表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/152

閑話 Ⅱ 兄の心配事

就職先はアメトリンだったため家族と離れてしまった。

『きみがウォーレン・ヴィンセントか?』

それでも、アメトリンでこの国の王子ジェフリーと会えたのは良かった。

ジェフリー・アーネスト・シトリンは王太子であるルーク王子の長男だ。いつかはこの国の頂点に立つだろう。

レイラを護るには権力がいる。昔にレイラを誘拐しようとした輩はほとんどが、妖魔と呼ばれるモノか、綺麗で神秘的な生け贄が欲しい宗教集団か、レイラに一目惚れした貴族の馬鹿が自分好みの女に育てようとした、もしくは幼女趣味という輩だった。

貴族の馬鹿や特殊性癖の奴はなんとかなる。

妖魔もアドルフや魔法使いに依頼して駆除してもらえばいい。

しかし、宗教集団は無駄に人や金が多い。ウォーレンが潰したところで蜥蜴の尻尾みたいな奴らしか潰せない。

国家権力があればレイラを護れる。

しかし、ジェフリーには決してレイラを見せない。存在も知らせない。良い奴だとは思うがレイラを渡すには落ち着きが足りない。それにレイラを見てしまえば誰でも惚れてしまうだろう。妹はすごく美人に育った。

トリフェーンに異動になり、メリル学院に通いはじめたレイラと久しぶりに会ったときには、またやらかしていた。

その場には金髪に黄緑色の瞳の男と黒髪に青色の瞳をした男がいた。

先生だという金髪の男は暴走するレイラを止めてくれたらしい。

その日の夜は忙しかった。口封じやら、証拠のでっち上げ。その他もろもろ、レイラを守るために頑張った。

護衛をつけてくれるとメリルが言うから学院にレイラを送り出したのだが、護衛らしきものがついていなかった。

となると、あのとき傍にいた先生か黒髪の男が護衛なのだろう。もしくはその両方が。

そう見当をつけ、数日後にレイラと出掛けたときに訊いた。

『先生がしてるわ。』

やはり護衛は金髪だった。昼間はあの先生でも問題ないだろう。しかし、夜もあの先生となるとレイラの貞操が危険に晒される。あの先生は無駄に綺麗な面をしていた。女馴れしていそうだ。流石にそれは有り得ないだろう。常識として。

『夜は大丈夫なのか?』

『ええ、だって部屋が一緒だもの。』

聞き間違いだろうか、部屋が一緒? 一体誰と。

『……。どの先生だ?』

『え? だから、シリル・フィンドレイ先生。』

男と同室なんて聞いていない。

『大丈夫か? 触られたりしてないか?』

『失礼よ、兄様。先生はそんな人じゃないもの。』

この人間不信ぎみの妹が、会って少ししか経っていない男を信用している。実に面白くない。

しかも表情が少し緩んでいる。

よし、シリル・フィンドレイがなにか仕出かしたらノアとキャロルを連れて学院に行こう。あの二人なら存分に暴れてくれるはずだ。

それから休みの日に何度かレイラと出掛けたが、今のところシリルは手を出してはいないようだ。基本レイラは無表情だが、何かあれば変な顔をする。今のところ異変はない。

あの先生はレイラに何もしていないのだろう。

先生の話題になっても頬を緩ませるくらいで異変は……。

異変は起きている。レイラに表情がある。

まさか、レイラはあの先生の事を……。

(考えるな。まだレイラに色恋は早い。)

真白な妹に触れる奴は誰であろうと許さない。

キャロルが恋人を紹介した時でさえ、相手の男を詰りたい気持ちを抑えていたのだ。軽く嫌みを言うくらいで止めたが。

とくに思い入れのある妹となるとウォーレンもノアと似たようになるかもしれない。

流石にあそこまで妹馬鹿には成れない。

女性に告白される時になにも言わせず、レイラの素晴らしさを長々と語り、その長話にもドン引かなかった女性でも、ノアがレイラに毎日『愛してる。』と睦言のように甘い声で言っているのを聞けば離れていった。

甘ったるい顔のノアと反対にレイラは顔を顰めていたが。

あれだけの美貌をもつ妹と比べられるのはさすがに嫌だろう。

もう、ロードナイトにノアと結婚してくれる女性は居ない。だが、商会を継ぐのはノアだから結婚してもらわないと困る。

ウォーレンもいずれは結婚するつもりだ。それに弟と違い、女性を愛しいと思ったこともある。

そう、自分はまだ正常だ。レイラを傷付けた奴を指数本で許している。結局は指数本で済まなかったが、ノアなら最初から半殺しくらいにはするだろう。

弟はあの日から過激になってしまった。

屋敷からレイラを出さないようにし、姿が見えなくなったレイラを心配して友人が訪問して来れば、にこやかに追い返したりしていた。

昔からレイラのことを想っていた貴族の子息がやって来たときは、酷すぎて思い出したくもない。

その弟から、今度レイラに会いに行こうという手紙が来た。

学院もそろそろ長期休暇に入ると聞いていたから、丁度いい。

ノアだけなら会わなくてもいいと思っていたが、久しぶりにキャロルとも会えると聞き、休みの日にちを伝えた。

その後、いろいろ忘れていたことを後悔したが。

ノアの妹に向けるとは思えないほど強い愛情と、その為の行動力とかを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ