①
コンコン。
ノックの音がした。
勉強の休憩がてらに開いていたエロ本を音速で閉じる。
参考書を開き、ノートを開き、鉛筆のおしりを唇に当て
左手でワイルドに前髪をくしゃっとやった。
いかにも、考え中ですよみたいなポーズを作り、返事をしかけたとき
不意に思い出した。
俺は、一人暮らしだ。
ここでちょいと自己紹介。
俺、まさる。22歳独身、ぴっちぴちのチェリーボーイ。
ちょいと小太りで、ちょいと頭頂部が涼しげな好青年さ。
ちなみにぴっちぴちというのは
新鮮さや瑞々しさを意味する方ではなく
ぴっちぴちのTシャツとかそっちの意味だ。
引きこもりやニートに間違われがちだけど、今 大学受験に向けて猛勉強中。(何回目かは聞いちゃダメだ!)
今日も朝から勉強勉強。
……の前に、本棚でも片付けよう。
こうして、いつも通りの1日が始まるはずだった。
話を戻す。
俺は、一人暮らしだ。
それじゃあ、いったい誰がノックしている?
ワンルームのアパートの
玄関とリビングを隔てている、ほんの気持ちばかりの扉が
今 何者かによって叩かれている。
コンコン、コンコン。
規則正しい音から、恐らく危険は無いだろうと判断し
俺は、思いきって返事をすることに決めた。
「はい」俺は、短く返事をした。
ノックの奴は、しばらく何も言わなかった。
緊張しているのだろうか、深呼吸をしているようだ。
フゥーッと力強く息を吐き、小さく「よしっ!」と気合いを入れた声の後
ようやくこちらに語りかけてきた。
「……悟空?」