*時間
爆発が落ち着き、傭兵たちは集まる。
「一体、どれだけ火薬があったんだ?」
オメガの存在を知らない仲間たちは、まだ黒い煙の上がる場所を見やった。それに、ベリルとノインは小さく笑う。
ベリルは、気を取り直すように仲間たちを見回す。
「よくやってくれた」
「任せろって言ったろ?」
「ちょろいもんだぜ!」
口々に笑い合う。
「報酬は上乗せさせてもらう」
「ひゃっほぅ!」
「やったぜ!」
「有り難い」
ベリルの言葉に喜びの声を上げ、撤収準備を始めた。
「!」
そんなノインの肩を、誰かが軽く叩く。
「よっ」
振り返ると、そこにいた男がノインに笑いかけた。
「だれ?」
「覚えてない? ほら、初めにベリルといた」
親指で自分を差す。
「えー……と?」
「おいおい、そりゃないぜ」
「あっ! 思い出した。ベリルを置いて逃げた人」
その言葉に、キムは声を張り上げた。
「誰が逃げただ! あれが最良の対処なの! でなきゃベリルがスムーズに動けないだろ」
「!」
ああ、そうか……ベリルは、怪我をする彼に痛みを感じるんだ。そういう人なんだね。今は、それがはっきり理解出来る。
「まさか、あんたがベリルの弟子になるとはねぇ」
あごをさすって感心した。
「本当は、恋人になりたいんだけど」
「え?」
無意識に口走ってしまい、ノインは口を塞いだ。そんなノインをキムはマジマジと見つめた。
「死なない奴を好きになるのは不幸だぜ」
「死なないコトより、恋愛感情がないコトの方が問題なんじゃない?」
「! ああ、そうか」
納得したあと、キムは付け加えた。
「でもよ、死なないからむしろそういう感情、無い方がいいと俺は思うね」
「え?」
キムは、黒い瞳を曇らせる。
「愛する人は、みんな先に死んで行くんだぜ。俺だったら耐えられるかどうかわかんねぇ」
「じゃあ、彼が人を愛せないのは必然的だっていうの?」
でも、それは変だ。ベリルは、物心ついた時からそうだと言ってた。不死になった瞬間にそうなら、納得が出来るけど……
それじゃあまるで、彼は初めから不死になるために生まれたみたいじゃ──
「ノイン」
「!?」
呼ばれてハッとする。
振り返ると、そこにはベリルが立っていた。
「サイスも壊滅した」
「サイス? ああ、養成組織」
「どうした」
ベリルがいぶかしげに問いかけた。
「なんでもない!」
発して後ろを向いたノインは、目を閉じて深く呼吸する。
「これで、終わったんだね」
「いや、まだだ」
「! なんで?」
「ヒュドラは支部がそれぞれ単独で動いている。本部が壊滅した今、支部が分裂し新たな組織になるだろう」
ベリルの瞳が遠方を映し出す。
「だから色々と悩んでたのね」
ベリルは無言で頷いた。
「お前は大学に行くと良い」
「なんでよ」
眉間にしわを寄せた。
「まず卒業を。手伝える時には私が声をかける」
撤収していく仲間たちを見送りながら発する。そんなベリルの服を、ノインはクイとつまんで振り向かせた。
「ねえ……あたし、弟子だけじゃイヤなんだけど」
「……」
ベリルの瞳が、複雑な色を見せている──長く考える時間をノインは与えてくれそうもない。
目を細め、ノインに顔を近づけた。
「私の時間をお前に与えよう。お前が納得するまで、お前が私に飽きるまで」
言って、ノインに深い口づけを与える。
ノインは黄昏色の瞳を閉ざし、ベリルの背中に両腕を回した。





