*朝の風景
朝──ノインが目を覚ますと、食欲をそそる匂いが鼻を刺激した。フラフラと匂いの方向に歩き出す。
「おはよう。よく眠れたかね」
リビングと続きになっているダイニングキッチンにベリルが立っていた。
「おはよ」
テーブルの上には、綺麗に並べられた料理──スクランブルエッグに焼きベーコン、ビーフシチューとくるみブレッド。
「これ、作ったの?」
「うむ」
「パンも?」
「それは市販のものだ」
ノインは、見事な朝食に唖然とした。
「食材はどうしたの?」
「デリバリーだよ」
冷蔵庫からアイスティーを取り出す。
「! ああ、なるほど」
「顔は洗ったか」
イスに腰掛けようとしたノインに洗面所を示した。
「ええ~?」
ノインは鳴く腹を押さえ、足早に顔を洗ってキッチンに戻る。
「いただきますは」
手を付けようとしたノインに、すぱっと言い放った。
「……いただきます」
割と細かいのね、男のくせに……両手を合わせて渋々つぶやくと、待っていましたとばかりに口に含んだ。
「! 美味しい」
こんなに美味しいビーフシチュー食べたの初めてだ。
「それは良かった」
朝食を頬ばるノインに発すると、玄関の呼び鈴が鳴った。
「出てくれないかね」
「ん」
ナプキンで口を拭い、リビング入り口にあるパネルのボタンを押す。
パネルに映し出された顔は、いかにもなゴツゴツした感じの男だ。短い焦げ茶色の髪に青い瞳、鍛えている事が窺える。
「誰?」
「どなたですかくらい言えんのか」
<お? 女連れ込んでるのか>
「ジョージか、入ってくれ」
ノインは、ベリルの言葉にパネルをタッチした。
「元気にしてたか?」
男が大きな荷物を肩に提げてリビングに入ってきた。
「わお! ラッキー! それくれよ」
入って来るなり、ノインが食べているビーフシチューを指差す。そして、ベリルの返事も聞かずにバッグをソファにドカッと置いてノインの隣に腰を落とした。
「持ってきてくれたか」
ベリルは、大きめのボウルにビーフシチューを注ぎながら尋ねる。
「当然よ! 2つおまけに追加しておいたぜ」
「それは助かる」
ボウルとスプーンを男の目の前に並べると、食べようとしたジョージをジッと見つめた。
「いただきます」
「うむ」
ジョージはビーフシチューにがっつく。大きな男が持つにはいささか小さいかもしれないスプーンで、忙しなくビーフシューを口に運んでいた。
ベリルって誰にでも言ってるのね。こんな無骨な男が“いただきます”だってさ……ノインはその光景を唖然と見つめた。
焦げ茶色の髪はザンバラで、濃い青い目はギラついている。
仲良さそうに入ってきたってコトは、こいつも傭兵なのか……ノインは食を進めながらも男を観察した。
「まあ、力を貸して欲しいときはいつでも言ってきてくれ」
満足したジョージはお腹をさする。
「すまんな」
ベリルに軽く手を挙げて応えると、去っていった。
「?」
なんだろう?
ノインは、男が持ってきた大きな袋の中をのぞき込む。
「!」
あ、これC-4(シーフォー)──プラスティック爆弾の材料──だ。凄い量だな、50kgはあるんじゃない?
「80kgだ」
「どうするの? こんなに」
「戦闘以外にどう使う」
それに怪訝な表情を浮かべたノインに、ベリルが眉をひそめる。
「乗り込んで壊滅させると思っていたのではなかろうな」
「違うの?」
ノインの問いかけに、ベリルは溜息を漏らした。
「そこまで無謀ではない。不死とはいえ痛みはある、痛みで気絶したらどうするのだ。捕らえられる可能性の方が大きい」
「あれ、そうなんだ」
てっきり、撃たれながらばかばか銃をぶっぱなしてるのかと思ってた……ノインは、想像と違っていてぽかんとした。
「それではただの化け物だ」
呆れて肩をすくめる。





