*血と戦い
ベリルは欧米人に比べれば174㎝と高い方ではない。
しかし細身の体型は貧相ではなく、落ち着いた雰囲気と際立つ存在感に整った容姿は女性の目を引く。
本人にその自覚が無いのか、今更という意識なのか、時折注がれる視線にまったく関心を示さず上品に食を進めていた。
そうして食事を楽しんで会計を済ませる──
「あ、ちゃんとお金払うのね」
「私は追いはぎではない」
つぶやいたノインに眉をひそめながら、クレジットカードをレジに差し出す。
店から出て、ノインは歩きながら両腕を上げて伸びをした。
今まで食べたことないような料理ばかりだった、特しちゃったな……ペロリと舌を出す。
「あ」
ふとノインは一軒の店に目が留まり、ベリルがそれに目線を向けた。
色々なアクセサリーを販売している店のようだが、高価な品物という訳でも無さそうだ。明るい雰囲気とポップなBGMが嫌味なく店内に流れている。
「あの店、日本にも支店があるの。カレンと、いつかあの店で同じ指輪買おうって約束してた」
うなだれるノインの背中を、ベリルは2度軽く叩いた。
ホテルに戻る途中で衣料品店に寄る──ノインの服などを買うためだ。さすがに、持っている服がいま着ている1着だけというのは問題がある。
動きやすさと生地の質を考え選ばれた衣服は、ノインの魅力を十分に引き立てていた。
ホテルに戻り、ベリルは何かを取り出すと、
「ノイン」
呼んで投げ渡した──携帯端末だ。
「持っておけ」
いぶかしげな表情を浮かべているノインに、
「稼げるようになったら変更する」
「ありがと」
考えてるコトわかったんだ……あたしには、携帯なんか支払ってる余裕無いもん。
「処で」
おもむろにベリルが発する。
「調べたい事があるのだが」
「なに?」
聞き返したノインに視線を合わせて一度、目を閉じ再び目を開く──
「!?」
その殺気と存在感に体が震えた。
今まで隠していた“気”を一気に解放したベリルの周りにすさまじいオーラを感じ取った。
普通の人間なら、その視線に恐怖してもおかしくないほどの鋭さがある。
しかしノインは──
「……っ」
だめだ、直視しちゃいけない。
顔をしかめて向けられる視線に耐えるが、その口元にはうっすらと笑みさえ浮かんでいた。
ベリルはそれを確認すると、静かに瞼を閉じた。
「はぁ……」
なんて気を放つんだろこの人は……解放されたノインは、一瞬よろめく。
「闘いたいと思ったか」
ベリルの問いかけにギクリと体を強ばらせた。
「それとも殺したいと思ったか」
「なに、言ってんの」
苦笑いで返すが、心臓はバクバクと大きな音を立てていた。
「お前は生きるのがヘタクソだな」
そんなノインに、小さく溜息を吐き出した。
「どういう意味よ」
当惑するノインに説明せず、小さく笑みを見せるとシャワールームに向かった。ノインは仕方なくテレビのリモコンに手を伸ばす。
「!」
あ、そうだ。さっき、あたしの銃勝手に触ってたんだから、あたしもやってやろ……ノインのイタズラ心が顔を出し、ベリルの銃を探し始めた。
「無いわね。どこだろ」
脱衣場かな? 近くに置くのが当り前だもんね……ノインは音を立てずに脱衣場に忍び込んだ。
その瞬間──
「……」
出てきたベリルと目が合った。
「何をしている」
「いや、特に何も」





