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真実と選定試験

「そろそろ飽きてきたし、本当のこと話しとくよ。」

「本当のことですか?」

日付も替わり、今日から総合科の選定試験が始まる。くそ忙しかったのは一時間前までだったが、今日は早く起きなければいけない。なぜならシリルは総合科の担当代理だからだ。それなのにこの理事長に真夜中に呼び出され、もう四時間しか眠れない。

「ヴィンセント君に関することだよ。」

思わず漏れそうになる溜め息をぐっと堪える。

「どの話が本当じゃなかったんですか。」

呆れた。まだ隠していることがあるのか。性別、能力者、殺人、精神異常ときて、レイラについてもう驚くことはないだろう。

「前にヴィンセント君は神の一族と言っただろう?」

「はい。」

「因みに神の一族の純血はもう四人しかいないんだ。」

「それはどういう意味ですか?」

回りくどい言い方はしないでほしい。睡眠時間が減る。

「セオドア・シトリン、ルーク・シトリン、アドルフ・シトリン、レイラ・ヴィンセントの四人だ。」

セオドア・シトリンといえば言わずとしれた国王陛下の名前だ。それにルーク・シトリンは第一王子の名。アドルフとやらもシトリン姓ということは王家に連なる者だろう。しかし、何故レイラがその中に名を連ねている?

「第二王子であるライアン・シトリンは純血ではないんだ。なぜなら今の王妃が神の一族ではないから。」

今の国王陛下は御年六十四歳、前の王妃は若くして亡くなっている。その後に王妃を一人迎え、ライアン王子が生まれたこと、二人の王子の母が違うことは国民全員が知っていることだ。

「ルークは病弱だから今の王太子はライアンだろう?」

それにしても、王子を呼び捨てとはメリルは命知らずだ。

「そうですね。」

「ぶっちゃけ、ルークは神殿の巫女に心奪われて、神殿に入り浸ってたからなんだけどね。」

「そうなんですか……。」

「まぁ。その神殿は時間の流れがこっちとは違うからその巫女は六十三歳なんだけど、肉体年齢は二十八歳のままだったんだよね。」

ずいぶんな歳だ。確かに王城に時間の流れが違う神殿があるのは聞いたことがあるし、そこに巫女というものがいるのもお伽噺としては知っている。それはあくまでお伽噺としてだ。

「ルークが二十四、五歳のときに二人は結ばれてね。巫女は女の子を産んだ後、すぐに死んだんだ。」

確か、第一王子には隠し子がいた、がその子供はもう死んでいるはずだ。そう、シリルが幼い頃に大人たちが騒いでいたような気がする。

「で、傷心のルークの元には、貴族からその娘にうちの息子はどうかって売り込みがあっちこちから来て、嫌になったルークは娘を義理の兄に託して、まぁ、今は神殿に籠ってる。」

嫌な仮説が頭に浮かんだ。

「あの、もしかしてなんですけど。その女の子って。」

「ヴィンセント君だよ。純血の彼女を欲しがる貴族は山程いたんだ。巫女としては普通に育って欲しかったから弟のアドルフにまかせたんだろうけど。あ、ヴィンセント君はアドルフのことは祖父だと思ってるから。」

それは、祖父だと思っていた人間が本当は叔父だということか。そして母だと思っていた人が従姉妹。駄目だ。頭が混乱してきた。

「俺はどうすればいいんですか?」

なぜ、 こんなことをただの教師であるシリルに伝えるのだろう。

「最近、貴族連中が生きている可能性に気付いたみたいで、こそこそ彼女を探してるんだ。だから護衛よろしくね。彼女のことを知っている者は皆口封じしたはずなんだけど、どこから洩れたんだろ。」

恐ろしい言葉が聞こえた気がするが気のせいだろうか。口封じって。

「あと、あれ嘘だから。結婚の話。」

「は?」

「ウォーレンも彼女の出自知ってるから、敬愛する国王陛下の孫娘ってことですごく敬愛してるからね。妹としての愛情と敬愛する王族だから盲目的な愛情注いでるだけだよ。」

だからあの時、下賤な者が触れるな、とか言っていたのか。王族を傷付けたからあんな、指三本も切り落としたのか。

嘘っぽい話ではあった。結婚相手が血の繋がらない兄なんて。シリルはそれを信じてしまっていたのだ。またメリルに弄ばれた。

王族といえば、何十年か前に王城が燃え、生き残ったのが国王陛下と前の王妃の二人だけと聞いていたが、他にも生き残っていた者がいたのか。

なんだか首を突っ込んではいけないことに引きずりこまれている気もするが、気にしないことにする。気にしたら負けだ。

こういうのは一般人のシリルではなく、もっと違った人に頼めば良いだろうに。例えばアルヴィンのような……。

「ひとつ思ったんですが、私じゃなくアルヴィンに護衛を頼んだらどうですか?」

「彼は忙しいから無理だ。」

それはアルヴィンは忙しくても、シリルは忙しくないと言いたいのか。魔法使いの事情は知らないが、好きな女なら守れと言わなくても普通守るだろう。アルヴィンはレイラに好意を持っているはずだ。

「セオドアも彼女を王女に戻す気はないから、畏まらず今まで通りで接してやってくれ。ただ貴族の馬鹿共から守るだけで良いよ。」

『貴族の馬鹿共』か、前に魔術師も嫌っているようだったが貴族も嫌いなのか。それなのに王族は嫌いではない。この理事長の嗜好は本当に謎だ。

それから二、三言葉を交わし理事長室を出た。理事長室から見える月は三日月だったが、ここから見える月は満月だった。またあの不思議な部屋にいたようだ。やはりレイラに知られたくない話はあの部屋でするのか。

時計を見れば睡眠時間があと三時間になっていた。


◇◆◇


今日はいよいよ選定の日だ。服装は自由だとドリスが言っていたので使い古した深緑色のワンピースを着た。以前に新しいワンピースで街に出て、妖魔と戦ったら爪で破かれた。

武器は木刀らしいが下手したら死ぬ。首から下を狙わなければ。

男と女とでは体力に差がある。まずは身を隠して人数が減ってから戦おう。卑怯な気もするが総合科は今日時点で総合的に優秀な生徒が選ばれるという。少しは頭を使わなければ。

朝食を食べ、集合場所である校門前に向かうと既に十五人もの生徒がいた。やはり男子生徒ばかりだ。皆レイラを怪訝そうな顔で見ている。

シリルは何故か疲れたような顔をしている。寝不足なのだろうか。そういえば昨晩もレイラが寝る頃はまだ帰ってきていなかった。そして今朝起きれば部屋に居なかった。

もしかしたら寝ていないのかもしれない。

そんなシリルはレイラに気付くと、もの言いたげな顔でこちらを見てきた。

(無謀だ。やめとけ。ってところかしら。)

そんなことは分かっている。とシリルを睨む。

するとシリルは違う、とでも言うように首を横に振り溜め息を吐いている。

(何かしら。)

もしかすると、昨日シリルの前で泣いてしまったため、基本がお人好しで心配性のシリルは気にしているのかもしれない。

昨日泣いてしまったのは、悲しいわけでも苦しいわけでも、ましてや嬉しいわけでもなく、ただ気付くと涙が溢れていただけなのだ。

しばらく考えていると、厭な声が聞こえてきた。

「ボクは女の子と戦えないよ。だって女の子の悲しむ顔は見たくないからね。花は弱い、だから守るものだろう?」

訳せば、女を狙うやつは弱いやつだ。ボクは強いからそんな事しない、それに女は守るものだ、男の世界にしゃしゃり出てくんじゃねぇよ。ということか。

決めた。あの男子生徒と周りで嗤っている二人は最初に倒す。女に手は出せないと言うなら無抵抗のはずだろう。容易に倒せるはず。

(良い人がいたわ。)

メリル学院には庶民と貴族のボンボンが半々くらいいる。そして庶民と貴族、二つの派閥があり競いあっているとドリスが言っていた。レイラはどちらかというと庶民に入るだろう。とはいえその争いに加わる気はないが。

九時になり選定の説明が始まった。今回受けるのは男子二十二名、女子一名の計二十三名だ。選定会場は街外れの廃墟らしい。十何年か前に住人が居なくなって廃れた村とのことだ。そこに移動し十時までに各々好きな場所で待機し、銃声が鳴れば開始らしい。廃墟には監視として総合科の生徒とシリル、士官科のベン・サンドラー先生、リオ・グランデ先生が居るらしい。

「総合科の担当代理をしている、シリル・フィンドレイだ。よろしく。」

いつもは輝いている橄欖石ペリドットの瞳も疲れのせいか、くすんで見える。

「総合科六年、ミハイル・ガーネットと申します。今日はみなさん頑張ってください。」

赤毛の髪は派手だが、目元は優しげな青年だった。

ただ、笑顔が胡散臭いと思うのはレイラだけだろうか?

「総合科五年、ジェラルド・レインだ。今日は気合いいれて行こうか!」

金髪に緑の瞳、特徴的な若干掠れた声は女性が好みそうだ。レイラは好みではないが。

「総合科四年は該当者がいなかったため、空いている。」

そうシリルが言った。休みの間に聞いたが、そのときは相応しくない者ばかりだったらしい。逆に今のように一年しか空いていない方が珍しいとも聞いた。

シリルの時は三、四人が常だったらしい。

「総合科三年、アルヴィン・パーシヴァルだ。」

相変わらず、黒髪に蒼い瞳で冷たい印象のアルヴィンだ。言葉も少ない。

「エリオット・フィンドレイです。あの、僕も去年やったんですけど、気を引き締めないと怪我します! 気を付けてください!」

蜂蜜色の髪に翠玉エメラルドの瞳の、なんだか子犬みたいな少年はシリルの弟らしい。確かに面差しはよく似ている。

「士官科担当のベン・サンドラーだ。」

ガタイの良い、渋いおじ様といった感じの先生だ。

おまけに目付きが悪い。これで口に葉巻を咥えて、狐の皮を首に巻いていれば完璧だと思う。

「同じく士官科担当のリオ・グランデ! まだ新婚ホカホカで幸せいっぱいです!奥さんは、あのミラ・フィンドレイなんだ!今はミラ・グランデだけどな。あっ、写真見る!? 遠慮しなくていいんだぜ? 痛っ!」

聞きたくもない惚気話をシリルが殴って止めた。

「紹介は以上だ。これから会場に移動する。」

酷いぜ、と言うリオを完全無視したシリルは生徒を先導して歩き出した。

レイラは最後尾でそれを追った。しばらく下を見て歩いていると、隣に誰かが並ぶ気配がした。

横を見れば、先程ジェラルドと言っていた青年が微笑みかけてきた。

「名前を聞いてもいいかな?綺麗なお姫さま?」

この人は何を言っているのだろう? 恥ずかしくないのか。

「レイラ・ヴィンセントです。」

「レイラ、綺麗な響きだ。君によく似合ってる。」

「そうですか。ありがとうございます。」

いつも通り無表情でそう返せば、ジェラルドは面食らっているようだった。

この人はあれかもしれない、口説き魔というやつだったか。

確かに見目は良いが、ちゃらついた男に容姿を褒められたところでなんだというのか、あの妖魔ウィラード・シャルレを思い出す。あの人もジェラルドと似たような感じの手合いだった。

「ジェラルド先輩、彼女はやめておいた方が良いですよ。戯れに手を出せば彼女のお兄さんに殺されます。」

アルヴィンが助け船を出してくれた。本当のところジェラルドのような人は苦手というより嫌いだ。昔から不誠実な人を見ると苛々してしまうのだ。

「アルヴィン、まさかお前……。手を出したのか!?」

「違います。先輩と一緒にしないでください。」

「じゃあなんで彼女のお兄さんのこと知ってるんだよ?」

ジェラルドとアルヴィンは話が盛り上がってきたようなので放置して前に進む。するとシリルがやって来た。

「ヴィンセント。いいか、」

「当たり前です。」

「まだなにも言ってない。」

「殺すなですよね?」

「違う。」

てっきり、その話だと思っていた。

昨日、シリルに余程の事がない限りは殺すなと言われたから、レイラは余程の事がない限りは人を殺さないと決めたのだが。

「身体が辛くなったら、棄権しろよ。」

「大丈夫です。」

「今は大丈夫でも、他の男どもは無尽蔵の体力だ。」

「そこは考えて戦います。」

まだ心配していたのか。昨日は強いと言ってくれたのに。

「怪我……。」

「しません。」

本当に兄のようだ。レイラはそんなに心配されるほど弱くないはずなのだが、とりあえず兄並みには戦えると剣の師は言ってくれた。

「分かった。頑張れよ。」

「はい。」

そう言って頭を撫でて先頭に戻って行った。撫でられたところを手で押さえる。無意識に撫でているのかもしれないが、少しくすぐったい。せっかく結った髪が変になってしまった。

髪を結び直した頃に、会場に着いた。

いかにも廃村といった雰囲気だ。隠れるところが多い。

シリルの弟が言っていたように気を引き締めていかねば。

「それでは木刀を配る。良いか?腕に着けてある紐を奪えば勝ちだ。必要以上に傷付けるなよ。そこも評価に入る。」

そうシリルが言えば、空気がピンと張り詰める。

「各自、木刀を受け取った者から移動しろ。」

「「はい!」」

レイラも木刀を受け取り、廃村の中に足を踏み入れる。

とりあえず、あの三人組を最初に倒さなければ。

それからは、しばらく身を隠して数が絞られるのを待とう。

しばらく歩いた後、目についた家に入る。ここであの三人組の向かう先を確認しよう。それからまず、喋っていた男から潰す。あの中ではそいつが一番強そうだった。

家の中から外を窺っていると、あの三人組はそれぞれ違う方向へ歩いて行った。三人を倒すとなるとあちこち歩き回らないといけない。しかし、あまり移動し過ぎると他の生徒ともぶつかりそうだ。あの喋っていた奴だけ倒そう。

足音と気配を消し去り、喋っていた奴を追う。運良くすぐ近くの民家に隠れてくれた。レイラも近くの家の影に待機する。

パンッ!

銃声が鳴った。いよいよ開始だ。

まずは辺りの様子を窺う。やはり最初はみんな周囲を窺っているようだった。しかし、十分もすれば剣戟の音があちこちから聞こえてくる。

それに誘われるように男が出てきた。すぐにレイラは男の前に出る。

「あれ? ボク女の子とはやりたくないんだ。そこ退けてくれる?」

「それなら、私と戦って負けてください。」

それだけ言って、男目掛けて駆け出す。

まずは男の腹を狙って、木刀を突き出す。

「!」

しかし、流石は総合科の候補生。受け流された。

ひとまず横に飛んで距離を取る。

「急に襲いかかってくるなんて、礼儀がなってないね。」

「戦いに礼儀なんて関係ありません。そんなこと考えてる間に死にますよ。」

「ふん。知ったような口を!」

次は男が斬りかかってくる。なんとか受け流せたが、やはり腕力に差がある。小技を使わなければキツい。

競り合いになったとき、男の脛を蹴る。

「なっ!? 卑怯な!」

脛の痛みに力が弱まった隙を狙って木刀を弾く。男の木刀は土の上を転がって行った。そしてそれを呆然と見送る男の首に木刀の先をあてる。

「私の勝ちです。紐をください。」

「こんなのは無効だ!」

「先生は足を使っては駄目だ、と言ってません。」

「この女!」

うだうだ言っているが、勝ちは勝ちだ。とりあえず眠らせようと木刀を振り上げたとき、

「そっちの女の子の勝ちです!」

シリルの弟がいた。こんなに近かったのに気配を感じなかった。

「でも!」

「負けは負けです!」

そう言って、エリオットは嫌がる男を組み伏せ紐を取り上げた。

「はい。どうぞ!」

眩しい笑顔で紐を差し出される。

「ありがとう…ございます。」

「頑張って!」

「はい。」

ポケットに紐を突っ込み、近くの家の屋根によじ登る。ここからしばらく観戦しよう。今回はそんなに時間がかかりそうにない。血気盛んにあちらこちらで戦っている。

(どういう基準になるのかしら?)

もし、紐を多く持っているのが基準だったらレイラは今すぐ戦いに行かなければならない。

(奪える限り奪わないと。)

ひとまず近くで戦っている人の近くまで屋根の上を移動し、戦っている二人の間に飛び降りる。

「へ!?」

「んなっ!?」

二人があんぐり口を開けている間に、木刀を横に薙ぎ払う。すると一気に二人倒せた。

案外、シリルの言っていた作戦は使えるようだ。

『ヴィンセントみたいに、綺麗な女の子が急に目の前に出てきたら、びっくりしてる内に何人か倒せるかもな。』

(本当に何人か倒せたわ。ありがとう先生。)

しばらく、その作戦で人を倒していると倒した人の持っていた紐も含めて、紐が十七本になった。

(私の紐も含めて十八本…。あと五本。 )

そして残り三本になると皆が皆、様子を窺うばかりで誰も打って出ない。

だから選定が二日も設定されているのかもしれない。

こうなれば、もう狭い所にいる意味はない。

レイラは広場に移動する。広場には腐ったベンチがあった。

時間の流れを感じられるところだ。

広場にいると、女の子を倒すのは心苦しい。ごめんよ、とか言う人がやって来たので苛立ちで力が増した。これで残り二本。

それから、しばらくして残りの二人がやって来て、

「じゃんけんで戦う順番を決めよう。」

「良いなそれ。」

「そうですね。」

じゃんけんで負けたレイラはまず、一人と戦い勝った。その男子生徒はおそらく身を隠していたのだろう。身体が温まっていないようだった。もったいない。

次に先程のじゃんけんで勝った人と戦う。

「女の子と思って馬鹿にしたのを許してほしい。」

「いえ、気にしないでください。」

さすがに苦戦はしたが、なんとか勝利を納め、村の入り口に三人で向かう。

「全部の紐ぶん取ったのか?」

「他の人が持ってたのも含めてです。」

「うわ恐ろしい。ミラ・フィン…いやグランデの再来か。」

他愛もない会話をしながら、集合場所に着くと、

「これで全員か?」

シリルの質問に三人で頷く。

「紐は誰が持ってる?」

横の二人は笑いを堪えながら、レイラを指す。

「彼女が。」

「「「は!?」」」

この時の先生達の顔をレイラは一生忘れないだろう。


◇◆◇


「本当にやるとは思わなかった。」

その日の夜、部屋に戻ってきたシリルは変な顔でそう言った。

「先生に奇襲を勧められたのでその通りにしました。」

そうレイラが言えば、シリルはもっと変な顔になりベッドに倒れ込んだ。

「今日はお仕事終わりですか?」

「ヴィンセントのおかげでな。まさか姉さんみたいに全員倒すとは思わなかった。」

「紐が多い方が良いのかと思いまして。」

「まぁ、俺もそう思って全員倒して回ったけど。」

そう言って、布団の中に潜っていった。

レイラも明かりを消して、布団に潜る。

しばらくして、寝息が聞こえてきた。それを聞いていると目が冴えていたレイラも自然と眠たくなってくる。

まだ、総合科になれると決まった訳ではない。

レイラが真正面から戦ったのは四、五回だけだったからだ。

隣で眠るシリルを見る。

我儘を言えば、シリルに誉めてもらいたかった。

そして、からかい倒したことを償ってもらおうとも。

それでも、もう十分満たされている。

レイラが全ての紐を持っていると聞いたときのシリルの顔が、とても面白かった。それだけでもう十分だと思っている。

(士官科でも一番強くなれば良いわ。)

そう考えて、意識を手放す。昨日は夢を見なかった。

今日は悪い夢ではなく良い夢を見られると良い。

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