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黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~  作者: 河野 る宇
◆序章~イタリアより
2/27

*モロモロの事情

「!」

 外れた?

 女は、思ったよりも相手の動きが素早い事に感心した。

 あのタイミングなら、絶対当ると思ったのに。あなたには恨みは無いけど、これもあたしのためだから……淡々とした表情を見せ、マシンガンを男に向かって撃ち続けた。

 弾倉マガジンを素早く交換しながら、徐々に近づく。

「まだ子供じゃないのか!?」

 キムはテーブルの端から相手を確認した。

「予想では19といった処だな」

 ベリルは発しながら、バックサイドホルスターから拳銃ハンドガンを抜きチェックを始める。

「! おい……」

 キムはそれに眉を寄せた。

「向こうには殺意がある。威嚇程度の攻撃は許せ」

 オートマティック拳銃のチェックを終え、キムを一瞥する。

「ならいいけどよ」

「私が狙いのようだ。お前はドアまで走れ」

「そうさせてもらうよ」

 構えたキムは、タイミングを計って駆け出した。

「!」

 女はテーブルから出てきた人影に一瞬、反応したが、目的の相手ではない事に気付きそのまま無視した。

 仲間を放って逃げたのか? ま、仲間と共倒れなんて、嫌に決まってるものね……冷たく瞳が笑う。

「ふむ。なかなかやる」

 弾倉マガジンを外し、瞬時に新たなマガジンを装填する女の素早い動作に、ベリルは感心した。

 そして、感情が伝わってこない事に目を据わらせる。

「冷蔵庫と戦っている気分だ」

 ぼそりとつぶやき、小さく溜息をもらした。

 しかし、徹底している──周りの事などお構いなしだ。従業員も客も逃げまどい、右往左往している。

「どうしたものか」

 そろそろテーブルも限界だ、このままでは否応なく体に穴が空く。

 死にはしないがね……ベリルは薄く笑みを浮かべた。だからといって、理由もわからず撃たれるのは勘弁したい。

 ベリルは一気に間合いを詰め、女の懐に入った。

「!?」

 速い!?

 女は咄嗟にナイフを抜こうとしたが、ベリルに両腕を掴まれる。

 しばらく沈黙が辺りを支配した──2人は、互いに相手の心の内を探ろうと見つめ合った。

「私に何の用だ」

 ベリルが先に口を開く。

「ちょっとしたアルバイトよ」

 女の言葉に、ベリルはあっけにとられた。

「アルバイト……?」

 眉間にしわを寄せる。

「お前は人の命をバイトで消すのか」

「大学に行くお金が無くなっちゃって」

 普段、あまり感情を見せないベリルが苦い表情を浮かべた。

 その隙を突いて女は素早く抜け出し、鋭い眼光を放つ──まだ闘う気だ。

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