you will know here
現在、執筆しているもう1つの作品と同時進行していきたいと思います。
「地球について私たちは、表面的にしか認知していないのだろう。
私たちが目を向けている宇宙と同じぐらいに深いのかもしれない。
私は、知ろうとする事、つまり知的欲求という概念自体を大切にしている。
私たちは、なぜこの世にいるのか?
なぜ宇宙があるのか?
幼いころ私が抱いた夢は、今も変わらない。」
成川光一は、2092年において宇宙探査専門の科学者である。
人類の技術は、飛躍的進歩を遂げていた。
その技術革新は、短期間で行われ人類というあり方でさえ変えていった。
ロボット技術、医療技術、エンジン技術、その他多くの技術が各分野で発展していった。
バーン元年といわれる、2056年の科学技術博覧会で発表されたある装置が始まりといわれている。
その装置は、大気還元装置である。
それにより、人類は、大気汚染という災害を乗り越えたのであった。
その装置を発表したのが、米国政府直属の研究機関であり、ハル・ブロック率いる「プログレッシブ・ピープル」である。
そして、それ以後、絵に描くように技術は様々なものを生んでいった。
オーバードライブ、コールドスリープ、人工知能などといった物語の産物は、現実の一部となっていった。
宇宙開拓は、実質的に可能となり、宇宙探査は、様々な分野がしのぎを削っていた。
2092年7月8日
ニューメラスホープ号は、12人という比較的少数のクルーをある惑星へ運んでいた。
この時代において人件費というものは、かなりの額になっていたためとも言える。
アンドロイドの普及のためである。
ましてや、専門家の費用は、ある種の投資と同じものであった。
コールドスリープからの目覚めは、この時代において以前ほどの評判の悪さではなかった。
しかし、時間を止められた肉体と機内に流れる今までの時間との誤差による妙な錯覚感が、以前にもまして報告されていた。
そして、成川もまたその錯覚に襲われていた。
「これが、体感時差か。」
とつぶやくと周りのクルーも目を覚ましていた。
アンドロイドはトール、レベッカ、ポールの3体いる。
彼らは、クルーの内に入っていない。
彼らは、一様に
「お疲れ様です。どうか適度な飲食を行ってください。
これより惑星デルタe-3に到着します。
よろしくお願いします。」
と発言するのであった。
船内のカンファレンスルームにクルー全員が集まる。
トールが皆を座らせると
目から光を出し、壁に対して映像を映し出す。
「我々の行動目的を説明いたします。
まず、第1目標は、先に惑星デルタe-3に到着し、信号を途絶えてしまった
探査船グリニッチ号のクルー救出であります。
そして、第2目標は、彼らの探査任務の続行です。
ただし、第2目標は、探査可能であるならば、という条件付きであります。」
そこで、トールが発言を続けようとしたとき、
クルーの1人である、クリス・レジャーが発言した。
「今回は、政府と民間企業の企画らしいじゃないか?それにしては、人数が少なすぎないか?」
彼は、生物学者である。
「しかも随分と各方面の専門家を集めたな。」
と物理学者のマイケル・ラナーが言う。
するとトールは、作り笑顔で
「今回は、企画ではなく、国家規模の大きなプロジェクトです。
そして、ラナーさん、今回は、我が企業もそしてアメリカも本気という事なのですよ。」
「そう、プログラミングされてるってことは、企画者の意図でしょ?」
と言葉をかぶせるのは、
文化学者のジェナ・グリーンである。
成川は、だまってそのやり取りを見つめる。
「では、これからの行程を説明させていただきます。」
アンドロイドのレベッカが、話を改める。
「まず、ポイントB-6で着陸し、3キロ離れたグリニッチ号に探査用車両に乗って接近してもらいます。」
するとクルー達が座っている座席の中から1人の女性が立ち上がり、
3体のアンドロイドの間に割って入って行った。女性は、
「私は、アルシア・ベインズ。
ベインズコーポレーションの会長、アントン・ベインズの娘である。
ここでは常に安全を最優先に考慮して、行動することを徹底していくが、
何が起きるかは、今までの惑星探査よりも予想が難しいと思われる。
なので、自分の身は自分で守ることを肝に銘じてほしい。
しかし、あなたたちに文句を言う権利は、ない。わが社は、すでにあなたたちに先述したとおりに説明しており、それなりの額の前金をすでに渡している。
なので、どうかご理解願いたい。では、良い結果が訪れることを。」と言った。
クルーたちは、そのあまりの高圧的態度に言葉を失った。
ニューメラスホープ号は、無事、惑星デルタe-3に到着した。
成川は、まだグリニッチ号のポイントの向こうにある建造物の存在を知らない。