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黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~  作者: 河野 る宇
◆終章~黄昏の彼方
26/27

*時間

 爆発が落ち着き、傭兵たちは集まる。

「一体、どれだけ火薬があったんだ?」

 オメガの存在を知らない仲間たちは、まだ黒い煙の上がる場所を見やった。それに、ベリルとノインは小さく笑う。

 ベリルは、気を取り直すように仲間たちを見回す。

「よくやってくれた」

「任せろって言ったろ?」

「ちょろいもんだぜ!」

 口々に笑い合う。

「報酬は上乗せさせてもらう」

「ひゃっほぅ!」

「やったぜ!」

「有り難い」

 ベリルの言葉に喜びの声を上げ、撤収準備を始めた。

「!」

そんなノインの肩を、誰かが軽く叩く。

「よっ」

 振り返ると、そこにいた男がノインに笑いかけた。

「だれ?」

「覚えてない? ほら、初めにベリルといた」

 親指で自分を差す。

「えー……と?」

「おいおい、そりゃないぜ」

「あっ! 思い出した。ベリルを置いて逃げた人」

 その言葉に、キムは声を張り上げた。

「誰が逃げただ! あれが最良の対処なの! でなきゃベリルがスムーズに動けないだろ」

「!」

 ああ、そうか……ベリルは、怪我をする彼に痛みを感じるんだ。そういう人なんだね。今は、それがはっきり理解出来る。

「まさか、あんたがベリルの弟子になるとはねぇ」

 あごをさすって感心した。

「本当は、恋人になりたいんだけど」

「え?」

 無意識に口走ってしまい、ノインは口を塞いだ。そんなノインをキムはマジマジと見つめた。

「死なない奴を好きになるのは不幸だぜ」

「死なないコトより、恋愛感情がないコトの方が問題なんじゃない?」

「! ああ、そうか」

 納得したあと、キムは付け加えた。

「でもよ、死なないからむしろそういう感情、無い方がいいと俺は思うね」

「え?」

 キムは、黒い瞳を曇らせる。

「愛する人は、みんな先に死んで行くんだぜ。俺だったら耐えられるかどうかわかんねぇ」

「じゃあ、彼が人を愛せないのは必然的だっていうの?」

 でも、それは変だ。ベリルは、物心ついた時からそうだと言ってた。不死になった瞬間にそうなら、納得が出来るけど……

 それじゃあまるで、彼は初めから不死になるために生まれたみたいじゃ──

「ノイン」

「!?」

 呼ばれてハッとする。

 振り返ると、そこにはベリルが立っていた。

「サイスも壊滅した」

「サイス? ああ、養成組織」

「どうした」

 ベリルがいぶかしげに問いかけた。

「なんでもない!」

 発して後ろを向いたノインは、目を閉じて深く呼吸する。

「これで、終わったんだね」

「いや、まだだ」

「! なんで?」

「ヒュドラは支部がそれぞれ単独で動いている。本部が壊滅した今、支部が分裂し新たな組織になるだろう」

 ベリルの瞳が遠方を映し出す。

「だから色々と悩んでたのね」

 ベリルは無言で頷いた。

「お前は大学に行くと良い」

「なんでよ」

 眉間にしわを寄せた。

「まず卒業を。手伝える時には私が声をかける」

 撤収していく仲間たちを見送りながら発する。そんなベリルの服を、ノインはクイとつまんで振り向かせた。

「ねえ……あたし、弟子だけじゃイヤなんだけど」

「……」

 ベリルの瞳が、複雑な色を見せている──長く考える時間をノインは与えてくれそうもない。

 目を細め、ノインに顔を近づけた。

「私の時間をお前に与えよう。お前が納得するまで、お前が私に飽きるまで」

 言って、ノインに深い口づけを与える。

 ノインは黄昏色の瞳を閉ざし、ベリルの背中に両腕を回した。

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