世界に行きたがるのだろうか。
以前は現実逃避ではないかと思っていた時期もあったが、今では私自身、異世界に以前とは違った感情をもっていることは否定できない。しかし、老いた両親や、成人しているとはいえ、子供達をおいてはいけないだろう。その他にも色々なしがらみに私はとらわれている。しかし、そのしがらみがありがたいというのもわかるし、私は間違いなく幸福だろう。
いけない、こんなことを考えている場合ではないのだ。とりあえず、文字だけ埋めておき、明日にでももう一度書き直そう。万が一このまま提出したとしても、委員会がチェックしてくれているだろう。いやいや、こんな文章を読まれてしまったら、私の印象が悪くなる。今後の仕事にも支障がでるだろう。
絶対に忘れないように、強く記憶に焼き付けるのだ。なに、どうせまだ半分も仕上がっていないのだ。まだまだ、確認するときはあるだろう。確認はシナリオ順に読んでいくのだから大丈夫。
なんだか、疲れた。
明日は、異世界に子供が行ってしまった親たちを対象にした講演会だ。そのあとは以前の収録の続きだったか…。考えるだけで疲れてくる。いつまで続くのだろう。
私は異世界に行きたいわけではなく、『ここ』から出たいのだ。
それでも私は『ここ』にいるために、異世界を否定するのだ。
だから私は、寝る前に必ず異世界について書かれた小説を読む。それだけで、私の矛盾した心は慰められる。
いつかの、その日まで。




