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黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~  作者: 河野 る宇
◆第6章~素晴らしき傭兵
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*弟子

 ノインは、ハンドガンの手入れをしているベリルを見つめる──ずっと狙われ続けてきたハズなのに、どうして人を憎まないんだろう? と不思議でならなかった。

「!」

 何かに気付いたベリルが、ジーンズのバックポケットから携帯端末を取り出す。マナーモードにしてある携帯は、着信を震える事だけで知らせていた。

「──そうか、頼む」

 それだけ発すると、通話を切って再びハンドガンの手入れを続ける。

「……」

 なんだか気まずい。こんな風に、他人と一緒にいたコトが無いから……もう寝ちゃおうかな。でも、さっき寝たばっかりで眠くないし。

 ベリルをチラチラ見やった。

「ノイン」

「なにっ?」

 思わず声を張り上げたノインに、ベリルはやや驚いた表情を浮かべた。

「お前のハンドガンを貸せ」

「何する気よ」

 いぶかしげな瞳を向けるノインに無表情で応える。

「渡された方だ」

「! ああ」

 バッグからその特殊な形状をしたハンドガンをベリルに手渡す。

「ふむ……」

 それをマジマジと眺めた。

「反動はどうだ」

「あたしが使ってるのよりは強かった」

「ほう」

 反動を上手く逃がしているのか。

 入っているカートリッジを抜き取り、何も無い状態で構えて照準に目を細める。引鉄ひきがねを引くと、ガチャン……という軽い音を立てた。

「まだ試作品だな」

「そうなの?」

 ノインの問いかけにハンドガンをいじりながら、

「どのみち爆発してしまえば撃った人間ごと消えてしまう。今はこれで十分だと判断したのだろう」

「へえ」

 ますます腹が立ってくる……ノインは、ピキピキと血管を浮き上がらせた。

「処で」

 そんなノインに向き直ると、

「私の元で傭兵としてのノウハウを学ぶ事になる訳だが」

「何よ」

「今までの自分の知識や経験をひけらかすような事は慎め」

 ノインは眉をひそめる。

「どういう意味?」

「余計な講義や意見など必要無い。傭兵には傭兵のやり方がある。お前がやってきた事とは異なる場合が多い」

「ああ、そんなコト。了解したわ」

 軽く応えると、ノインも自分のハンドガンの手入れを始めた。そんなノインに、ベリルは溜息を漏らす。

 口で言うのとは違う。彼女は完全には理解していないだろう。ベリルにとって、ノインは敵に相当する。もちろん、軍に入る前の彼女の事だ。

 ベリルは人を救う側の人間──一方ノインは、人を殺す側の人間だった。

 ノインが組織にいた時に出会っていたなら、ベリルは躊躇無く彼女を殺していたかもしれない。

 一時は軍にいたとはいえ、幼い頃に染みついた殺しの技術と快感は、そう簡単に抜けるモノじゃない。

 ベリルはエメラルドの瞳を曇らせた。


 朝──ノインが目を覚ますとベリルが帰り支度をしていた。

「どっかに行くの?」

「住処に戻る」

 発して、ノインに着替えるように示した。

 組織を攻撃算段も立てなければならない。ノインがベリルの弟子という形になったため、住処に戻る事にしたのだ。

 昨日、買った服に袖を通したノインは、ベリルと部屋をあとにする。


 ホテルを出て、オレンジレッドのピックアップトラックが視界に入り、爆発したあとの事をふと思い起こす。

 そういえば……あたしの乗ってきた車はあの廃墟に置いてきたんだけど。乗ろうとしたらベリルに止められたんだ。

「追跡装置の付いている車など捨ててしまえ」

 薄笑いで言われた。

 その言葉で、ようやく追跡者がいなかった理由が解った。そうよね、与えられたカートリッジの中身を知らないんだもの、簡単に撃って死ぬだけ。

 追跡してて巻き込まれたら大変だもんね。

 ヤバイ、また腹が立ってきた。

「わあっ!?」

 目の前でベリルに指を鳴らされ、びっくりして声を上げた。

「何をしている」

「ご、ごめん」

 びっくりした……ドキドキしながら助手席に腰を落とす。ゆったりとした大型のピックアップトラックの車内は、ノインなら1シートで2人は座れそうなほどだ。


 しばらく車を走らせ、たどり着いた場所は住宅街から少し離れていた。

 割と大きめの家よね……ノインは、一戸建てのシンプルなデザインの家を眺めた。そして、表札の名前が違う事に気がつく。

 隠れ家みたいなもんだから偽名かな?

 などと考えながら、視界は家を探る──普通の家に見えていたが、解る人間には解るほどの造りに目を丸くする。

「はあ~……」

 ぱっと見わかんないけど、素材は凄いんじゃないの? この家……コンコン、と軽く壁を叩く。

 玄関の鍵も指紋認証だった。

「留守が多いのでね」

 防災と防犯を兼ねている……とベリルが笑みを見せる。

 荷物を持ったまま奥に進むベリルを、いぶかしげに追う。リビングの入り口を通りすぎ、2階へ続く階段も通りすぎて、突き当たりの部屋のドアを開くと物置のようだった。

 そして部屋の中心で立ち止まり、コン……と、右足のかかとで床を軽くこづく。

「!」

 床に隙間が出来て、下に続く階段が現れた。

「隠しておかんとな」

 肩をすくめて、階段を下りる。

「わあ……」

 ノインは、その部屋に感歎の声をあげた。

 綺麗に並べられた武器類に目を輝かせる。普通の女性なら、そんな声は高いアクセサリーなどに向けるものだ。

「細工部屋に試射室まである!」

「後でお前の指紋も登録しておく」

 苦笑いを浮かべて発した。

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