とある姉と弟の朝の会話
私の名前は冴雅蜜緋。今年で十七歳になる高校二年生。
……な、のに……なんでアンタは!!
「私を子供扱いスルゥゥゥ!!!?」
「だって実際子供だし」
冴雅蜜妃。
今年中三。受験真っ直中の我が弟である。
「それでも私の方が年上だぁーッ!!!」
吠えた。精一杯吠えた。
「分かったから姉よ。早く着替えてよ。洗濯が出来ないからさ」
…………着替えた。
「──で、なんでアンタは私についてきたの?」
制服に着替え、私が脱ぎ捨てた服を籠に収める蜜妃に言った。
私ももう高三。一人暮らししたいなー。なんて、親に言ったら簡単にOKしてくれたので喜び勇んで一人暮らしを始めたわけだが……。
何故か弟の蜜妃がついてきた。
「だって姉は料理出来ないでしょ」
グサ……。
「洗濯も出来ないし……」
グサッ……。
「早起きも出来ない、片付けも出来ない……」
グサグサッ!
「掃除も出来ない……ぶっちゃけ何も出来ないし」
ドグシャッ!!
「酷い……!そこまでハッキリ言わなくても……」
「更にぶっちゃけると、顔しか良い所がない」
「ガハッ!?」
酷いよこの弟……そこまで言うなんて……。
……てか、
「それはアンタが!!私に何もさせてくれなかったからじゃないの!!?」
「だってやらせたら、必ずといって良い程怪我するもん」
「しないわよ!!私そこまでドジじゃ……」
「小学校六年の時、パンツはき忘れて滑り台
「すいませんごめんないもう口答えしませんから言わないで下さいお願いします」――うん。なら良いんだよっ
友人命名、天使スマイルを浮かべる我が弟、蜜妃。いや魔王。
「じゃあ、朝食はテーブルにあるから。まず顔を洗って……」
「分かってるから!アンタは私の母親か!?」
「弟です。
くそぅ……。なんで私がこんな目に……。
と思いながらも弟の作った朝食にありつく私はきっと、かなり、情けない。
「ピーマンは残さないように」
食うかコノヤロー。あんなスカスカのマリモ……。
「子供じゃないんだから……あ。後、ニンジンも残さないでね」
「朝からうるっさい!!あんなオレンジのトンガリ食わないでも生きていけるわよ!!」
「胸が成長しないよ」
「誰が貧乳よッ!!!?」
「姉」
「ちぇいさー!!!」
弟の後頭部に向かってコップを投げた。全力で。
パシ。
「危ないじゃない姉。当たったらどうするの?」
知らんよ。つか当たらないわよ。アンタ何でも超人だし。
「一応注意するけど、普通の人には絶対こんな事しないでよ?」
「しないわよ。アンタ以外に」
「僕は普通だよ」
何処が!?
「ふぅ……だから姉は彼氏の一人も出来ないんだよ……」
「聞こえてるぞその呟きッ!!?」
「わざとだよ」
「腹黒!!」
「褒め言葉だよ」
「キィーー!!ムカつくなこのガキーーーッ!!?」
「早くご飯食べてよ。食器洗えない」
「あ、ゴメン」
食器を片付ける。……じゃなくてぇ!!
「アンタいつの間に着替えたの!?」
「姉がまたパンツはき忘れてるのに気付いた時」
「いつだッ!!?つか気付かなかった!!」
うわ。恥の上塗り。最悪だわ……。
「安心しろ姉。姉の黒歴史は全て知ってるから」
「そんなバナナ……」
「それも黒歴史だね」
「うわぁぁぁん!!もうお嫁に行けないぃ!!!」
「大丈夫だ姉。僕がちゃんと世話するから」
「私マジで子供扱い!?つか姉として見られてない!!!」
「当たり前だよ姉。僕の中のヒエラルキーじゃ。僕=両親>姉の友人>小学生>‖超えられない壁‖>猫>姉なんだから」
「もうやだ……」
私、小学生以下?いや……猫以下か。
「そんな事はどうでもいい。とりあえずパンツはいてよ。ツルツル見せられても欲情どころか、逆に悲しくなってくるから。………………まぁ姉さんはれいがいだけど」
「おい今ボソッとなんか言ったな。なんて「気にしないで姉。だからさっさとこの姉に似合わない大人っぽいパンツをとってよ」
「余計なお世話だっ!!!」
「だったら早く着替えて。でないと五膳さんに言うよ?」
「止めて!?香奈にだけは!香奈にだけは!」
……。
で着替えた。
「それじゃあ姉。僕は先に学校行くね」
中学校の制服に身を包んだ蜜妃がドアを開けながら言う。
「さっさと逝け」
「後で香奈さんとじっくり話さなきゃな……」
「ごめんなさい。いって下さいませご主人様」
「何故メイド風?普通にしてよ。普通に」
「んじゃ言ってらっしゃい」
「いってきます姉」
………………。
ガチャ。
戻ってきた。何故?
「ちゃんと鍵閉めてね?」
「はよ行けや!!」