初!ボス戦、そして理不尽
バトルフィールドに突入。
背後からしたっぱゴブリンと書かれたのが4体、ボスゴブリンの前にあらわれる。
「まずは雑魚片付けや!ぶんまわし2~3発も当てたらいけるはず」
「わかった!」
アリアも杖を取り出して詠唱に入ろうとした瞬間。
「あー、せやせや。アリアは後方で回復に専念で」
「え?」
と、シゲとアリアが同時に言うやいなや、凍慈はボスめがけて走り出す。
「じゃ、この作戦で行くで」
とりあえず言われた通りに前衛ゴブリンにぶんまわし。
ステータスで力も少しプラスにしたからか、1回で半分は削れているのがわかる。
「(凍慈は、、あれは盗んでるな…)」
あのモーション。流石に何回もみたからわかる。
ボスめがけ盗みを繰り返している。なんかちょっと響きがあれだけど……。
「やっぱ体力あると盗み成功率悪いな~、長引くの嫌やけどしゃーないか…」
なんて独り言が聞こえてきたがこっちはそれどころではない。
「って、うわっ、危な、、痛い痛い痛い!」
前衛ゴブリン4体から狙いうちにされて、ボカボカと殴られるはめに。
「たいしたダメージじゃないけどっ!痛い!」
「任せて!ヒール!」
違う。なんか違う。いや、合ってるんだけど。
再度ぶんまわしをすれば前衛ゴブリン撃破。
確実に強くなってるなーと何だか感激。
「あとは、、ボスゴブリン」
ぐっと力を入れて、「強打!」とコマンドを叫ぶ。
「ぎぎっ!」
黄色い文字に100のダメージ。確実に減った緑のバー。
思ってるより効いてる!?しっかしこの木の棒、、凄いな…。
一体なんの素材で出来てるんだ。家の素材とかに使ったら凄いと思うんだが……。
「シゲ、ボスの体力は1200だよ!」
アリアがボスに「調べる」の技を使ったらしく、あと11発なら余裕で倒せる!と、思ってからの強打7連発。
「もっかい強打!!ん?出ない…」
そして気が付いた。
「あ、MPなくなった」
MPは35しかなかったのでぶんまわし(MP4)と強打(MP3)を連発したらそりゃなくなるわけで…。
「てか、どこにMPとやらを使ったんだ?魔法みたいなのはわかる。マジックポイント?だからさ。これ俺の腕の力だよな?」
そんな事を呟くもボスは待ってくれない。
奇声を発しながら何故かこっちに突っ込んでくる。
待って。盗み働いてる凍慈は無視?確かに俺木の棒でどついたけどさ。
殴られつつも反撃をする事数回、ボスの体力が赤く光りはじめる。
「よし、とどめ」
「まだや!!」
「……え?」
「まだ盗めるもんあるから、ちょっと終わるまで回避と防御と回復で待機や!!」
「……え??」
まだ盗めるもんがあるって何?
凄いセリフだけどそれはあってるのか?
「赤ゲージになった時にだけ盗めるもんがあんねん!」
凍慈の腕が閃く。
一瞬、ボスゴブリンの胸元に赤い光が弾けた。
【盗み成功!】
「よっしゃぁぁ!!ゴブリン心核ゲットォ!!」
ボスがまだ生きているまま、胸の奥が一瞬透けて見えた気がした。
「……」
「……」
「え?」
シゲとアリアが同時に固まる。
「ハート? 生きてるのに心臓取るの? どういうこと?」
「いや、物理的に取ってへん取ってへん!概念的なやつや!」
「概念的な心臓ってなに?」
「ゲームやからセーフや!」
その間にもボスは怒り狂って棍棒を振り下ろす。
「うわっ、今は普通に殴ってくる!」
「盗み成功したら攻撃力上がる仕様や!回避回避!」
「理不尽!!」
アリアのヒールが飛び、なんとか体勢を立て直す。
凍慈が距離を取りながら満足そうに言う。
「これな、このゲームの“取り返しのつかへんアイテム”の一つやで」
「は?」
「ここで取り逃がしたら二度と手に入らん。ボス素材でしか作れん装備があるんや」
「そんな大事なの今言う!?」
「せやから止めたやろ!」
「説明が足りんのよ!!」
ボスの体力はわずか。
シゲが木の棒を握り直す。
「……えっと、もう良いってこと?」
「ええで。心置きなくやったれ」
「最初から言え!」
思い切り殴りつけてのコンボに黄色い数字が弾け、ボスゴブリンはゆっくりと崩れ落ちる。
【ボス撃破!】
静寂。
経験値の表示が流れ、軽快なレベルアップの音楽。
しばらくして、シゲがぽつり。
「初ボス戦って、こんなもん?」
凍慈が肩をすくめる。
「今回はな。ちゃんとレベルも上げたし」
その一言が、妙に引っかかった。
アリアが心配そうに聞く。
「心核って……本当に大丈夫なんだよね?」
凍慈はアイテム欄を確認しながら笑う。
「安心せえ。これは“データ”や」
シゲは倒れたボスを見る。
「……データ、なぁ」
画面の端に、小さく表示が出る。
“☆5素材、ゴブリン心核”
シゲは天を仰いだ。
「初!ボス戦!そしてやっぱり理不尽だ……」




