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黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~  作者: 河野 る宇
◆第5章~道しるべ
11/27

*血と戦い

 ベリルは欧米人に比べれば174㎝と高い方ではない。

 しかし細身の体型は貧相ではなく、落ち着いた雰囲気と際立つ存在感に整った容姿は女性の目を引く。

 本人にその自覚が無いのか、今更という意識なのか、時折注がれる視線にまったく関心を示さず上品に食を進めていた。

 そうして食事を楽しんで会計を済ませる──

「あ、ちゃんとお金払うのね」

「私は追いはぎではない」

 つぶやいたノインに眉をひそめながら、クレジットカードをレジに差し出す。


 店から出て、ノインは歩きながら両腕を上げて伸びをした。

 今まで食べたことないような料理ばかりだった、特しちゃったな……ペロリと舌を出す。

「あ」

 ふとノインは一軒の店に目が留まり、ベリルがそれに目線を向けた。

 色々なアクセサリーを販売している店のようだが、高価な品物という訳でも無さそうだ。明るい雰囲気とポップなBGMが嫌味なく店内に流れている。

「あの店、日本にも支店があるの。カレンと、いつかあの店で同じ指輪買おうって約束してた」

 うなだれるノインの背中を、ベリルは2度軽く叩いた。

 ホテルに戻る途中で衣料品店に寄る──ノインの服などを買うためだ。さすがに、持っている服がいま着ている1着だけというのは問題がある。

 動きやすさと生地の質を考え選ばれた衣服は、ノインの魅力を十分に引き立てていた。


 ホテルに戻り、ベリルは何かを取り出すと、

「ノイン」

 呼んで投げ渡した──携帯端末だ。

「持っておけ」

 いぶかしげな表情を浮かべているノインに、

「稼げるようになったら変更する」

「ありがと」

 考えてるコトわかったんだ……あたしには、携帯なんか支払ってる余裕無いもん。

「処で」

 おもむろにベリルが発する。

「調べたい事があるのだが」

「なに?」

 聞き返したノインに視線を合わせて一度、目を閉じ再び目を開く──

「!?」

 その殺気と存在感に体が震えた。

 今まで隠していた“気”を一気に解放したベリルの周りにすさまじいオーラを感じ取った。

 普通の人間なら、その視線に恐怖してもおかしくないほどの鋭さがある。

 しかしノインは──

「……っ」

 だめだ、直視しちゃいけない。

 顔をしかめて向けられる視線に耐えるが、その口元にはうっすらと笑みさえ浮かんでいた。

 ベリルはそれを確認すると、静かに瞼を閉じた。

「はぁ……」

 なんて気を放つんだろこの人は……解放されたノインは、一瞬よろめく。

「闘いたいと思ったか」

 ベリルの問いかけにギクリと体を強ばらせた。

「それとも殺したいと思ったか」

「なに、言ってんの」

 苦笑いで返すが、心臓はバクバクと大きな音を立てていた。

「お前は生きるのがヘタクソだな」

 そんなノインに、小さく溜息を吐き出した。

「どういう意味よ」

 当惑するノインに説明せず、小さく笑みを見せるとシャワールームに向かった。ノインは仕方なくテレビのリモコンに手を伸ばす。

「!」

 あ、そうだ。さっき、あたしの銃勝手に触ってたんだから、あたしもやってやろ……ノインのイタズラ心が顔を出し、ベリルの銃を探し始めた。

「無いわね。どこだろ」

 脱衣場かな? 近くに置くのが当り前だもんね……ノインは音を立てずに脱衣場に忍び込んだ。

 その瞬間──

「……」

 出てきたベリルと目が合った。

「何をしている」

「いや、特に何も」

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