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未知へ  作者: 笛吹き
3/4

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宇宙の構造と脳の構造が同一に見えるのは、

我々が、そうした関連性を見い出したいという願望からくる思いこみが一因しているのだろうか?

それとも我々は、中途半端な認知能力のためにまだ情報統合が追い付いていないとでも言うのだろうか?

仮に脳がある種の宇宙空間ならば、自らの思考の探求が、宇宙での探求と酷似することもありうるだろう。

ならば、宇宙の行きつく果ては、概念の世界とでも言うべきだろうか。


「惑星デルタe-3から早く脱出しろ。」


グリニッチ号船長、マーカス・キャンベルが、アンナ・ホールに発した言葉。

彼女は、自らコールドスリープをかける前にエネルギー体となったマーカスに言われた言葉を思い出していた。

「あなたは、何を言っているのですか?」

と成川にたいして、ベルは、疑問を投げかける。

突飛な発言をするならば、誰でもが、自らの安息を守るためにそうした異質なものを拒否しようとする。そうしなければ、自らの思考体系に著しい変更を余儀なくされるからだ。

今、成川が、『エネルギー生命体』という聞きなれない単語を異常事態である状況下で、発することが余計に周りの人々の思考体系を揺さぶっていた。

しかし、成川以外にもう1人だけその単語を知っている者がいた。

宇宙学者のウィリアム・ブロックは、

「君もその概念を知っているのかい?随分と異質な部門をよく知っているね。」

ウィリアムは、周りから浮いてしまうほどに冷静であった。

50を過ぎた初老の男性、ウィリアムは、

「もはや、エネルギー生命体という概念は、哲学的でもある。が、それゆえにエネルギー生命という概念が、様々な拘束を受けないという意味でもある。」

ベルは、要領を得ない状況が大のきらいであった。

「先生方、ここは、研究室ではありません。端的に教えていただきたい。」

眉間のしわが落ちないベルに対して、ウィリアムはやさしく微笑みかけると

「概念は、時間と共に変化していくが、我々は、その変化にかかる時間が長期にわたるため、違和感を感じないのだけれど、

そうしたエネルギー生命体などという

すさまじい速さで概念体系が変化していく者に対しては、

人類の認知は、追いつかないのだよ。」

ベルの怒りは、鎮火しそうにない。しかし、ベルもプロであるためか、冷静を装い、

「では、クルー達は、その宇宙の果てに行ってしまったとしましょう。ならば、なぜあなたは、行かなかったのかしら?」

ベルは、アンナに強く問い詰める。

「行けなかったのよ。地球を守るために。このコールドスリープは、ある一定の振動波で、覚醒するようにセットしておいたの。」

「なにから?」

「ファーストボーンが作り出した生命体からよ。」

アンナは、力強くベルの目を見て言った。



「トール、この部屋はなんだ?」

ヴィンセント・アッカー、電子生物学者のかれが、そう問う。

「ここは、メモリールームです。このぐらいのスケールを誇る宇宙船には、あります。しかし、相当なコスト面の問題があるのですが。

要は、この船内で起きたことを立体映像にして再現する装置です。

では、起動します。」

電子音が一瞬鳴り響いたその瞬間、暗いの部屋を青い光が閃光し、人の形が現れた。

その人は、頭上にデビット・ボーガンと表示された男性だった。

「私、彼を知ってる。学会で話した事があるわ。」

とジェナ・グリーンが驚いたようにいう。

「彼は、生物学者でしたね。」

とトールがジェナの顔をのぞくように言う。

「ええ、とても異端な。有名であったけれど。」

とばつが悪そうに返す、ジェナ。

その記録立体映像としてのデビットは、そのメモリールームから出て行った。

一行は、そのあとを追っていく。

その時、トールの腕に付いてあるデバイスが音を出す。

「はい、ベル。なんでしょうか?」

「生存者を発見、クルーは、1名をのぞいて、皆失踪した模様。」

とベルが返す。

「そうですか、我々はメモリーシステムを起動させましたので。」

その時、通路の灯りが光りだす。

薄暗かった通路は、明るくなった。

「レベッカが任務を完了したようですね。」

一行は、デビットが入って行った部屋の扉を開けた。

彼らの眼に映ったのは、

血まみれの遺体の集積物であった。

「!!、うわ!!」

とクリス・レジャーは、尻もちをつく。ジェナは、その場で吐いてしまった。

オレク・シバエフは、意外にも冷静で、

「頭の数からいって6体ぐらいか。どうだ?トール」

と問いかける。

もう1人の医療スタッフ、イライアス・アッカーマンもまた冷静であった。

彼は、このメンバーのなかで最も高齢であった。61歳。

様々な大戦の医療管理長を歴任しており、より悲惨な現場を見てきたのだろう。

「そうですね、私の解析ソフトでも6体です。すごいですね、オレクさん。」

「こうゆう死体は、1度見たことがあるんだ。」

トールは、とても興味深そうに耳を向ける。

「ほう。どういった状況でしたか?」

「地球外生命体が殺したんじゃない。あの時は、人間が人間を襲ったんだ。きっと今回もそうだ。」

その発言にトール以外のメンバーは、凍りついた。

「実に興味深い。しかし、今回は、原因は異なるでしょうね。」

意味深な発言をしてあたりを見回すトール。



「お父様、今回は、お父様が望んだより発展した遺伝子組み換え装置があるようです。」

とアルシア・ベインズは、一室で1人で交信している。

アントン・ベインズは、

「そうか、やはりこの惑星にあったか。」

アントンは、老いていた。

「それで、あとどのくらいかかるんだ?」

「あと数日かかると思います。組み換えエラーの化け物もうろついていると思いますし。」

アントンは、その話を聞いたとたん、

「はやくするんだ!私には、時間がない。オーバードライブで、そっちにすぐ行けるからと言って、いつまでも待てるわけではない!。」

そう言うとアントンは、通信を切ってしまった。

アルシアは、眉間を指で押さえながら深いため息をつく。

「お父様、あなたは、ここに来るべきではない。自然に任せて死ぬべきよ。」

アンドロイドのポールは、

アルシアの部屋のそとにいたが、会話は全て聞いていた。

「トール、やはり、会長はこちらに来る可能性が高いようです。」

とポールは、言うのだった。














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