*エピローグ
ノインは大学を卒業し、ベリルの教えを受けて名うての傭兵となる──彼の独特の戦い方を学び、見事なまでの戦績を収め続けた。
時にはベリルのパートナーとして、その手腕を振るった。
彼女についた名は『不死者の恋人』
45歳で傭兵を引退──戦い続けた彼女の体は、すでに限界に近かった。50歳を過ぎた頃には、車イスの生活がほとんどになる。
彼女はいつでもおおらかに笑い、若い傭兵たちには檄を飛ばしていた。
ノインが55歳になったある日──
「あなたのおかげね」
広い草原で、ノインは車イスを押す人物に語りかける。
「あなたの時間をあたしは沢山もらった。満足のいく人生だったわ」
男は、ささやくように発したノインの前に立ち、ゆっくりしゃがみ込む。
「優しい不死者さん、ありがとう」
目の前にいるベリルの頬に手を添えた。
愁いを帯びたエメラルドの瞳をのぞき込んだ。そんな瞳に、ノインはクスッと笑みをこぼす。
「イヤね、そんな顔しないで。人が死ぬのは当り前でしょ。あたしが死ななかったら、あなたは永遠に、あたしといなくちゃならないのよ」
そのあと、背もたれに体を預け空を見上げる。
「あたしは、そんなのゴメンだわ」
だって──
「永遠に、他の子に嫉妬しなくちゃいけなくなるじゃない」
「お前にとって私は、どういう存在であったのか図りかねている」
ベリルはぼそりとつぶやいた。
ノインは彼の目を見て小さく笑うと、
「フフ、教えてあげない」
いたずらっぽく発した。
「あなたは、あたしの全てよ。あたしの全てを変えてくれた人。全力で愛した人」
ノインは力の限りベリルに腕を伸ばした。
「あなたはあたしを生まれ変わらせてくれた。最後も、あなたの腕の中でいたい」
ベリルはノインを車イスから抱きかかえ、草原にゆっくりと彼女の体を寝かせた。
草原を滑る爽やかな風と、ベリルの鼓動が今のノインの世界全てだ。間近に見えるベリルの顔に、目を細める。
「あなたは、命を見続けていくのね。誰もが愛する、そのエメラルドの瞳で」
ノインは震える手をベリルの胸に当てる。
「人間って、困った存在だけど……ずっと味方でいてやってね。見捨てないでね」
「……」
ベリルはそれには応えず、ノインに優しくキスをした。
黄昏の瞳は、もう何も映さない──ベリルは強く瞼を閉じ、ノインの体を抱きしめる。
「愛していた」
つぶやいたその言葉は、ノインに届いただろうか──
END
*最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
※作中に登場するノインは冬芽さんのキャラクターです。
このキャラクターは冬芽さんの著作権下にあります。





