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黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~  作者: 河野 る宇
◆終章~黄昏の彼方
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*エピローグ

 ノインは大学を卒業し、ベリルの教えを受けて名うての傭兵となる──彼の独特の戦い方を学び、見事なまでの戦績を収め続けた。

 時にはベリルのパートナーとして、その手腕を振るった。

 彼女についた名は『不死者の恋人』

 45歳で傭兵を引退──戦い続けた彼女の体は、すでに限界に近かった。50歳を過ぎた頃には、車イスの生活がほとんどになる。

 彼女はいつでもおおらかに笑い、若い傭兵たちにはげきを飛ばしていた。


 ノインが55歳になったある日──

「あなたのおかげね」

 広い草原で、ノインは車イスを押す人物に語りかける。

「あなたの時間をあたしは沢山もらった。満足のいく人生だったわ」

 男は、ささやくように発したノインの前に立ち、ゆっくりしゃがみ込む。

「優しい不死者さん、ありがとう」

 目の前にいるベリルの頬に手を添えた。

 愁いを帯びたエメラルドの瞳をのぞき込んだ。そんな瞳に、ノインはクスッと笑みをこぼす。

「イヤね、そんな顔しないで。人が死ぬのは当り前でしょ。あたしが死ななかったら、あなたは永遠に、あたしといなくちゃならないのよ」

 そのあと、背もたれに体を預け空を見上げる。

「あたしは、そんなのゴメンだわ」

 だって──

「永遠に、他の子に嫉妬しなくちゃいけなくなるじゃない」

「お前にとって私は、どういう存在であったのか図りかねている」

 ベリルはぼそりとつぶやいた。

 ノインは彼の目を見て小さく笑うと、

「フフ、教えてあげない」

 いたずらっぽく発した。

「あなたは、あたしの全てよ。あたしの全てを変えてくれた人。全力で愛した人」

 ノインは力の限りベリルに腕を伸ばした。

「あなたはあたしを生まれ変わらせてくれた。最後も、あなたの腕の中でいたい」

 ベリルはノインを車イスから抱きかかえ、草原にゆっくりと彼女の体を寝かせた。

 草原を滑る爽やかな風と、ベリルの鼓動が今のノインの世界全てだ。間近に見えるベリルの顔に、目を細める。

「あなたは、命を見続けていくのね。誰もが愛する、そのエメラルドの瞳で」

 ノインは震える手をベリルの胸に当てる。

「人間って、困った存在だけど……ずっと味方でいてやってね。見捨てないでね」

「……」

 ベリルはそれには応えず、ノインに優しくキスをした。

 黄昏の瞳は、もう何も映さない──ベリルは強くまぶたを閉じ、ノインの体を抱きしめる。

「愛していた」

 つぶやいたその言葉は、ノインに届いただろうか──



 END

*最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


 ※作中に登場するノインは冬芽さんのキャラクターです。

  このキャラクターは冬芽さんの著作権下にあります。

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